14 新たな戦力
ブックマーク・いいねをありがとうございました!
私とフレアは逃走したリビーを追って、転移魔法を使った。
まあ、追いつくのは一瞬だ。
『ハーイ、さっきぶりー』
『なっ……!?』
一瞬、驚愕の表情となるリビーだったが、それもすぐに怒りに歪んだ。
『なんじゃ、貴様らはっ!?
妾の邪魔ばかりしおってっ!!』
『うるさいなぁ……。
私達の邪魔をしているのは、むしろそっちの方なんだよ』
……何処かのドM竜みたいに、肛門に鉄の杭でも突っ込んだら、大人しくなるだろうか?
いや、雄ならともかく、雌相手にそういう調教の仕方は趣味じゃないな……BL的に。
「フレア、もう片付けていいよ。
できれば、身体は残してね」
「あいよ、お嬢!」
フレアの喉に、魔力が集中していく。
人の姿のままで、息攻撃を撃つつもりらしい。
『な……な……っ!?』
リビーも感じ取ったようだ。
フレアが撃とうとしている息攻撃の威力が、自身のものと比較しても圧倒的に上なのだということを──。
ちなみにリビーの周囲の魔力を私が操ってかき乱しているので、彼女は転移魔法で逃げることも、防御結界を形成することもできない。
現状では空中に浮いているだけでも、やっとの状態だろう。
竜ほどの巨体が翼だけで飛べるはずもなく、当然魔法の力も借りているからだ。
『待て、待つのじゃ!
妾はカシファーンに頼まれただけでっ!
待てぇ────っ!?』
リビーは命乞いするが、身勝手に他者の命を奪っておいて、それは通じない。
『父ちゃん達の仇、取らせてもらうよ!』
次の瞬間、フレアの口腔から吐き出されたのは、母さん直伝の熱線だった。
それがリビーの頭部を貫き、あっさりとその命を奪う。
「おっと」
私は落下していくリビーの身体を、空間収納の中に仕舞い込んだ。
これは後で使い道がある。
「やったね、フレア」
「…………」
私が呼びかけても、フレアは答えない。
その目には一粒の涙が浮かんでいて、家族の仇を討てたことに、感慨を覚えているのだろうか?
いずれにしても、家族への情は人間も竜も変わらないものがあるのだということを、私は知った。
……そういえば私、前世の両親のことはよく知らないなぁ。
それだけに私を育ててくれた今の母さんには感謝。
今頃は少しくらい、立ち直ってくれただろうか?
ま……ともかくフレアには、ほんの少しだけ感傷に浸る時間を与えて、それから帰還することにしよう。
これからが大変だから、今の内にゆっくりさせてやろう。
竜族を二分する戦いは、終わりを告げた。
リビー派閥の竜族達も、フレアが倒したリビーの遺体を見せつけたら、完全に大人しくなったよ。
当面は反抗することもないだろう。
これでフレアが竜族の長になることが決まった訳だが、その継承の儀式や戦勝を祝う催し物を開くべき状況だと言える。
私としては今すぐにでも竜族を、王国の援軍に向かわせたいところだけど、フレアの支配体制を確立させる為に必要な手順であるのならば、無駄ではないと思う。
だけど──、
「痛い……全身が痛い……!
なにこれ、なにこれぇ……!?」
今はそれどころではないようだ。
フレアを始めとする多くの竜族が、地面に伏せっている。
レイリーとエリカの歌で無理矢理潜在能力を引き出した結果、その反動が出たのだ。
私の回復魔法をかけておいたから、通常よりは速く回復すると思うけど、それでもこの後遺症はあと1日くらいは続くだろう。
この痛みって、怪我が原因という訳じゃないから、回復魔法でも簡単に治るものではないんだよね。
どちらかというとこれは、成長痛みたいなものだ。
潜在能力を引き出す為に、体内の気や魔力の通り道を強引に広げたから、それが痛みの原因になっている。
だけどその通り道が広がった状態を維持した方が、力を引き出しやすくなって今後の成長にも繋がるので、元には戻さない方がいい。
だから私が使った回復魔法も、その辺には影響しないように、軽めのものにしておいた。
ただこの状態だと、歌の影響を受けていない元リビー派閥が何かをしでかす可能性もあるから、私もここから離れる訳にはいかないなぁ……。
まあ、この余った時間で、やるべきことをやろう。
私は土魔法で周囲に壁を作る。
これからやることは、あまり子供達には見せたくないからなぁ……。
いや、あの子達はダンジョンでの魔物狩りを経験しているからグロ耐性もあるし、それほど気にはしないような気もするけど、どのみち興味本位で邪魔されても困るし。
まずは回収しておいたカシファーンとリビーの遺体を、空間収納の中から出す。
そして「変形」のスキルで損傷を修復しつつ、融合させて別の姿へと変えていく。
某ゲームの悪魔合体みたいなものだ。
これで以前よりもハイスペックな肉体になった。
で、私が何の為にこんなことをしているのかというと、「死霊魔術」のスキルで新たに死に損ない系の魔物を生み出して、我が眷属にする為だ。
今は少しでも戦力が欲しいからね。
ただ、元の姿のままでは、竜族からいい顔をされないだろうし、人間からも味方だとは思われないかもしれない。
そんな訳で新しい姿は、可愛らしい少女にした。
金髪の14才くらいで、少し中性的な体付きをしている。
ただし背中には白い翼が生えており、完全に人間の姿という訳ではない。
う~ん、元魔族が天使の姿に生まれ変わるとは、最高に皮肉が効いているなぁ。
え、悪趣味だって?
死体を弄くっている時点で、今更だよ!
明日はちょっと『シン・ウルトラマン』を観てくるので、更新はお休みします。




