エピローグ4 歴史書の中に見る人々3
今回を含めて完結まであと4~5回くらいかなぁ……。
●ザグル・ブル
魔王軍四天王カシファーンによってクラサンドの町が衝撃された際、冒険者ギルドのギルドマスターをしていた彼が、冒険者達を指揮して迎撃した。
魔族を撃退した後も各所に働きかけ、犠牲者遺族の救済に尽力したという。
●サンバートル・キンガリー
初代サンバートル領の領主であり、ローラント王国子爵。
キンガリー家の次男として生まれた為、家を継ぐことができない彼は北方の開拓地での立身出世を目指し、後に領主の地位を手に入れた。
だがその開拓は、奴隷を酷使してのものだったと言われている。
64歳の時に屋敷の火災で、息子共々焼死。
暗殺されたとの説もあるが、詳細は分かっていない。
元々奴隷商との癒着など、黒い噂が絶えない男であった為、暗殺されるだけの理由はあったのかもしれないが。
また、奇しくも実家を継いだ兄も、息子共々火災で死亡している。
●シシルナ・パルナ
ノルン学院2代目院長。
学院の創設初期からのメンバーであり、早い段階から初代院長のアリゼから代理を任され、後継者として育てられてきたようだ。
また、妹のキャスカは43代ローラント国王クラリスの親衛隊副隊長をしており、その姉である彼女も王家との繋がりが強かったものと思われる。
なお、同じく創設メンバーのパトリックを夫に迎え、彼との間に生まれた娘が、3代目の院長になった。
82歳で病死している。
●シス・ノーザンリリィ
ノーザンリリィ辺境伯アイの叔母だと言われているが、彼女の種族は「天狐族」と呼ばれ、本来は多数の尾を持つ赤いキツネの姿をしている為、人間のアイとは義理の関係なのではないかと言われている。
彼女は人間の姿にもなれるが、耳と尾だけが獣の形をしているタイプの獣人は当時珍しく、現在よく見られるタイプの獣人の元祖と呼べる存在でもあった。
また、その戦闘力は凄まじく、魔族との戦争の際には、その身に高熱の炎を纏って魔物の群れの中を走り抜け、炎で蹂躙したとされている。
そんな彼女ともう1人の天狐族・リゼが多くの人々を救った結果、後のローラント王国では狐が「聖獣」や「神獣」として崇拝されるようになった。
●シルビナ・ナタリー
勇者アリゼナータの従者とされる騎士であり、ローラント王国男爵。
全身をミスリルの鎧で覆い、ミスリルの剣を操る彼女の実力は、剣技だけならならばアリゼナータをも上回ったとも言われている。
過去にクバート帝国の勇者ココノエに殺害されたとの誤報が流れたが、実際にはアリゼナータによって救われ、後に2人で協力してココノエを打倒した。
それから約70年後の魔族との戦争にも、アリゼナータ共々参戦したとの記録が存在するが、90歳近い年齢であったはずで、本人だったのかどうかは疑問が残る。
更に死亡の記録も残っていない。
なお、アリゼナータと同様に漫画を愛していたという一面もあり、彼女もまた資金面などで印刷・出版業界の発展に寄与したという。
●セポネーテ・スナ
猫型獣人であり、獣人としては初めて女王お付きの侍女に採用された。
しかし経歴は不明な部分が多く、その一方でSランク冒険者マルガの姉であったとの情報もある為、ただの侍女ではなく、実質的には女王の護衛だったのではないかとの説もある。
●セリス・ラルグ・ホーラント
ホーラント公爵家の長女で、42代ローラント国王ダグラスに嫁いだクリスの姉にあたる。
本来は彼女がダグラスに嫁ぐ予定であったが、それを嫌って下級貴族の男と駆け落ちし、そのまま2度と歴史上に姿を現すことはなかった。
ただ、出生に謎が多い44代ローラント国王レイチェルは、セリスによく似ていたと言われており、レイチェルの母か祖母だったのではないかとの説もある。
●ダグラス・ドーラ・ローラント
42代ローラント国王。
政治に興味を持たず、更にクバート帝国の強い影響下にあったとされるナウーリャ教の終末論にも溺れ、民衆を顧みなかった愚王。
また、家族にも興味を示さず、それが娘クラリスによって討たれる原因にもなっていると思われるが、元々第二王子として王家に生まれた彼は、王位継承権を巡って兄ダラスと激しく争っており、彼にとって家族は敵だったのかもしれない。
なお、先に彼を暗殺しようとしたのは、ダラスの方だったと言われている。
普通に考えれば長男のダラスの方が王位継承権が上であり、何事も無ければそのまま王になっていたはずなのだが、それでも危機感を覚えるほど当時のダグラスは優秀だったということなのだろう。
この家族の諍いが無ければ、違った形で歴史に名を残したのかと思うと残念である。
●テュロサム・キンガリー
ローラント王国公爵にしてガーランド領々主。
火災で死亡した父から伯爵の地位を受け継いだ彼の能力は、評判の悪い前任から比べると極めて高く、領内を目に見えて発展させた。
ただ、それだけで伯爵から公爵まで陞爵するはずもなく、キンガリー一族からアリゼやアリゼナータのような傑物を輩出し、女王と強い繋がりができたことが最大の出世理由であろう。
なお、アリゼはテュロサムの焼死した兄の娘──つまり姪ということになっているが、その兄が婚姻しているとの記録は無く、母親も不明である為、本当に血の繋がりがあるのかは疑問視されている。
道半ばで倒れた父や兄達とは違い、彼は100歳まで天寿を全うしている。
●ドラグナ・グラナ
クラサンドのダンジョンを中心にして活躍していたSランク冒険者。
飛び抜けて高い戦闘能力は持たないが、慎重で判断能力も高いことから、彼とパーティーを組んでいれば、まず死ぬことが無いと言われるほどだった。
公式には最もダンジョンの深層に辿り着いた者の1人だが、実際には既に最下層まで攻略されていたらしく、そこにあった魔族の生活空間を、王族が別荘として流用していたという事実が、後に王家から公表されている。
その事実にいち早く気付いたのかは定かではないが、彼はある日突然に冒険者を引退し、冒険者ギルドのギルドマスターへと就任した。
そして以後ダンジョンの深層部については、一切語らなかったという。
●ナタリア・ナタリー
ローラント王国男爵。
女性兵士として勇名を馳せ、数多の功績から騎士爵の叙任を受けることになった。
その後、幼馴染みであった夫と結婚し、長女シルビナを出産。
そのシルビナが帝国の勇者打倒に大きな功績を挙げた褒賞として、ナタリアが男爵へと陞爵することとなったが、これはシルビナがアリゼナータ専属の騎士となり、男爵家の仕事をこなすことが難しかった為、その母親である彼女が代理となった形だ。
68歳の時に、落馬の事故でこの世を去った。
●ナナ・キンガリー
44代ローラント国王レイチェルの王配・エリリークの側妃カナウの孫。
犬のような耳と尻尾を持ち、その可愛らしい姿は多くの人々から愛された。
王家の公式行事に参加すると、彼女目当てに見物客が増えるほどだったと言われている。
故に彼女がこの世界で最初の「アイドル」的存在だと主張する者もいるが、祖父のエリリークの方が先だという意見の方が大勢を占めるようだ。
●ニナ・カラミシ
アリゼの私兵組織メイド隊に所属していと思われる女性。
その詳細は不明だが、何百年にもわたって歴史に同名のメイドが姿を現すことから、ニナは個人の名ではなく、代々襲名されている役職のようなものなのではないかとの説もある。
●ハゴータ・ガラガング
クラサンドを中心に活動していたBランク冒険者だったが突如姿を消し、十数年後になってようやくノーザンリリィ辺境伯領で生存が確認された。
その間、彼に何があったのかは不明だが、スコップを使った独特の戦闘術を身につけていたという。
その実力はBランク程度では収まらないもので、その強さに憧れた者が真似をしてスコップを武器として使い始め、後の「スコップ流剣術」の誕生に繋がっている。
その剣術は現在でも、ノーザンリリィ地方で盛んに学ばれているという。
●ハグルス・クラウ・オーラント
ローラント王国公爵であり、財務大臣でもあった。
43代ローラント国王クラリスの側近の1人であり、彼の孫娘がクラリスの実弟に嫁ぐなど、非常に近しい関係であったことが窺える。
当時はクラリスを除けば、王国の最高権力者だったと言っても過言ではないだろう。
ただ、クラリスの側近であるアリゼや、後の女王となるレイチェルには頭が上がらなかったという話もある。
●フレア
43代ローラント国王クラリスの親衛隊長カーシャが駆る騎竜。
人間の少女の姿になることもできるが、その正体は真紅の皮膚を持つ上位竜であり、竜族の長の娘でもあった。
その繋がりで、魔族との戦争の際には竜族からの協力を取り付けることができた為、人類を勝利に導いた立て役者の1人だとも言われている。
しかしそのような存在が何故、カーシャに従っていたのかは謎のままだ。
アリゼを酷く恐れていたとの、目撃証言もあるが……。
なお、現在も彼女はこの世界の何処かで生きているとされるが、その行方は公になっていない。
ちなみにこれらの設定、本編で書いていないことは書きながら即興で考えています。
で、紹介は続きますが、次回で展開に少し動きがあるかも?
ただし、土日はお休みです。




