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12 狙った相手が悪い

 ブックマーク・いいねをありがとうございました!


 今回は途中で視点が変わります。

 私の名はシルビナ。

 色々とあって今は人間と変わらない姿をしているが、その正体は生きた鎧(リビングアーマー)という、死に損ない(アンデッド)系の魔物だ。

 それでも人間の世界で地位も名誉もある立場にいられるのは、親友のアリタの尽力があってこそだな……。


 さて、今回はアリタと共に竜族を仲間に引き入れる為、東の山脈へと交渉をしに来たのだが、竜族には既に魔族が入り込み、分裂状態となっていた。

 そこでその魔族を排除する為の戦いを、我々は始めた訳だが……。


 ふむ……アリタが立案した作戦は、上手くいっているようだな。

 リコの幻術によって相手の隙を作り、アリタが攻撃する──。


 手加減も絶妙だ。

 アリタならば瞬時に敵を全滅させることも可能だったはずだが、竜族はこれからの対魔族戦争において貴重な戦力になる。

 撃墜するにとどめて、殺しはしていない。


 そして混乱している敵軍へ、フレアが率いる反乱軍の本体が突撃する。

 この時点で勝敗は殆ど決したようなものだ。

 レイリーとエリカの歌で強化された者達を相手に、勝てる者は殆どいないだろう。

 しかも敵味方の両軍に死者が出ないように、アリタが回復役を徹底しているので、今のところ死亡した者も出ていないはずである。


 ……ところで私は、今のところ戦闘には参加していないのだが、それはとある役割の為だ。


『貴様の仕業か──っ!?』


「わっ!?」

 

 その時、突然現れたのは魔王軍四天王が1人、カシファーンとか言ったか。

 そいつがレイリーに向かって、右手を伸ばす。


 だが私は間に入り込み、その腕を斬り落とした。


『があっ!?』


 アリタの予想通り、カシファーンはレイリーを狙ってきた。

 彼女とレイチェル陛下の──いや、正確にはアリゼ様らしいが、とにかく2人の間には因縁があり、今のレイリーは昔の陛下とそっくりらしい。

 (ゆえ)に奴はレイリーを陛下と勘違いして、襲いかかってくる可能性がある──と。


 だから私はレイリーを守る為に、(そば)で待機していたのだ。

 そして今の私は、四天王が相手であろうが、負けるつもりはない。

 この70年間、あのヘンゼルとかいう巨大な怪物クラスの敵が現れても対応できるように──と、私とアリタは(おのれ)を鍛えてきたのだから。


『ぐぬうぅ……!

 そこを退()けぇ!!

 我はそいつに用があるっ!!』


 カシファーンは念話で呼びかけてきた。

 使っている言語が違っていても、念話だと意味が通じるのだから不思議だ。


『私は貴様に用があるから、聞けない話だな』


 それに、用があるのは私だけではない。


『ぐう……っ?』


 カシファーンは身体(からだ)をよろめかせ、私達が乗っている(ドラゴン)の背中に片膝を突いた。


「兄様を、いじめようとした……!」


 と、エリカがカシファーンを、物凄い形相で睨んでいる。

 彼女はエリリーク様から受け継いだ「吸精」のスキルで、カシファーンを大幅に弱体化させたようだ。


 ……エリカは兄のレイリーのことが、大好きだからなぁ……。

 その兄を攻撃しようとしたカシファーンを、彼女は許さないだろう。


 そう、実のところこの兄妹の中で怒らせたら怖いのは、生意気で活発な兄の方ではなく、普段は大人しい妹の方なのだ……。


 ともかく私は、魔族相手に正々堂々とした戦いを貫き通すような、騎士道精神を持ち合わせてはいない。

 1度は死を経験し、更に人の一生に匹敵するほどの年月を経験してみれば、正しさばかりが全てではないことくらいは理解できる。


『くそ……私に何をした……!?』


 たとえ悪だ卑怯だと言われても、必要なことはある。

 だからカシファーンがどんなに弱体化していようが、手加減はするつもりはないからな……!


『ま、待て!?』

 

 私はカシファーン目掛けて、剣を振り下ろした。




『アリタ、四天王は片付けたぞ』


 シルビナからの念話が入る。

 さすがシルビナ、仕事が速い。

 まあ、カシファーンが母さんと戦った時と同程度の強さのままだったら、今の私達にとっては脅威にもならないから、当然の結果だが。


『ありがとう。

 カシファーンの遺体は確保しておいて』


 それにはまだ使い道(・・・)があるからね。


 ……さて、後はリビーとかいうのを片付ければ、それで終わりだ。


「フレア、一騎打ちでリビーをやっちゃいなよ!」


『ええっ、そんな無茶ですよぉ!?』


 フレアはかつての義母であるリビーに対して苦手意識を持っているのか、(おび)えているようだった。

 しかしこれからの竜族を統治することを考えると、フレア自身が実力を示して、竜族から王者として認められた方がいい。

 その為にも、フレアが単独でリビーを倒す必要がある。


『無茶でもなんでもいいからやりなさい!

 もし負けたら、母さんに鍛え直してもらうから……!』


『そ……それは嫌……!』


 まあ、フレアにとって、リビーと母さんのどちらが苦手かって話だ。


「それに、あいつはフレアの家族の(かたき)なんでしょ!

 フレアの手で、決着をつけるべきだ!」


『……っ!!

 分かりました、やればいいんでしょ、お嬢!!』


 フレアはやけくそ気味に叫んだ。

 土日はお休みします。

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― 新着の感想 ―
[一言] えっ!。昔の因縁が呆気なく終わったww。
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