3 何事にも例外はある
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前回のあらすじ──冒険者登録の年齢制限に引っかかった。
ガッデム!
だがここで諦めてしまっては、2ヵ月近くもかけて旅をしてきたことや、冒険の為の装備などを揃えたことが、全部無駄になってしまう。
なんとしても、冒険者にならなければ!
「そんな……私、20歳なんですけど……」
嘘をつきました……という訳でもない。
前世を含めれば、もっともっと上だ。
しかし冒険者ギルドの係員をしているお姉さんは、当然ながら今の上辺の姿しか見てくれない訳で……。
「いや……どう見ても、あなた10才くらいでしょ?
そっちの獣人の子はもっと小さい」
「ぐっ……!」
ちっちゃくないよ!
……と言いたいところだが、見た目についてツッコまれると、ちょっと辛い。
というか、これでもレイチェルの肉体年齢は、12才なんですけどぉ!?
謝れ! レイチェルさんに謝れ!!
いやでも、確かに成長は遅いんだよな、この身体……。
1度死んでいるからなのか?
まさか、もう成長しないなんてことはないよな……?
そんな疑惑が捨てきれない。
できればレイチェルの身体には、大人の姿も経験させてあげたいのだけどな……。
それはともかく、係員のお姉さんは更に畳み掛けてきた。
「あなたのような小さい子が依頼任務の最中に死なれると、さすがにギルドとしても外聞が悪いんですよ。
それにかつては、冒険者に憧れた子供が肩書きだけを欲して登録したはいいけど、実際には冒険者としては働かないなんて例も多くてねぇ……。
遊び半分では困るんです。
いえ、あなたがそうだとは、言っていませんけどね?」
ぐぬう、そう言われると返す言葉も無い。
しかしだからと言って、ここで引いてしまえば、色々と今後の計画が狂ってしまう。
私は食い下がった。
「……でも、何か例外はあるのですよね?
私達は魔法も使えますし、近接戦闘もそれなりにできます。
能力テストに合格すればいい……とかいうことはありませんか?」
「テストは無いですねぇ。
……まあ、ある程度熟練した冒険者の引率があるのならば、特例で認めることもありますが……。
貴族や豪商のご子息が、箔を付ける為に護衛を伴ってダンジョンに潜る……ということはありますので」
それだ!
要するに、保護者同伴ならいいんだな。
「つまり、誰か有力な冒険者とパーティーを組むことができれば、冒険者の資格がもらえるのですね?」
「……まあ、そういうことになりますね」
係員の返答は投げやりだった。
たぶん無理だと思っているのだろう。
だが、こんな美少女2人組を、放っておく男はいないと思うんだよね。
ロリコンは嫌……というかレイチェル的にはトラウマ物だが、この際背に腹はかえられない。
「行きますよ、マルガ!
その辺の強そうな冒険者に、片っ端から声をかけます!」
「にゃー!」
こうして、私達の逆ナンじみた行為は始まった。
…………駄目でした。
何処のパーティーも、耳を貸してくれない。
くそぅ、やっぱり子供なんて足手まといだと思われているのか?
実際には、たぶんこの町で1番強いぞ!
……こうなれば力尽くでその辺の冒険者を叩きのめして、名義だけでも貸してもらおうか……?
まあ、その辺は後で考えよう。
それよりも今は、
腹 が 減 っ た。
「……マルガ、お腹が空きましたね。
ご飯にしましょうか?」
「何を食べるのかにゃ?
また干し肉にゃ?」
しかしマルガは、微妙に興味の無さそうな顔をしている。
旅の間は保存食を食べたり、たまたま出会った動物を狩って、山菜と一緒に食べたりしていたが、調味料も乏しかったので、そんなに美味しいものではなかった。
だからマルガにとっても、食事は栄養補給の為だけという意味合いが強く、味を楽しむという感覚は薄くなっていたようだ。
「いえ……、せっかく町に来たのですから、食堂を利用しましょう。
このギルドにも、酒場兼食堂があるそうですよ」
「うにゃ?
何でも食べてもいいにゃ?」
途端にマルガの顔が、喜色に染まる。
「ええ、おかわりもいいですよ」
「やったにゃー!」
ふふ……子供の喜ぶ顔は、見ているだけで癒やされる。
が、そういう私も、マルガと同じような顔をしているのかもしれないな。
異世界サバイバル飯に慣れきっている私には、文化的な食事なんて久しぶりだからなぁ。
というか、店で食事をすること自体が、この世界に来て初めてなんだよねぇ……。
だから実は、凄く楽しみなのだ。
そんな訳で、私達は食堂に向かった。