26 ユーと秘密の部屋
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ユーなんですけどね。
巨神の内部に侵入したけど、広すぎるよここ……。
まるで迷宮のように、通路が広がっている。
よく考えたら山よりも大きいから当然なんだけど、中に高層ビルがいくつも入っているくらいの密度があっても、おかしくないんだよね……。
これじゃあ、何処へ行けばいいのか分からん……。
そもそも何をすればいいのかも、よく分からないけどさぁ……。
これだけ巨大なものだと、内部から破壊するというのも難しいだろうしねぇ……。
今の私の能力では、たとえ心臓部を見つけたとしても、どうすることもできないかもしれない。
勿論、この巨神を操っていると思われる魔王を見つけて倒すというのも、ちょっと難しいだろうし……。
今の私の実力だと、並みの魔族をギリ倒せるかどうかって感じだと思う。
でも内部構造を理解すれば、少しは攻略の糸口にはなるのかもしれない。
それさえ分かれば、後はお祖母ちゃん達に任せよう。
そしてどうしたらいいのか分からない時は、勘に頼ろう。
案外直感が、いい方向に働くこともあるものだ。
う~ん、こっちだな。
私は念の為、床に擬態しながら、気が向くままに通路を進んだ。
あ……前から誰かくる気配が。
私は天井に移動して、姿を隠した。
身体を紙のように薄くのばし、表面の色と質感を壁と同じにしてしまえば、見た目だけではまず発見されない。
勿論、生命活動や魔力の動きなども、「隠蔽」のスキルで隠す。
よしよし、近づいてくる奴は、私には気付いていないな。
相手は……大きなゴブリン……いや、オーガかな。
低位の魔族って扱いなのだろうか?
あれくらいなら倒せそうだな……。
そんな訳で、オーガが私の真下を通った瞬間、私はスライムの姿になって落下。
そしてオーガの頭部を私の身体で包み込めば、これで呼吸もできないし、声も出せない。
「────!?
──────!?」
おっと、暴れられて仲間に気付かれても困るね。
オーガが必死に空気を求めて口を開こうとしているので、そこから麻痺毒を注入。
で、オーガが動けなくなったら、ゆっくりと窒息死させればいい。
完全に動かなくなってから、私の中に吸収してしまえば、証拠は残らないぞ。
まさに完全犯罪。
うん、これを繰り返していけば、私の能力もかなり上昇するんじゃないかな?
そろそろ人型にも擬態できるようになったかも。
『ん~……』
こんな感じかな。
私は吸収したオーガの姿に擬態した。
本体に似せた姿でもいいんだけど、この姿ならば怪しまれずに動き回ることができる。
なによりもスライムの姿でズリズリと床を這いずり回るよりも、歩いた方が移動スピードは速いし、それならば歩幅が大きい身体の方がいい。
それと、行くべき場所が見つかった。
オーガから得た断片的な記憶で、「近づいてはいけない場所」ってのがあったので、そこへ向かうことにする。
なお、司令部が頭の部分にあるらしいけれど、敵の戦力が集中していそうなので、そっちはスルー。
で、向かっているのは、巨神の胸の辺りにある区画のようだ。
長い階段を使う必要があって、大変な道程だった。
けれど途中ですれ違った魔族には気付かれなかったので、倒せそうなのは不意打ちで倒して吸収したし、無駄ではなかったよ。
この調子で敵を全滅させる──とは、さすがに私も自惚れてはいない。
まだ四天王は無理だと思うし……。
本体が健在なら、魔王とだって戦えたんだろうけどねぇ……。
そして目的の場所付近へと到達した。
ここからはスライムに戻って、擬態しながら進もう。
警備は厳しくなっているはずだし、おそらく防犯用の罠も仕掛けられているはずだ。
あれ……?
警備員がいないな。
警備員すら近づけたくないほど、重要なものがあるのかな?
……って、通路の先が行き止まり?
いや、土魔法で塞がれているだけか。
う~ん、私は魔法が得意ではないし、解除は無理だな。
時間はかかるけど、身体の一部をドリル状に変化させて、酸で壁を溶かしながら削るか。
……………………よし、小さな穴を開けることができた。
そこをくぐり抜けると、通路の先に扉がある。
……それには鍵がかかっていたが、私に対しては無力。
秘技・スライムピッキング!
鍵穴に私の身体を流し込んで、中で動かせば簡単に解錠できる。
そして中に入ると、室内は真っ暗だった。
まあ、感知系のスキルを使えば見えるけれど。
室内は広く、そこにいくつもの巨大なガラス製の器が並んでいた。
その中は液体で満たされ、何か生物のような物が浮かんでいる。
実験動物の標本……?
しかし見たことがない生き物だ。
いや、部分的には見たことがあるけど、それが複数混ざり合っている。
イヌの頭に、ヘビの身体、トカゲの手足に、クジラの尾……とか、もうバラバラ。
『キメラってやつか……!』
生物兵器として研究していたってことかな?
でも本体の記憶では、こういう怪物が魔王軍の中にいるのを見たことがない。
未完成で実戦投入できなかった?
いや、こんな戦力になりそうなものが未完成のまま、全面戦争を仕掛けてくるとも思えないよね……。
完成品が存在して、温存されていると思った方がいいのかもしれない。
これはもっと色々と調べないと駄目だな。
あ……あっちに、本棚があるな。
研究資料とかだろうか?
ん……魔族語かな、これ?
ちょっと読めないから、どれが重要な物か分からない。
面倒臭いから、片っ端から空間収納に入れておこう。
それから部屋の奥に、更に扉が……。
そっちも調べてみようか。
『ぬおっ!?』
しかし扉を開けると、そこには私の予想外のものがあった。
『肉塊……?』
それは部屋全体を覆い尽くす、無数の臓器のごとき肉塊だったのだ。
しかもなんか脈動してる……。
動くぞ、これ!?
土日はお休みします。




