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21 目覚め

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 何だぁここは……天国か?

 周囲には何も無い。

 真っ白い空間が広がっている。


 ……転生前に見た女神空間に似ているような気もいるけれど、私は死んだ記憶が無いし、似て非なる空間なんだと思う。


 たぶんこれは、夢の中なんだろうな……。

 だってクラリスとのことを思い出すと、彼女に関わる映像が浮かび上がるし。


 だから私は、クラリスとの思い出を何度も何度も繰り返し見ている。

 それをずーっと見続けている。


 どれほど時間が経過したのかも、よく分からない。

 既にクラリスとの出会いからこれまでの時間を、何周もしているような気さえした。

 感覚的には100年以上か。


 その思い出の中には、楽しいこともたくさんあったし、それは私にとってかけがえのない宝物ではあるけれど、後悔も多く含まれている。

 どんなに力を手に入れても、人間である限りは、ままならないことは沢山あったのだ。


 勿論、クラリスはそんなことは気にしていない。

 彼女と魂が融合した今、それが分かる。

 ──分かるからこそ、もっと何かをしてあげたかったという気持ちが強いのだ。


 私はクラリスから受けた大きな愛を、まだ返しきれていないのではないか──。

 勿論、クラリスを復活させた時には、返す機会はあるのだろうけれど、復活したクラリスは、必ずしも今までの彼女と同一の存在ではないからなぁ……。


 ……というか、今復活させるとクラリスへの愛が溢れすぎて、甘やかしすぎてしまうような気がする。

 もう、溺愛だ。

 それはやっぱり、教育には悪いよなぁ……。

 他の娘達とも、扱いに差は付けたくないし……。

 

 だから私がもう少し冷静になってからクラリスを復活させないと、お互いにとっても良くないんじゃなかろうか……。


 でも……クラリスがいない時間が長く続く──そう考えると凄く辛い。

 自然と涙が溢れてきて、もう何リットル流したのか分からないなぁ……。

 夢の中とはいえ、脱水症状になりそう……。


 そんな私の前に、またクラリスの映像が浮かびあがる。

 まだ若く少女の姿で、私と出会ったばかりの頃の姿に似ている。

 そんなクラリスの顔は怒っていた。


「ふふ……あの頃のあなたは反抗的で、いつもそんな顔をしていましたね……」


 ……いや、違うな。

 このクラリスは、今の私の有様に怒っているのだ。

 日々を泣き暮らして無為に過ごし、なすべきことをなさない私のていたらくを心配し、そして怒っている。


「そうですね……。

 あなたの言いたいことは分かりますよ。

 もっとしっかりしろ……ってことですよね」


 そうだと言わんばかりに、クラリスは微笑む。

 うん、そうだね。

 もう彼女は私の中にいるのだから、何を言いたいのか手に取るように分かる。

 

 クラリスの想いに応える為に、私は立ち直らなければならない。


「これからは、私があなた(・・・)になるのですからね……」


 私達はもう1つになった。

 だからこれからは、クラリスの名と姿に恥じないような生き方をしなければいけない。


「ありがとうクラリス()……」


 私の目の前で、クラリスは光の粒子になって消えて──いや、私の身体(からだ)に吸い込まれていく。

 あれ……?

 いつからそうだったのかもう分からないけど、この夢の中の私の姿もクラリスのものになっていたんだな……。


 さあ、目覚めよう!

 そして今まで通り、やれることを全力でやっていこう。


 ……そう思っていたんだけど、私は目覚めた直後に倒れた。




バっカ(馬鹿)じゃないの!?」


 三女のアリタから、お叱りの言葉をいただいた。

 私はおかゆを食べながら、それを聞いている。


「まさか部屋に引きこもってから、10日(とおか)以上も飲まず食わずだったとか……。

 普通の人間なら、死ぬよ!?」


 どうしても食欲が湧かなかったんだから、仕方がないじゃん。

 引きこもっている間は、一応ケシィーが部屋の前に食事を用意してくれていたんだけど、スルーしていた。

 そしていざ空腹が限界に来た時、もうケシィーは食事を用意してくれなくなっていたのだ。


 その後、脱水症状と栄養失調で倒れているところを、先程アリタに発見されて救出された訳だ。


「ケシィーには、呆れられちゃったのかしらね……?」


「あ~……、ケシィーは今、最前線に出ているからそういうことじゃない。

 たぶん母さんももう子供じゃないんだから、お腹が減ったら勝手に自分で用意して食べると思っていたんだと思う」


 ん? 最前線ってどういうこと?


「大体、食べ物なら空間収納に、何かしら入っていたんじゃないの?

 水だって、水魔法で出せただろうし……」


「人間、限界がくると、頭もまともに働かなくなるのよ……」


 アリタは「はぁ~……」と、大きく嘆息した。


「こんな馬鹿なことで、人類が滅びるところだったよ……」


「どういうこと?

 私が引きこもっている間に、何かあったのかしら?」


 私が周囲に索敵をかけてみると、王都の人口が減っていることが分かった。

 「操影」スキルで、マーキングしてある個人を特定しようとすると、ケシィーもいないし、カーシャのような軍属もほとんど消えている。

 そもそも王族が相当数不在になっているのが、異常事態だ。


「……魔王が復活して、魔族が攻めてきたんだよ。

 あと、アイ(ねえ)が生死不明……」


 そんなアリタの言葉に対して私は──、


「大変じゃない!?」


 思わず口の中に含んでいたおかゆと一緒に、声を吐き出した。

 目覚めた後の「私」のセリフは、クラリスの口調に合わせています。


 土日の更新はお休みです。

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