エピローグ3 歴史書の中に見る人々2
前回の「カエサル・アンバー」の項目に別人の説明が入っていたので修正しました。その別人のは次回に改めて載る予定です。
●キャスカ・パルナ
43代ローラント国王クラリスの親衛隊副隊長。
ノルン学院出身であり、更に姉のシシルナが院長だった為、初代院長のアリゼとの繋がりが強いとされている。
小柄な女性ながらも素手で戦うことを得意としており、自身よりも数倍の体格の敵を投げ飛ばすこともできたという。
その子供のような容姿は、57歳で親衛隊を引退するまで変わることがなかったと言われている。
なお、その引退は同居していたリチア・トラーフの死の直後であり、彼女も後を追うように亡くなったと言われているが、詳細は不明。
●キャロライン・クレセント
当初はナウーリャ教王都支部の支部長だったが、教祖リーザがノーザンリリィ辺境領に移り住んでからは、最も信者が多い王都の責任者である彼女が実質的な教団トップとなった。
晩年に支部長を引退した後の消息は不明だが、彼女の若い頃によく似たメイドが、王城で働いていたとの目撃証言もある。
婚姻の記録は無いが、もしかしたら隠し子がいたのかもしれない。
●クジュラウス
元々は魔王軍四天王の1人であったが、他の有力者を追い落として魔王軍の実権を掌握し、魔王となった。
その後、人類に戦いを挑み、未曾有の被害を与えたことで、歴史上最大の悪とされる存在となる。
この戦いでの最終的な死者・行方不明者の数は、一説に500万人を超えるとも言われており、これを上回る戦争は今のところ起きていない。
数千万の魔物と、天に届こうかという巨人を操り侵攻してきたが、勇者アリゼナータの活躍や、後の魔王となるユーが率いる魔族の反乱によって討たれることとなった。
●グーニー・グラコー
ローラント王国男爵。
58歳の時に、落雷による火災で死亡。
貴族としては最も古い、落雷死亡事故の記録となる。
●グラス・トゥラーン
クバート帝国の宰相。
ローラント王国との戦争に敗戦し、更には魔王軍四天王ヘンゼルの襲撃によって荒廃した帝国に突如として現れ、即位したばかりの女帝メディナッテを支えた。
ただし彼女は王国から送り込まれた者であり、メディナッテは傀儡だったとの説もある。
事実、彼女の傍ではローラント王国女王クラリスの母・クリスの姿や、メイド隊と思しきメイドの姿もよく目撃されていた。
また、彼女が帝国に現れる前には、王国の王城で彼女によく似たメイドの目撃証言もある。
しかも彼女の詳細については、公にはほとんど発表されておらず、未だに謎の部分が多く、更に公式の場に姿を現すことも少なかったことからも、王国の暗部に関わっていた存在である可能性が高いと言われている。
●クラリス・ドーラ・ローラント
43代ローラント国王。
王国史上、最も偉大な王との呼び声も高い。
幼少時は非常に我が儘な少女であったが、ある時城を抜け出し、迷い込んだ貧民街で庶民の苦しい生活を目の当たりにした彼女は、身勝手な考えを改めたという。
その後、悪政を行っていた父王ダグラスを打倒して強引に王位を奪い、即位後は大胆な国の改革を断行する。
その中でも特に大きいのが、奴隷制度の廃止と亜人種への差別の禁止であるが、その他にも先進的な政策を矢継ぎ早に打ち立てており、それらは現在の議会制民主主義に移行したローラント国でも手本となっている。
また、蒸気機関を始めとする、当時としては革新的な技術の開発も主導しており、人類の文明を大きく飛躍させる礎を築いた。
ただ、その偉業が彼女1人の能力によるものだというのは疑問視されており、側近のアリゼの力も大きい──むしろ裏から主導していたのは、アリゼなのではないかとの説もある。
事実、大きな後ろ盾の無かったクラリスに、これだけの偉業を成し遂げるだけの資金的・人的なツテがあったとは考えにくく、更に彼女自身も「自分は代理の王」と、即位の際に発言したという。
なお、これだけの偉業を達成した彼女の在任期間は意外にも短く、60歳を待たずして養女のレイチェルに王座を譲っているが、その時点で彼女の行っていた政策や事業は軌道に乗っていた為、勇退だと言ってもいいだろう。
そして退位後も国の各地を回り、国内の情勢には常に気を配りつつ、国の発展と国民の安寧を願っていた。
そんな彼女への国民の信頼は、非常に厚かったと言われている。
それが故か、98歳で老衰死した彼女であったが、直後に起こった魔族の侵攻の際には蘇り、魔王クジュラウスと戦って国を守ったという伝説が、まことしやかに人々の間で語り継がれているほどだ。
また、生涯独身で、同性同士の結婚を許可する政策を進めていたことから、彼女も同性愛者だったと言われており、それが故に「自由な恋愛の守護者」と呼ばれ、彼女を御神体とした神社も建立された。
今でもそこには、多くの恋人達が訪れる名所となっている。
●グリーグス
魔王軍四天王の1人。
吸血鬼であり、サンバートルの町で幾人もの住民の血を吸い、眷属として解き放つことで、町を混乱に陥れた。
被害人数は512人。
当時、魔族は恐怖の対象であり、公になれば人心を惑わすとのことで、この事件の詳細が公式に発表されてはいないが、後年発見された当時の領主の手記によると、偶然町を訪れていた後の女王とその王配となるレイチェルとエリリークによって、グリーグスは討たれたとされる。
●クリス・ドーラ・ローラント
43代ローラント国王クラリスや、44代ローラント国王レイチェルの王配エリリークの実母。
夫である42代ローラント国王ダグラスとの夫婦仲は冷え込んでいたらしく、男遊びや麻薬に溺れる荒れた生活をしていたとの醜聞もある。
しかし女王となった娘に諭されたのか、王太后となったその後は生活態度を改め、慎ましやかに暮らしていたという。
また、王族としての責務を果たさなかった罰として、城の後宮に半ば監禁状態だったというが、後年は敗戦したクバート帝国へと派遣され、戦後処理の事業に従事させられていたようだ。
それが切っ掛けで帝国に永住した彼女は、77歳の時に転倒してそのままあっさりとこの世を去るまで、平穏に過ごしたとされる。
●ケシィー・キンガリー
犬型獣人で、常にメイド服を身に纏っている彼女は、アリゼ・キンガリーの関係者だと推測されるが、詳細は不明。
少なくとも「キンガリー」姓を与えられる程度には近しい存在であったことは間違いないが、基本的には王都のノルン学園敷地内にあるキンガリー邸から出てくることは少なく、謎の部分が多い存在だった。
ただ、魔族との戦争の際には、恐るべき実力で魔物の群れを殲滅している姿が目撃されている為、アリゼの私兵集団「メイド隊」に所属していたのではないかと推測される。
●カナタ・ココノエ
クバート帝国によって召喚されたとされる勇者。
経歴などはほぼ不明である。
ローラント王国内で多くの国民を拉致し、1度は勇者アリゼナータにも勝利したとされる恐るべき存在であったが、最終的にはアリゼナータとの再戦に敗れて死亡した。
●ゴートス
ノーザンリリィ辺境伯アイの側近であり、ゴブリン族の王だったと言われているが、その姿は通常のゴブリンよりも人間に近かったとされ、人間の言語も理解していた。
その一族の子孫は、現在もノーザンリリィ地方に町を作り、生活している。
●コロロ・タマラ
ローラント王国初と言われる獣人の宮廷魔術師であり、女王の親衛隊にも所属していた。
ノルン学院出身であり、同院出身の隊長のカーシャや副隊長のキャスカとは強い繋がりがあったとされる。
タヌキという可愛らしい姿とは裏腹に、高い魔法戦闘力を誇っていたが、女王クラリスからは大変可愛がられていたとのことで、「容姿だけで出世した」と、やっかむ者もいたとか。
宮廷魔術師を引退後は、魔法の研究の為に各地を旅していたようだが、その過程で行方不明になったまま、現在も発見されていない。
●コンスタンス・アンバー
サンバートル領の2代目領主カエサル・アンバー伯爵の長女であり、後に彼女自身も領主の座を継いでいる。
本人は「何者かによって、幼児の姿から成長できない呪いをかけられている」と、公言しており、実際に幼い少女の姿をしていたらしいのだが、その発言が真実なのかは不明だ。
本当は人間ではなかったのではないか──との説もあり、事実、彼女と同名で似た容姿をした少女の目撃情報が、百年以上の長期にわたって散見される。
その際、その姿はメイドであった為、メイド隊との関係も疑われているが、「メイド隊の関係者ならば、たとえ人間ではなくても邪悪な存在ではない」と擁護する者もいるそうだ。
確かに彼女らに救われた者達は、数え切れないほど存在するのだから。
ここに書かれていることは、一般人から見た憶測も含まれているので、事実ではない場合もあります。なので、「死亡」とか書かれていても、その時点では生存してた可能性も……。あと、人間としては死んだけど、別の存在になって生きているとか……。
次回も紹介が続きます。




