16 破壊の渦
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それと、総合評価が7000ポイントを突破しました。本当に感謝です。できれば連載中に1万の大台を目指したかったのですが、ちょっと難しそうなので、せめて8000ポイント突破を目指して頑張ります。
竜族の方が少し落ち着いてきた頃、私はフレアに出陣の準備を整えるようにと命じた。
だけど実際に動けるようになるまでには、まだ少し時間がかかるだろう。
だから私はその時間を利用して、偵察へ行くことにした。
「ファーン、拠点までお願いね。
いや、ちょっと離れた場所に転移して」
目指すは遠い北の果てにあるという、魔王軍の本拠地だ。
「……へーい」
嫌そうな顔で答えるファーン。
彼女にとっては、魔族への裏切り行為も同然なのだから、気乗りしないのも当然だろう。
でも初めて行く場所への転移は不可能じゃないのだけど、やはりその場所へ行ったことがある者に頼った方が、事故の心配もなく安全だ。
だからファーンの転移魔法で、魔王軍の本拠地へと跳ぶことにする。
なおファーンの持つ魔力では一気に目的地まで跳べないらしく、私が可能な限り近くへ──母さんの生まれ故郷まで転移してから、彼女に任せることにした。
それでも魔力が足りなくて、私が彼女に魔力を供給する作業を、何度か繰り返すことになったが……。
まあ、眷属が相手だから、魔力のやりとりは結構簡単にできるんだけどさ。
「悔しいけど、気持ちがいい……」
ファーンにとって私の魔力は、食事のようなものだ。
勿論普通の食事をすることはできるのだけど、魔力を直接与えた方が効率は良い。
そして食への欲求を満たすことは、少なからず快感が伴うものだ。
ファーンに対して、順調に餌付けが進んでいると言える。
「わ……寒……」
転移が終わると、急激な気温の差を感じて驚く。
まだ初夏だというのに、晩秋のような寒さだ。
先程通った母さんの生まれ故郷でもこんなに寒くなかったから、ここは北極圏に近い場所なのかもしれない。
「あ、あれかな?」
数kmほど前方の空に、何か巨大な物が浮いている。
異世界物あるあるの、「浮遊大陸」というやつだ。
いや、実際には大陸といほどではなく、精々小島程度だけどね。
「ラ●ュタは本当にあったんだ!」
「ラピュ……何?」
もしかしたら私、今までで1番異世界っぽい風景を見ているかもしれない。
まあ、この世界出身の私が言うのも、おかしな話だが……。
でも空中に浮く島って、この世界でも常識ではないんだよね。
時間があれば、スケッチしておきたいところだ……。
「何あれ?
なんで浮いてるの?」
「さあ……我にもさっぱり……」
ファーンにも分からないらしい。
「あ……でも前にクジュラウスが、古代文明がどうのこうのとか言っていたような……」
あるのか、そんな文明が!?
じゃあ、やっぱりラ●ュタみたいなものか。
となると、古代兵器があそこに眠っているなんてことも……?
「って、気配が全く無いんだけど、魔王は今もあそこにいるの?」
「え……?」
索敵をかけても魔王どころか、魔物1匹の気配すら感じない。
これはもしかして、もう南に向かって進軍しちゃってる?
う~ん、レイチェル姉さんに連絡をした方が……駄目だ、念話はさすがに届かないや。
それならば──!
「スペ●ウム光線っ!!」
「なっ、なにをやってるんだ──っ!?」
私は浮遊大陸に向かって、全力の熱線を撃ち込んだ。
後々魔王軍が逃げ込んだり、何かしらの兵器が起動したりとかの後腐れが無いように、今の内に完全に破壊しておこう。
ファーンはかつての古巣を破壊されて驚いているが、彼女にはこれからも魔族との戦いに役立ってもらうつもりだから、この程度で動揺していたら精神がもたないぞ。
元同族と戦わせるのは酷な話かもしれないが、文字通り生まれ変わったと思って、割り切ってもらいたい。
実際1度死んだだけでは、ファーンが過去に犯した罪は贖いきれていないのだし……。
ともかく、浮遊大陸は粉々に砕けて、大地に降り注いだ。
これならば、もう人類の脅威になることは無いだろう。
……内部を見学できなかったのは、すごく残念ではあるが……。
さて、1度戻って姉さんに報告を入れ──、
「え──?」
その時、何か衝撃のようなものを感じた。
ただしそれは、遠く離れた場所から伝わってきたものらしく、小さな空気の揺れだ。
だけど遠く離れた場所に、衝撃が届くということ自体が異常だ。
……衝撃が発生した現地では、どれだけ大きな影響があったのだろうか?
凄く……嫌な予感がする。
「ファーン、帰るよ!」
「へっ、はっ!?」
私はまだ状況が飲み込めていないファーンを強引に連れて、一気に竜族のところまで転移する。
するとそこでは、竜族が騒然としていた。
「この世の終わりだ~っ!?」
フレアは……動揺していて、話が聞けそうな状態ではないな……。
じゃあ──、
「シルビナ、何事!?」
「ああ、アリタか!
どこかで大きな爆発が発生したみたいだが、詳しいことは分からん!」
取りあえず、ここが襲われたということではないようだ。
それは良かったが、それでは何処が被害に遭った……!?
私は確認の為に上空へ転移し、周囲を見回してみる。
するとと、そこには──、
「原……爆……?」
そこには、巨大なキノコ雲のようなものが見えた。
でもここから数百kmは離れている。
それなのに見えるって、どんな規模……っ!?
しかもあの位置って……!
ノーザンリリィ辺境伯領の方角だ……!
「アイ姉……っ!」
念話は……通じないっ!
「くっ!」
私は直接ノーザンリリィへと転移する。
しかし周囲は炎と粉塵に包まれていて、何も見えない。
だから少し離れた場所に移動してみたが、状況が見えてくる。
周囲の森も山も、そして領都の町並みも、何もかも吹き飛んでいた。
そして──、
「なに……あれ……っ!?」
私の視線の先には、全高が1000~2000mはありそうな、巨大な物体がそびえ立っていた。
土日の更新は休みます。




