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17 巨 神

 ブックマーク・☆での評価・いいねをありがとうございました!


 今回は途中で視点が変わります。

 そこにいたのは、下手な山よりも大きな人型の物体だった。

 しかもそれが、ゆっくりとだけど動いている。


「は? 動く象(ゴーレム)!?

 あんな大きな……嘘でしょ……」


 いくらなんでも、あんな巨大な物体を何者かが(つく)り出したというのは、ちょっと信じがたかった。

 しかし実際に目の前に存在している。

 

 だけどこれほど巨大な存在ならば、重量だってかなりのものだろうし、普通は地面にめり込む。

 そうなっていないということは、魔法で重量もコントロールしているということなのだろうけど、これはかなり高度な技術だぞ……。

 少なくとも母さんでも、これを創るのは手こずると思う。


 さて、どうする……?

 おそらくノーザンリリィ辺境領を壊滅に追い込んだのは、この巨大な動く象──巨神像(アトラス)とでも呼ぼうか。

 あいつと戦う?

 いや……生存者を捜す方が先だな。


 私は周囲に索敵をかけ、生命反応を捜す。

 お、数kmほど離れた場所に、一塊になっている集団がいる!

 それと巨神像の方からも反応はあるけど、そっちは魔族だろうから無視だな。


 よし、集団のところへ転移だ。

 で、目的の場所へ辿り着くと、そこには数十人ほどの人間が身を寄せ合っていた。

 その中にはノーザンリリィで、アイ(ねえ)の側近をしていた文官の姿も見える。


「大丈夫!?」


「ああっ、アリタ様、いいところに!

 リーザ様が……っ。

 我々では手の(ほどこ)しようがなく……っ!!」


 そこにはナウーリャ教の教祖であり、予言者でもあるハーフエルフ、リーザが地面に身を横たえていた。

 大きな怪我はしていないように見えるけど、どうやら魔力が枯渇しかけているらしく、意識は失っている。


 おそらくノーザンリリィを破壊した巨大な爆発から人々を守る為に、「結界」へ限界以上の魔力を込めて耐えた結果なのだろう。

 最悪の場合は命を失いかねない状態だ。


 まあ、魔力が足りないのなら、私が分け与えてやることはできるが……。


「治療は安全なとこへ運んでからする!

 あなた達は私の指揮下に入って!

 ……アイ(ねえ)はここにはいないんだよね……?」


「はい……」


 側近の人は、沈痛な面持ちで答えた。

 アイ姉に何かあった──それは分かるが、今は追及している場合ではない。

 まずはリーザの方が先だ。


 私はリーザ達を連れて、王都へと転移した。




 (わし)の名はリーザ。

 ナウーリャ教の教祖をしておる。


 かつてはポンコツと呼ばれ、教祖の座も名ばかりであったが、その原因は女神様の声を聞く為に力を消費していた結果、常に魔力不足だった所為じゃ。

 だがこの数十年間、魔力を増やす為の訓練はしてきたし、エルフとしては全盛期の肉体年齢に成長した今、魔力不足の問題は解消されたのじゃ。


 今の儂はあらゆる魔法も使いこなせるし、聖女様の一族以外が相手ならば、そう簡単に負ける気はせぬぞ。


 だからこそ魔王軍の侵攻が始まった今、儂も最前線に出て戦っておる。

 現在我々が行っているのは、魔物の群れの侵攻を止める作戦じゃ。

 魔物の群れが北の大森林から湧き出している為、森を燃やすことで奴らの出口を塞いでいるという訳じゃな。


 もっとも範囲があまりにも広い為、全ての地域をカバーできるはずもないし、雨によって森林火災が鎮火してしまう場合もある。

 それに炎をものともせずに、森から出てくる魔物も皆無ではない。


 それでもこの思い切った作戦によって、敵の軍勢は森林火災で分断され、各個撃破が可能な状態となっておるようじゃの。

 とはいえ、我らが人類の戦力にも限りはあるし、戦線は徐々に南へ押し広げられておるという。


 そもそも最初の襲撃の時点で、北方の都市部は壊滅し、住人や駐留していた兵員には多大な犠牲が出たらしい……。

 犠牲者数を調べる余裕など無いのでハッキリとは分からぬが、一説には数十万人とも……。

 北方には魔導アームストロング砲などの最新兵器が数多く配備されていたようじゃが、魔王軍の物量には抗しきれなかったようじゃ……。


 この初動で甚大な被害を(こうむ)った人類には、おそらく長期の戦いを維持するだけの体力は残っていないじゃろう。

 これはもう、聖女様達の力に頼るしかない事態じゃのぉ……。


 実際、このノーザンリリィ辺境伯領は、聖女様の娘であるアイ辺境伯様ただ1人によって支えられおる。

 彼女が巨大なスライムに変じ、森との境界を数十kmに渡って封鎖しているから、魔物の侵入は他の地域から比べれば少ないのじゃ。


 しかし辺境伯様が壁となって守れる範囲にも限界がある為、大きく迂回して領内に入り込む魔物も存在するし、空や地中を通ってくる魔物も皆無ではない。

 また、少数ではあるが、転移魔法で送り込まれてくる場合もある。

 

 儂はそのような魔物を駆逐する為に、部隊を率いて各地を飛び回っておった。

 今の儂は転移魔法も使えるし、大規模な攻撃魔法も自由自在かつ何十回と行使できるので、大活躍じゃったぞ。

 これで更に信徒達からの崇敬(すうけい)の念が、我が身に集まることになるのぉ……。


 だが、さすがに不眠不休という訳にはいかん。

 辺境伯様による奮戦のおかげで敵の侵攻が落ち着いてきた頃、儂は領都に戻って少し休むことにしたのじゃ。

 

 ……なにやらまた辺境伯様が、大きくなったような気がするのぉ……。

 数知れぬ魔物の群れを飲み込んでおるのだから当然じゃが、彼女がもしも敵だとしたら、魔王軍よりも対処できない相手だったと思うのじゃ……。


 味方で本当に良かった……。

 そう思いながら、儂は一時の眠りに就いた。

 しかし──、


「!!」

 

 翌朝、女神様からのお告げがあり、儂は飛び起きた。

 危険を知らせるものじゃな。

 正直言って、もっと早く詳細に(しら)せてくれ──と、思うこともあるが、女神様ですらこの世界に対しては直接に干渉することに制限があるらしく、そうも都合良くいかないようじゃ。


 女神様はあくまでもこの世界の管理者であって、創造主や所有者ではないということらしいのぉ……。

 つまり好き勝手をする権限が無いのじゃ。

 神々は基本的にはこの世界に対して傍観の立場らしいし、女神様のお告げは越権行為に近いものがあるらしいので、お告げがあるだけマシなのかもしれん……。


 ともかく辺境伯様に報告じゃ!


 何かとんでもなく強大なものが来たぞ──と。

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