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10 燃ゆる世界

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 今回は途中で視点が変わります。

「だ、大丈夫ですか、陛下……!?」


 思わず声をあげてしまった私に、コンスタンスが心配そうに声をかけてきました。


「……っ!

 大丈夫……ではないですが、動揺している場合ではないですね」

 

 しかしこの状況でできることと言えば、何があるのです!?

 北方へ兵力を送る命令は既に出していますが、地上部隊が実際に到着するのは1週間近い時間が必要でしょう。

 飛空挺艦隊ならば1日以内に到着しますが、敵の物量に対しては空爆も焼け石に水でしょうね。


 それならば私の転移魔法で、兵員を前線へ送り届けても同様でしょう。

 千倍、万倍の敵を相手にしては、そもそも戦いになりません。

 

 となると今は戦うよりも、住民の避難に力をいれるべきですが……。

 しかし北方の住人には避難命令を出していますが、昨日の今日では避難は間に合わないでしょう。

 既に森林と面した都市の中には、壊滅しているところもあるはず……。

 

 こうなると、私の転移魔法で逃がそうとしても、その効果は限定的です……。

 あまりにも避難すべき範囲が広く、人数が多すぎます!


 こうなれば──、


『カーシャ! 魔王軍の進撃が始まりました!』

 北方へ派遣する全軍に命令を!

 全力で北方へと進み、避難してきた住民と合流した後、南に後退するのです!

 いざという時には、住民が避難するまでの時間稼ぎに徹してください!』


『はっ!』

 

 私は念話で新たな命令を下します。

 そして後々自然環境や国民の生活に大きな影響を残すことになるかもしれませんが、強引な手段を使わなければならないようです。


「大森林を焼き払いましょう……!!」


「陛下、それは……!!」


 コンスタンスが息を呑みます。

 彼女も元々は開拓地の領主の娘──その意味を理解しているはずです。

 仮にこれで戦いが終わったとしても、そこには森と共生していた人々の生活は戻ってこないのだということを──。

 これは人々の生活を、長期間にわたって破壊する行為です。


 だけどもう、背に腹は代えられません。

 

 私が直接最前線へ(おもむ)いて最大火力の熱線を撃ち込めば、敵軍に大打撃を与えるのと同時に、大規模な火災が森林で発生して、軍勢の侵攻速度も鈍るはずです。

 それを何度も繰り返せば、少なくともこちらの体制を整える時間を稼ぐことができるでしょう。

 ただ、私だけでは手が足りません。

 

「コンスタンス、これからノーザンリリィへ行きます。

 あなたは転移魔法で、シスを運んでください。

 彼女の炎を操る能力(ちから)によって森林の各所に火を放ち、敵の侵攻を止める工作の為の移動役です」


「はっ、はい!」


 それとリゼとケシィー、グラスにリーザ……他にも我が子達など、とにかく転移魔法や大規模な火炎魔法が使える人材をフル活用して対抗しなければ、この戦いは生き残れません。

 各所に念話で指示を出し、私は転移します。


 ここからが人類の正念場ですよ!!

 


 

「よし、フレア!

 リビーとカシファーンを、今日中に倒そうか!」


『えっ、お嬢!?

 いきなりそんな無茶な!?』


 私も無茶な話だと思う。

 だけど悠長なことも、言っていられなくなった。

 

 レイチェル姉さんからの念話では、魔族の大規模な侵攻が始まったという。

 正直言って私も今すぐに加勢した方がいいと思うのだけど、この状況で魔王軍四天王のカシファーンに操られた竜族が王国へ侵攻した場合、それはそのまま人類の致命傷となりかねない。


 逆に竜族を味方に付けて駆けつければ、不利な戦況を劇的に改善させることができるだろう。

 だけどその為には、時間をかけてはいられない。

 可能な限り急がなければならないのだ。


「だからフレア、これから決戦を仕掛けるということを、皆に宣言して」


『ええぇ……そんな準備も無しに、大丈夫なんですかぁ……?』


「私はもう負けるつもりは無いよ」


 そんな私の言葉を受けて、『お嬢なら、それもそうですね』と、フレアは納得して、竜族に戦いを宣言する。

 ただ、当然反対意見が続出したけど。


 実際、準備不足なのは、私も否定できない。

 それでも勝つのは、我々だ。


「まあ……アリタならば不可能じゃなさそうだが、私と敵地に直接乗り込むのか?」


 と、シルビナは言うが、私が全部やってしまっては意味が無い。

 あくまでフレアを中心にした反乱軍が勝利し、竜族の新体制を築いてもらわなければね……。


「いや、反乱軍の全員で行ってもらうよ。

 幸いレイリーとエリカがいるから、戦力的な不利は無いと思う」


「ああ、あれか」


 反乱軍は竜族全体から比べると、多数派ではない。

 3割から4割の間といったところらしい。

 この倍近い戦力差だが、兄妹が姉さんから受け継いだ「歌唱」のスキルによって、(ドラゴン)達を鼓舞して潜在能力を引き出せば、十分に埋めることができるだろう。


「さあ、頑張って歌ってね、2人とも!」


「「はーい!」」


 兄妹は歌い始める。

 かつて帝国との戦争の時に、姉さんとエリお兄さんがやったライブを思い出すなぁ。

 あの時も姉さん達の歌の効果で、王国軍は戦いを有利に進めることができた。


『おお……なんだか、身体(からだ)に力が(みなぎ)る……!』


 どうやら(ドラゴン)達にも、ちゃんと歌の効果はあるようだ。

 最初は突然決戦に挑むという、フレアの……というか、私の方針に反発していた竜達も、戦う気になってくれたようだ。

 まあ、そもそも歌には、戦意高揚の効果もあるけれど……。


 それに実際に戦いが始まれば、リコの能力も役立つはずだ。

 彼女は天狐族の種族特性である「幻術」のスキルが使えるから、幻術によって反乱軍の数を多く見せてしまえば、敵も混乱するだろう。

 

 そしてナナは…………う~ん、この子って可愛いのが最大の武器だからなぁ。

 鼻が()くから探索とかには力を発揮するんだけど、戦いにはあまり役に立たない。


「ナナは、ここでお留守番をしていてくれないかなぁ?

 竜族の子供達も残るらしいから、その子達を守ってくれる?」


 さすがに戦力外だとはハッキリ言えないので、もっともらしい理由を作った。

 するとナナは、


「いーよー!」


 素直に応じてくれた。

 純真な子で助かったけど、なんだか後ろめたさが凄い……!


 ともかく気を取り直して──、


『竜族の統治を、正統な王の──あたしの下へ!!』


 私が念話で送ったカンペをフレアが宣言し、反乱軍は出陣することとなった。

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