6 竜の山脈
ブックマーク・いいね・感想をありがとうございました!
私達は竜の姿になったフレアに乗って、東の山脈へと向かう。
当初は王都の郊外から東に向かって飛んで、魔族の動きが無いか──と、上空から確認しながら行くつもりだったのだけど、フレアの逃走で時間を取られたので、国の東端の町へ転移してから、山脈へ向かった。
その道中、フレアに故郷でのことを聞いてみる。
彼女は渋々とそのことについて語ってくれたのだが、それによると──、
「……つまり竜族の間で、フレアはおちこぼれ扱いされていて、それに嫌気が差したから、一族の宝を盗んで逃げ出した……と?」
『うう……そうですぅ……』
こういうことらしい。
ああ、フレアの巣の中にあったという財宝の出所って、それなのか……。
そりゃあ、帰りたくないだろうな……。
というか人間なら、普通に犯罪者として指名手配されていても、おかしくないじゃん……。
「まあ、今回の交渉が上手くいけば、王国がその財宝を弁償してもいいから、ちゃんと謝って役割を果たすんだよ」
『本当!?
マジで!?』
フレアは喜ぶが、そもそもその財宝を没収して国の予算に使ったのは母さんだしね……。
あと、竜の財宝だったのかどうかは分からないけれど、同時に没収したミスリルの原石はシルビナの身体としてありがたく使わせてもらっている。
だからその恩は返したい。
さて、切り立った壁のような高い山を越えると、いよいよ人類未到の地だ。
そこに広がる山々はなかなかの絶景で、子供達も大はしゃぎである。
しかしここは既に、竜族の領域──。
油断して良い場所ではない。
「みんな静かに。
そろそろ竜族が来るよ!」
「楽しみ~!」
違う、そうじゃない。
警戒しろって言っているんだ。
「レイリー……。
私は観光案内している訳じゃないんだから……」
でも、男の子って恐竜とか怪獣が好きだよね……。
レイリーは男の娘だけど、それでも例外ではないのだろう。
彼としてはこれからジュ●シックパークにでも、行くような気分なのかもしれない。
だけどあの映画と同様に、危険なことは沢山あるはずだ。
というか既に、索敵ではこちらに向かってくる数十もの反応がある。
「来たよ!
まずは刺激しないように、様子見だからね!
攻撃とか絶対にしちゃだめだよ!!」
「「「「は~い!」」」」
この時点では、子供達の聞き分けはまだいい。
むしろフレアの方が、引き返そうとする素振りを見せている。
「こら、覚悟を決めて、真っ直ぐ進みなさい!」
『うえぇぇぇぇぇ……』
半泣きのフレア。
なんだかもう、子供達よりも子供だな……。
やがて私達は、数十匹の竜に取り囲まれる。
「おお……壮観だな」
シルビナは呑気なことを言っているけど、常人なら死を覚悟するような状況だね。
あ……忘れがちだけど、シルビナはもう死んでたわ。
それと子供達も動じていないけど、単純に危機感が無いだけかな。
子供達にとって竜と言えば、大人しいフレアしか知らないから、竜族の脅威が実感として無いのだろう。
はいそこ、竜に向かって手を振らない!
で、正面に1匹の竜が出てきて、何事かを吠えてきた。
すまねぇ、竜語はさっぱりだ。
一応「言語理解」のスキルは持っているけど、さすがに一言二言では解析できない。
「……なんて?」
『このまま誘導に従って、ついてこい……とのことですぅ』
「じゃあ、従って」
『はいぃ……』
そんな訳で私達は、無数の竜族に取り囲まれたまま進んでゆく。
暫く進むと、索敵に新たな反応があった。
「あれ、また沢山竜が出てきた?」
すると、周囲の竜族の動きが慌ただしくなる。
なんだ? 何事だ?
そう思っていたら、竜達は接近してきた群れに向かって、突然息攻撃を撃ち込んだ。
「はあっ!?」
なんだ!?
仲間割れ!?
私が驚愕していると、周囲の竜族の動きが速くなり、この場から急速に離脱しようとしていることが察せられた。
『う、うえぇ?』
フレアも訳も分からずに追随する。
そして後から出てきた竜の群れを振り切り、私達はとある渓谷に向かって降下していった。
ん……なんか洞窟みたいのがあるな……。
ここが住処なのだろうか?
中に入ると、結構な広さがあった。
竜が数百匹は入れそうだ……というか、実際にそのくらいの反応が索敵にある。
ここが竜族の本拠地……?
あれ……?
でもフレアは周囲を見渡しているな……。
ってことは、ここはフレアも知らない場所ってことか?
その時、一匹の竜が吠えた。
私達に対して、何事かを呼びかけているようだ。
「フレア、なんて言ってるの……?」
するとフレアは困惑した顔をこちらに向け、
『……ようこそ反乱軍の拠点へ、姫様……と』
と、答える。
「……は?」
「姫ー?」
「反乱軍!?」
今度は私達が大いに困惑した。
なんだかいきなり、大きな騒動の渦中に巻き込まれたっぽいんだけど!?




