プロローグ 予 言
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ローラント王国とクバート帝国との戦争が終結して、約70年の年月が過ぎ去った。
私──アイは、相変わらずノーザンリリィ辺境伯をしているよ。
この期間は本当に平和な時代が続いていて、文明もかなり発展した。
まあ、魔法がある世界なので、地球と完全に同じという訳にはいかないけれど、日本で言えば明治時代くらいの文明レベルにはなっているんじゃないかな?
むしろお母さん達が力を入れている分野では、地球のレベルを超えている部分もあると思う。
アリタも印刷技術を発展させて漫画文化を普及させたし、もうすぐテレビアニメも作れるようになるかもしれない。
そう、テレビやラジオは勿論、自動車や飛行機、列車なども初期のレベルならば実用化できている。
あと半世紀以内には、パソコンやインターネット、スマホなんかも再現出来るようになるかもしれないね。
だけど「平和とは次の戦争の準備期間」という言葉があるように、いつまでも平和という訳にはいかないようだ。
最近は魔物の数が増え、辺境の村々が襲撃されるという事例が増えてきている。
ここ70年間も動きが無かった魔族が、ついに動き始めたのかもしれない。
これが辺境伯領だけならばまだしも、全国的に──なんなら帝国領でも見られる傾向だというのだから、対応は難しいねぇ……。
とりあえず我が領では、大規模な魔物の駆除でもしてみるかな?
「どう思うシス?」
「とりあえず、それでいいんじゃない?」
と、シスは投げやりに答えた。
この70年で私の姿はまったく変わっていないけど、シスは「妖艶な美女」という印象に成長した。
妲己ってこんな感じだったのかねぇ……?
そんな彼女は、気だるい雰囲気を漂わせている。
基本的に、政治とかには興味が無い子だからなぁ……。
狩りは好きだから、賛成しているだけだね。
「住民の避難はどうするの?
あたしの転移魔法にも、限界はあるよ?」
と、建設的な意見を出したのは、リゼだった。
遺伝的にはシスと双子のようなものだけど、性格が影響しているのか、それともステータスが高い所為で老化が遅いのか、リゼの方が若干幼く見える。
そしてリゼの言うように、このローゼンリリィは大きくなり、各地に村や町が点在している。
住民を転移魔法で避難させるにしても、一気に……というのは難しいなぁ。
今ここにいる者の中では、リゼしか転移魔法は使えないし……。
「せめて子供達だけでも、王都に避難させようか?」
「それがいいかもねー」
シスとリゼはそんなことを相談していた。
なんと彼女達の種族である「天狐族」は、雌単体や雌同士でも子供を作れるらしい。
つまりお母さんやシスに母親はいたけど、父親はいなかった可能性があるということだ。
そんな百合特化種族のルートに進めなかったことを、お母さんは少し悔やんでいた。
まあ、「乗っ取り」以外のスキルを持って生まれてきていれば別のルートの可能性はあっただろうけど、その場合は私達姉妹は誕生しなかっただろうねぇ……。
ともかくそんな訳で、彼女達はそれぞれ子供を産んで、種族を増やしていた。
2人はその子供達を、逃がそうと考えている訳だ。
……私も「分裂」すれば子供を増やせるんだけど、今のところはその必要性を感じてはいない。
で、住民の避難については、防衛力が低い小さな村の住人は、この領都に避難させることも考えた方がいいのかなぁ……。
でも、生活が丸ごと破壊されるから、安易に避難しろというのも難しいんだよね……。
そんなことを考えていたその時──、
「話は聞かせてもらったのじゃ!
この辺境領は滅亡する!!」
「「な、なんだってーっ!?」」
突然部屋に入ってきたのは、女子高生くらいの外見年齢に成長したリーザだった。
そして入ってくるなり、とんでもないことを言い出したので、私とリゼもお約束で返す。
「いや、いきなりなによ、リーザ……」
「女神様のお告げがあったのじゃ。
魔王がついに復活するぞ!」
「!!」
とうとう来るべき時がきてしまったのか……!
それならば住民の避難は、本格的に考えた方が良さそうだね……。
……しかしなんてタイミングだ。
今、お母さんは動けない状態になっている。
お母さん抜きで、対魔族の戦いをしなければならないとなると……。
「最悪だなぁ……!」
これは姉妹をはじめとした関係者全員と協力して対策しないと、大変なことになるぞ……!!
キツネのままルートはちょっと書いてみたい気もしますが、シスがメインヒロインになる代わりに、登場人物の大半とは出会わないか、場合によっては敵対することになりそうですねぇ……。




