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2 ダンジョン併設都市クラサンド

 ブックマークと感想をありがとうございました。

「おお……!

 見えてきました……っ!」


 私達の目の前には、大きな町が広がっていた。


 私とマルガは、2ヶ月近くかけて野宿しながら歩き、ようやくクラサンドの町に辿り着いたのだ。

 しかもサンバートルの町を出てから、実に2年ぶりの人里である。

 自然とテンションも上がるというものだ。


 クラサンドには、すぐ隣にダンジョンがある。

 というか、ダンジョンの隣に町が作られたというのが、正しいのかもしれない。

 たぶん最初は、ダンジョンを攻略する冒険者達が集まり、そして後になってから彼らを相手に商売をする商人達も集まってきて、その結果徐々に発展していった町なのだろう。


 多数の魔物が潜むダンジョンは、それだけで町ができるほどの産業になるそうだ。

 魔物の肉や骨などは、加工すればそれなりの値段で売れるし、更に魔物が何故か貴金属の(たぐ)いを所持していることもあるという。

 これらの貴金属は、ダンジョンで命を落とした冒険者の所持品を、魔物が拾い集めた物だという説もあるが、カラスが光り物を集める習性を持っていることを考えると、有り得る話ではあった。

 

 それらを目当てにして冒険者達は、ダンジョンに潜るのだという。


 ただ、ここのダンジョンの最奥(さいおう)に何があるのかはまだ確認されておらず、未知の危険が潜んでいる可能性もあるらしい。

 それこそ、魔王が眠っている──とか。

 それを調べるのも、冒険者の役目だ。


 ……そんなことを昔レイチェルが、領主の館の離れでダグズに聞かされていた。

 彼は閉じ込められて何処にも行けないレイチェルの気晴らしに……と、色んなことを話してくれた。

 それらの記憶は、この異世界の常識を知らなかった私にとっては、かなり役立っている。

 ……今頃ダグズは、何処かで元気にしているのかな……。


 なんにしても、これからが正念場だ。

 町に入る為には、入り口で審査があるようだ。

 私に対して指名手配とかが出ていたら、ここでいきなり詰むことになる。


「マルガー、列に並びますよー」


「みぃー!」


 私達は緊張しながら、審査の列に並んだ。

 ……で、結果としては、問題無く通れた。

 どうやら私が指名手配にされているということは、ないようだ。

 あるいはされていたけど、もう解除されていた……とか。

 

 まあ、町に入る為には、税金として銅貨5枚を徴収されたが、お金は奴隷商のところから持ち出してあったので問題ない。

 ちなみに銅貨5枚は、日本円にして1000円くらいの感覚だろうか。

 勿論相場が色々と違うので、全く同じ感覚では使えないけどね。

 例えばこの辺は内陸らしいので、日本なら100円くらいで買えるはずの海の魚が、物凄く高値になっているか、そもそも手に入らないと思う。


 それはさておき、第一関門は突破した。

 そして久々の人間の町は、山の中ではなかなか手に入らないようなものや、そもそも初めて見るようなものもあって、色々と目移りしてしまう。

 

 なんだこれは、私はこんなの初めて見るぜ!?

 そんな風にキョロキョロとしていたら、通りかかった人に笑われてしまった。

 くっ……田舎者丸出しだったか……!

 顔が熱くなるのを感じる。


 その時──、


「レイ姉、これから冒険者ギルドに行くのかにゃ?」


 マルガの声で、私は当初の目的を思い出す。


「いえ、先に服を買いに行きましょう」


 そう、今の私達は、マントで全身を隠しているからいいようなものの、その下は蜘蛛糸で編んだ肌着の上に、(けもの)の毛皮で作った服を纏っているだけという、傍目には「何処の原始人だ?」というような格好なのだ。

 山の中には服屋なんて無いから、自分で作るしかなかったからなぁ……。

 

 だからまずはまともな服装にならないと、冒険者ギルドで門前払いをくらいかねない。


「その次は、装備を調えた方がいいかもしれませんね」


 冒険者をやるからには、武具やダンジョン探索に必要な道具も揃える必要があるだろう。

 取りあえずマルガには、私が作ってあげた弓矢を持たせてはいるけど、その他にナイフくらいはあった方がいいかもしれない。

 更に小さな子でも負担にならないような、軽い防具かな。


 私は……ぶっちゃけ何もいらないのだが、全裸の方が強くなる忍者じゃあるまいし、他人に怪しまれないようにダミーで何かを装備しておいた方がいいのかなぁ……。

 ただ、攻撃は乗っ取りが発動する危険性がある為、なるべく直接戦闘は避けたい。

 

 それを考えると武器よりも、サポート役として役に立つ装備の方がいいだろう。

 となると盾か──盾の勇者か。

 あとは、魔法系のものも充実させた方がよさそうだ。


 う~ん、できればまだ習得していない回復系の魔法とかを覚えたいのだが、魔法屋ってあるのだろうか?

 その辺も探してみるか。


 ……しかし結局、魔法は売っていなかった。

 ゲームのように、買えばすぐに使えるというような便利なシステムは無いようだ。

 ただし、魔法書は売っていた。


 要するに、これを読んで魔法を学べということである。

 魔法が使えるかどうかは、本人の才能と努力次第ということだろう。

 

 で、私は「回復」、「転移」、「空間収納」等々について書かれた魔法書を、数冊購入した。

 まだ使えるようになるのかは分からないけど、使えるようになればかなり便利だ。

 特に空間収納──つまりアイテムボックスだね。

 異世界の便利能力のトップクラスとも言えるものだけど、やはりこの世界にも実在していたんだなぁ。


 これは是非とも習得しなければ!

 なんだかもう、やりたいことが沢山ありすぎて、ワクワクが止まらないよ。

 もう何も怖くない!


 私達は、高揚した気分で冒険者ギルドへと向かった。


 


「駄目です。

 子供の冒険者登録は許可されていません

 ちなみに、冒険者の資格を持たない者は、ダンジョンには入れませんからね」


 事務的な口調で、冒険者ギルドの係員は私に告げた。

 ……いきなり詰んだ。


 こんなの絶対おかしいよ!!

 この度の震災で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

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