プロローグかもしれないエピローグ・もしくは遠い未来の蛇足
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小説は今回で最後です。蛇足なので読まなくても問題無いのかもしれませんが。
あれから何千年が経ったのだろうか?
今、私は1人だ。
家族達とは寿命などで死に別れた。
クラエスも、さすがに人生を何周もして疲れた──と、私の魂の中に還って、永遠の眠りについている。
寂しいけど、今まで私に付き合ってくれた彼女には感謝しているよ……。
そして私も、自然環境の大幅な変化など、諸々の理由で止められなくなった人類文明の崩壊を見届けた後、なんとか死ぬ努力をして、ついに戻ってきたよ。
そう、あの何も無い女神空間に──。
今私の前には、あの転生する前に出会った女神が降臨しようとしている。
「──久しぶりですね。
長い人生、ご苦労様でした」
「はい、久しぶり。
最初はあんたのことを恨んだけど、今は感謝しているよ。
いや、自分自身に対して感謝というのも、おかしな話だけどさ」
「おや、お気づきになりましたか」
「そりゃあ、異世界転生物で最終的に神様になるというのは、よくあるオチだし。
それにナウーリャ教の教義が百合推奨だったり、リーザへのお告げが地球のネタにまみれていたりで、心当たりはいくつもあった」
リーザが「客寄せパンダ」って言葉を知っていた時点で、なんかおかしいとは思っていたんだよ……。
「ふふ……ヒントを与えすぎましたかねぇ」
「それに以前はハッキリ見えなかった姿が、今はよく見えているもの」
最初に会った時の女神の姿は、よく見えなかった。
それは認識阻害の魔法でもかけられていた──というのではなく、強い光を見たら失明するのと同じように、女神が放つ大きすぎるエネルギーを直接認識すると危ないから、魂が本能的に視覚へフィルターをかけて負荷を減らしていたのだろう。
故に女神の顔は、どんなものなのか分からなかった。
でも女神に近しい存在にまで成長した今の私は、その顔を直視できる。
それはクラリスの──私の顔だった。
「あの時は私の考えていることを読まれていると思っていたけど、単に私自身だったから、私の考えていることが分かっただけなんだね?」
「はい、そうですね。
私は未来のあなたです。
多くの魂を吸収し、長い時を経て、人間には収まりきらないほど強大な存在になった為、神になる資格を得て神になった私の過去があなたです。
まあ、神はあらゆる時間軸へ同時に存在することが可能なので、私的には過去も未来も無く、今しか存在しないのですけどね」
「なるほど……。
で、その神になる結末は、拒否することもできるの?」
「できますが、その場合は天国で長い時間をかけて魂を浄化し、記憶も何もかも忘れて、また転生するだけですよ?」
長い年月を生き過ぎた私としては、それはそれで魅力的な気もするけどなぁ……。
「でも、神になると色々とできるようになりますよ。
もっとも私はまだ中間管理職ですから、あまり世界に対して好き勝手をする権限はありませんが……」
「つまりあの文明が崩壊するのを、止めることとかは難しい……と?」
「現状ではそうですね。
ただ、私があなたを転生させることで、クジュラウスの野望を止めることができたように、結果的に歴史が少し変わることはありえます。
別の世界線ではクジュラウスによって、世界はもっと早い段階で滅びていました。
まあ……その滅びを観測して、記録に残すのも、神の仕事に1つではありますが」
なんの為にそんな……。
いや、より完全な世界や歴史を作る為のシミュレーションとか、色々とあるんだろうな。
「それに違う世界の可能性を観測するのも、案外楽しいものですよ。
あなたが『魂の融合』とは違うスキルを得たことで分岐したルートでは、キツネのまま生き延びてシスと姉妹百合の花を咲かせた世界線もありましたし」
「ほう」
俄然興味が湧いてきた。
つまり様々な百合シチュが堪能できる訳か。
「しかも神の資格を得るまでに至ったのは、今のところあなただけです。
だからそれを捨てるのは、勿体ないと思うのですよ?」
「今のところ?
すべての可能性を、観測しているんじゃないの?」
「時間も世界線も無限にありますから、すべてを観測するのは無理ですよ」
そうか……。
それなら永遠に、楽しめるのかもしれないな。
ただ、いつかは飽きる時がくるかもしれない。
「神って退職できるもなの?」
「制限はありますけど、再び転生することも可能です。
逆に昇進して、世界を管理する権限が増える場合もあります。
そうなれば、直接介入して世界を永遠に維持することも不可能ではありません。
残念ながら、そうなった世界線を観測する権限は、今の私にはありませんが……。
昇進した私は、ある意味別の存在なので」
ふ~ん、神として永遠にその責務に縛られるのは嫌だけど、辞めることもできるというのなら悪くはないな。
それに悲劇に終わった世界を、なんとか救ってやりたいという気持ちも、あることはある……。
ただそれは、この女神が本当のことを言っていれば……だけどね。
私は自分自身を信用できるほど、立派な人間じゃないんだよなぁ。
でも、今まで築き上げてきたこの自己を、無に帰すのは早いか。
「じゃあ、取りあえずやってみるよ」
「そうですか。
それでは、いますぐあなたと同期しますね。
それで私の記憶や能力をあなたは受け継ぎ、あなたは私になります。
はい、完了」
軽っ。
でも気がついたら、目の前から女神はいなくなっていた。
……というか、私が女神になっていた。
そしてここにいながら、過去と未来で起こっていることが、同時に知覚できるようになっている。
なるほど、なるほど……。
それではまず、転生前の過去の私を導いてみますか。
きっと過去の私は、私がそうだったように、私を「駄女神」扱いするんだろうね。
だって私だもの。
でも、彼女は、私にはならないかな。
私とは違うスキルを与えて、違う人生……いや、獣生?を送ってもらうからね。
その先にどんな百合が待っているのか、楽しみだなぁ。
そして私はいつか新世界の神に──百合を司る神になる。
百合に特化したスキルを作って転生者に与えるとか、やってみたいことは沢山ある。
その為にも昇進を狙ってみるかな。
すべては百合の為に──!
乗っ取り魂──完
次回、初期構想と後書きのオマケあり。




