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8 動き出す魔王軍

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「ふ~……」


 私──レイチェルは大きく嘆息します。

 体力は有り余っていますが、精神的には消耗を感じるのです。


「お疲れのようですね、お母様」

 

「それはエリーシャも同じでしょう?」


 魔王復活の(しら)せを受けて、我ら王族は各所に対応の指示を出す為、奔走していました。

 クラリス姉さんが女王の座を退(しりぞ)くのと同時にママも引退状態となって以来、このローラント王国のトップは私です。

 それは娘のエリーシャに、女王の座を譲った現在でも変わりません。


 だからこの国家の一大事に、私が1番働かなければならないのは当然のことです。

 とはいえ、現女王であるエリーシャだって、暇な訳ではありません。


「お母様、一休みしましょう。

 今、お茶を用意しますから」


「ありがとうなのです」


 エリーシャはエリに似て、よく気が利く娘です。

 メイド服も似合いそうですね。

 ……なんだか懐かしくなります。


 エリも、アイリスも、カナウも、みんな逝ってしまいました。

 でも、これからの大変な時代を知らずに逝けたのですから、もしかしたらそれで良かったのかもしれません。


 ただ、我らが子や孫達は、大変な想いをするかもしれませんね……。

 それを少しでも楽にするのが、私達の責務です。


「ん……?

 アリタですか?」


 その時、アリタから念話が届きました。

 

「あら、無事に東の山脈に到着したのですか?

 あの子達は、良い子にしていますか、お母様?」


「ええ、そのようです。

 ちょっと待ってください……。

 なにやら慌てていますね」


 ……なんと、冒険者時代のママが撃退した、あのカシファーンが!?

 それは面倒なことになりましたねぇ……。


『増援は……?』

 

 ふむ……現地の竜族の力を借りるから、取りあえずは必要無い……と。

 まあ、危険があれば転移魔法で戻ってくるでしょうし、大丈夫でしょうか……?


『では、気をつけて……』


「お母様……?」


 念話を終えると、エリーシャが説明を求めるように語りかけてきました。


「竜族へ魔族の接触が、確認されたのです」


「!!」

 

 エリーシャの顔が、蒼白に染まりました。

 現地にはレイリーとエリカもいます。

 心配するのも無理はないですね……。


「今のところ確認されている魔族は、1人だけのようです。

 竜族を味方に付けようとしていることからも、人員不足で余計な人員は割けないということなのでしょう。

 今のアリタならば十分に勝てる相手ですし、大丈夫だとは思いますが……」


「それでも、子供達だけでも呼び戻した方が……」


「そうですね……。

 それも考慮した方が……」


 しかしそういう訳にも、いかなくなりました。


「ん……?

 今度はコンスタンスメイド長からの念話……!?」


 ママが引退状態になってからは、コンスタンスがメイド長をしています。

 見た目が私以上に幼女なので、王城での業務は行っておらず、主にダンジョンマスターとして活動しているのですが……。


『陛下ぁ~!

 敵です、敵の襲撃ですぅ~っ!!

 ダンジョン内に魔物が溢れかえっていますぅ~っ!!

 魔族の姿も確認されています!』


「馬鹿な……っ!!」


 ダンジョンは外敵の侵入を防ぐ為に、外部からの転移魔法は決まった場所──しかも人間数人が入れる程度の狭い部屋でしかできないように、ママが特殊な術式を施しているはずです。

 その転移可能な場所の座標は関係者しか知りませんし、仮に場所が分かったとしても、その狭さ(ゆえ)に軍勢を送り込むなんてことは、不可能なはず……っ!!


 元々は魔族の領域であるダンジョンですから、魔族が舞い戻ってこないように、その対策はしっかりしていたのですが……。


『一体、どこから侵入してきているのですか!?』


『ハッキリとは分かりませんが、定期的に補充されている魔物の、召喚陣からではないかと~!

 召喚陣がある区画は、明らかに敵の数が多いですぅ……!』


「あっ……!」


 その手がありましたか!

 ダンジョン内の魔物は自然繁殖したものではなく、設置されていた召喚陣によって自動的に呼び込まれているものです。

 そうでなければ、今頃は冒険者によって大半は狩り尽くされていることでしょう。

 

 そしてその召喚陣の向こう側が何処へ繋がっているのか分かりませんが、魔族がそれを把握していたのならば、召喚される魔物と一緒に侵入することも可能なはずです。


 ──なんてこった!!


『それで……あなた達は、無事なのですか……?』


『現在、最下層への侵入は食い止めていますが、いつまでもつのかは分かりませんし、いずれは地上へも湧き出すでしょう。

 一般人への(・・・・・)被害が出るのは、時間の問題ですぅ~!』


『……っ!!』


 つまりメイド隊や、ダンジョン内にいた冒険者には、既に犠牲者が出ているということですか。


『分かりました……。

 拠点は放棄して、撤退を……!


 そして地上での迎撃態勢を、構築してください。

 それにクラサンドの住民の、避難誘導もお願いします……!!』


『かしこまりました~!』


 今のコンスタンスは転移魔法も使えるので、脱出自体は問題無いでしょう。


 しかしクラサンドの町には、キエルとマルガが遺した孤児院も、ママが活動していた冒険者ギルドも、ナウーリャ教の本部もあります。

 なんとしても守り抜かなければ……!


「こうなった以上……早急にダンジョンを封鎖しなければなりませんね……!!」


 それにもしも未発見のダンジョンがまだ国内にあるとしたら、そこからも魔族の侵攻を許すことになりかねません。

 そうなる前に、クラサンドでの戦いはすぐに片付けなければ……!


「お母様……!」


「魔族が動き出しました。

 孫達のことは後回しです。

 

 今回は私が直接出ますので、留守を頼みましたよ、エリーシャ!」


「はい、お気を付けて……!」

 

 その言葉を受けて、私はクラサンドへと転移しました。

 土日はお休みです。

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