15 マジ天使
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さて、新たな眷属の身体は完成した。
ちなみに、見た目は天使だけど、死に損ない系の魔物だから、浄化魔法などの聖なる力が弱点だぞ。
まあ、相当高レベルの存在として作ったから、弱点を突いても簡単には倒せないだろうけれど。
スペックとしては死に損ない系の最高峰と言われる吸血鬼の真祖や、不死魔導師と同レベルじゃないかな?
名付けるとしたら、死天使とかそんな感じだろうか?
そしてこの作り上げた身体に、魂を呼び寄せて入れる。
まだ死んで間もないから、完全に肉体と魂の繋がりは切れておらず、呼び出すことは可能だ。
でも、1つの身体に魂は2つもいらないから、リビーのは必要ないな。
カシファーンのだけでいいか。
それに魂を入れても、まだ終わりではない。
悪さをしないように、奴隷契約と同様──というか、それよりも強制力のある呪いを、魂に刻み込んでおく。
これで私には絶対服従だし、人間社会で「悪」とされることは、私の許可なくできないようにしておいた。
それでもある程度の人格や自由意志を残してあるのだから、温情だと思ってほしい。
それと念話でしか会話できないのでは不便なので、人間の言語パック術式をインストールしておくね。
「さあ、蘇れ!
我が忠実な僕よ!
汝、新しきその名は、ファーン!」
「……んあ?」
ファーンは目を開けて起き上がった。
状況がまだ飲み込めていないようで、周囲を見渡している。
まあ、私と石の壁しか無いけれどね。
「あっ、貴様はっ!?」
私の顔を思い出したのか、ファーンは私に飛びかかろうとした。
まあ放っておいても呪いの所為で私には逆らえないから、自動的にその動きは止まるんだけど、まずは立場を分からせる為に、あらかじめ仕込んでおいた懲罰術式を発動させることにしよう。
「緊箍経……」
「!? ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!?
頭がっ、頭が締め付け、違っ、絞られるぅぅぅぅぅぅーっ!?」
私が呪文を呟くと、ファーンは激しい頭痛に襲われて、地面に転がり悶え苦しんだ。
これは三蔵法師が孫悟空を罰する時に使っていたお経からヒントを得て、母さんがが作った術式だ。
ファーンは頭痛として感じているが、実際には肉体ではなく魂に直接働きかけているので、「苦痛耐性」のスキルも通用しないという極悪仕様である。
例えるなら、神経に直接触られるみたいな?
「あんたは私には逆らえない。
逆らうとそうなる。
OKー?」
「ううぅ……オーケー……?」
痛みから解放されて半泣きになっていたファーンは、項垂れるかのように頷いた。
さあ、これから魔王軍の情報とかを、たっぷりと吐いてもらおうか……!
「あ、まずは服を着て」
私は空間収納から服を出して、ファーンに手渡した。
「え……なんで裸……?
というか、なんだこの身体は!?
貴様、我になにをしたっ!?」
「えっ、そういう態度でいいの?
緊箍──」
「あっ、済みません。
説明していただけますか?」
私が懲罰術式をちらつかせると、ファーンはあっさりとへりくだった。
……結構扱いやすいな、こいつ……。
案外仲良くやっていけそうだ。
ファーンに色々と聞いてみたけど、彼女は半ば左遷されかけていた所為で、あまり情報を持っていなかった。
四天王がそんなのでいいの……?
まあ、魔王軍の本拠地が遠い北の地にあるということと、魔王の能力が魔物を強制的に支配することだということは分かったけど……。
その支配能力が高等な魔物には通用しない──ということが判明しだけでも、良かったというべきか……。
つまり今回仲間に引き入れた竜族が、魔王に支配されるということは無いということだ。
ただ、今行われている魔王軍の侵攻が、億単位にも届こうかと言うほどの大軍勢になっている理由については、ファーンにも分からないらしい。
残る四天王のクジュラウスが、何かをやったのではないか……という話だ。
そのクジュラウスは、自身の知的好奇心を満たす為ならばなんでもやるタイプらしく、魔王ですらも利用しようとするかもしれない──と、ファーンは心配していた。
あ~、つまりマッドサイエンティストなタイプかぁ……。
となると、魔物のクローン培養みたいなこをやったのかな?
ともかく竜族の方が少し落ち着いたら、ファーンの転移魔法で魔王軍の本拠地の様子を見てくるか……。
で、そのファーンだが……。
「………………くっ!」
「わぁ~、モフモフ~じゃーん」
「柔らか~い!」
子供達にたかられていた。
背中の翼はフワフワのモフモフになるように、かなり気を使ったからね。
その気になれば、最高級の羽毛布団にも転用できるぞ。
その肌触りの良さで、子供達に大人気だ。
でもファーン自身は酷く鬱陶しそうで、特にレイリーへは強い苦手意識を持っているようだ。
本当ならば追い払いたいところなのだろうが──、
「以前あんたを撃退したのは私の母さんで、そのレイリーは私の姉さんの孫。
危害を加えたら、私よりも怖い母さんと姉さんが怒るからね」
と、脅しておいたので、何もできない。
そもそも呪いの所為で人間には許可無く危害を加えることができないようになっているんだけど、ファーン自身は禁止事項に触れると懲罰術式が起動すると勘違いしているらしく、どこまでやったらアウトなのかが分からずに戦々恐々としている。
まあ、都合がいいから、そのまま勘違いさせておこう。
あと、レイリーが男の娘だということを教えたら、ファーンは愕然としていた。
たぶん母さんと勘違いしたことよりも、恥ずかしかったのだろう。
でもレイリーもエリお兄さんの血を引いているだけあって、女装のクオリティは相当高いし、見破ることはかなり難しいと思う。
それと──、
「お姉ちゃん、綺麗だねー」
「む……」
ナナの純真な視線を向けられて、ファーンはたじろいだ。
しかしその視線は、ピコピコと動くナナの耳や尻尾に注がれていた。
あれ、触り心地がいいんだよなぁ……。
ナナはファーンの視線に気付いたのか、撫でてと言わんばかりに頭を向けた。
「む……むぅ……」
ファーンはどうしたらいいのか分からず、葛藤している。
そしていつまでも頭を撫でてくれないファーンに対してナナは、催促するように上目遣いで見る。
「くっ、なんで我が……」
と、言いつつも、ファーンはナナの頭を撫でた。
その顔は、口ほど嫌がってはいない。
ほう……魔族にも「可愛いは正義」という概念が通用するのか……。
それならばいつか人間と魔族も、分かり合える日がくるのかもしれないね……。
『シン・ウルトラマン』は面白かったです、個人的に。




