34 進む解析
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儂──リーザは今、巨神像攻略に必要な資料の解析を進めている聖女様の手伝い中じゃ。
最初は魔族語や古代語で書かれた資料を読むことにさえ苦労したが、1日ほどで聖女様が言語の解析を終えたとのことで、今はひたすら資料の読み込み作業を続けておる。
で、聖女様は解析を始めてから4日目に入っても、まだ一睡もしていないようじゃ。
だが、儂はさすがに不眠不休とはいかない。
脳が疲れると、効率が落ちるからのぉ……。
今も食事を摂った後にちょっと一服しているところじゃが、聖女様は気晴らしなのか、儂に話しかけてくる。
それでも資料を読む目と手の動きは止まらないのだから、恐れ入るわい。
しかもページをめくるスピードが、物凄く速い。
ペラペラペラペラ──と、本当に読んでいるのか怪しく感じるほどじゃ。
「私も昔は、女戦士が胸の大部分を露出させている鎧を装備していることに、疑問を持っていたのよ。
防御力が下がるんじゃないの?……って」
「はあ……」
儂は生返事をしながら聞いておった。
「でも、いざ巨乳になってみて気付いたのよ。
胸の間や下って、蒸れるのよね!
そして痒くなるのよ!
だから胸を露出させて、蒸れないようにしていたのね。
防御力の低下は、魔道具や素早い動きとかでフォローできるしね」
それは個人の解釈ではないかの?
ただ、儂にも正解は分からぬ。
「はあ……儂は巨乳になったことが無いから、理解できんのぉ……」
儂の姿はまだ、人間で言えば16~17才……。
エルフの血を引く儂としては、まだ成長できる可能性はあるはずじゃが……。
だから胸のサイズが普通でも、まだ焦らぬぞ……!
そもそも鎧の話じゃが、胸がそれほど大きくない者も、露出しているような気もするが……。
自分は巨乳だというアピールなのかの?
「そして今の私は、その蒸れを2度と実感できなくなったわ。
そうなってみると、不思議と寂しいものね……」
ああ……クラリス陛下の身体は、貧……いや、スレンダーだからのぉ……。
いや、聖女様の能力ならば、胸だけを大きくすることも可能だろうに……。
それをすることは、クラリス陛下への冒涜だと考えているのじゃろうか……。
「ところで、下の方の露出度が高い者がいるのは、どういうことじゃ?」
「それは……上の方とのバランスを考えて……とか?
もしくは痴女」
「痴女」
これから女戦士を見る目が、変わってしまいそうなのじゃ……。
「……さて、儂もそろそろ作業に戻ろうかの」
あまりゆっくりとしている場合でもないしのぉ……。
まだ読んでいない資料は、数千冊もあるのじゃ……。
解析を進めて7日──。
さすがに聖女様も睡眠を取ることになった。
今は一眠りして、食事を摂っておる。
儂もそこに同席して、これまで解析した資料の内容から、巨神像の対策を話し合っておった。
「リーザが伝えるまで、アイは巨神像の存在に気付いていなかったのよね?」
「そのようじゃな。
隠密系のスキルでも、使っておったのじゃろう」
「そこが不自然なのよねぇ……」
「ふむ?」
どういうことじゃ?
「あの巨神像の装甲には、魔法中和の術式が施されている上に、装甲に伝説的な金属であるオリハルコンが使用されているらしく、現時点で誰にも突破できない防御力を誇っているのよ?
それだけ強いのに、こそこそ隠れて移動する必要があると思う?」
「なるほど、なるべく戦闘を避けたい事情があったのじゃな?」
「そうね。
おそらくあの巨体だから、エネルギーの問題だと思うわ。
たぶん通常攻撃ならばともかく、都市を一撃で消滅させた腹部主砲を使う為には、かなりのエネルギーを消費する……。
あれから一度も使っていないところを見ると、エネルギー充填に時間がかかるのでしょうね。
だとすれば、次の一撃を凌ぎきれば、この戦いの間にもう一度撃つことは難しいんじゃないかしら?」
つまり聖女様は、その主砲をあと2回も撃たせるつもりはなく、その前に決着をつけようとしているということじゃな。
「だが……こちらの攻撃が通じないことには……」
我々に勝ち目は無い。
「いえ、攻撃が効きそうな穴はあるのよ?
主砲を撃つ時に開いた発射口を狙えば、内部に直接攻撃を入れることができるわ」
「しかしそれは……!」
辺境伯様ですら消滅した巨大なエネルギーの前に、身を曝すということじゃ。
「もっと他に安全な場所があるじゃろ……」
確か目や指からも、攻撃ができたと聞くが……。
「目はレンズのような物で覆われていたから、装甲と同じ処理がされていると考えた方が良いわね。
指は攻撃が通るかもしれないけど、身体の末端だから致命傷にはならないし……。
まあ、運が良ければ、破壊したところから内部に入り込むことは可能なのかもしれないけれど」
「じゃあ、それならば──」
儂はその案を推そうとしたが、聖女様は即否定に入る。
「でも、相手は生物じゃないから、腕ごと切り離されるなんてことをされる可能性もあるし、確実とは言えないわね。
選択肢としてはありだけど、攻撃の発射口を狙うというこちらの意図を悟らせない為にも、最終手段にした方がいいわ」
「ぬう……しかしどうすればいいというのじゃ?」
主砲の発射口が開いた瞬間には、もう撃たれている可能性が高いように思う。
もしかしたら何秒かの時間はあるかもしれないが、それを狙うのはリスクが高すぎるのではなかろうか……。
「私の本気の熱線で主砲を撃ち返して、逆流させられるのならば、それが1番いいんだけど……。
それで成功するのかはちょっと分からないわね。
でも、クジュラウスが古代の魔法を研究していたから、その中に使えそうなのが無いか、今探しているところよ」
なるほど……古代魔法か。
あの巨神像を作り上げるような文明じゃ。
何か強力な攻撃魔法を、開発していた可能性もあるのかもしれん。
「分かったのじゃ。
儂も魔法関連の資料を漁ってみる!」
「お願いね」
まずはどれが魔法関連の資料なのか、分類するところから始めないといかんのぉ……。
先はまだ長そうじゃ……。
「あっ……隕石召喚?
聖女様、これはどうじゃ?」
良さそうな魔法を見つけた──そう思ったのじゃが、
「それ、異世界でも最強魔法に挙げられるものよ。
でも、世界を滅ぼす可能性があるから駄目ね。
まあ、一応目を通しておくわ」
「そっかぁ……」
強すぎても駄目らしい。
なかなか難しいのじゃな……。
規制は解除されました。過去のちょっとまずかった部分を修正していますが、内容には全く影響はありません。




