53 復 活
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今回はちょっと短いです。
『お、おい、大丈夫か、アリタ!?』
着地した時の軽い衝撃だけで、私は吐血した。
これは折れた肋骨が肺に突き刺さったのか、それとも勇者の攻撃の衝撃で内臓が破裂したのかな……?
まあ、「万能耐性」で苦痛は軽減されているけど、気道を血で塞がれるとさすがに苦しいんだよね……。
あと、シルビナの鎧の中に、吐いた血が溜まっていくのも気持ちが悪い。
「う゛~……今、回復魔法で……。
いや、陥没した鎧が脇腹に食い込んだままだから、まずは鎧の修理を……」
この食い込んでいるのをどうにかしないと、治る物も治らない。
とはいえ「自動回復」スキルも持っているから、身体の方は後回しでも、致命傷にはならないだろう。
『じゃあ、私を脱ぐか?』
「あ……そうか、その方がいいかな」
私とシルビナは分離する。
まず回復魔法で私の傷を治し、次に「変形」スキルでシルビナの装甲を修理した。
あとは内部に血を吐いたので、それも掃除しなきゃ。
「シルビナ、弱く浄化魔法をかけるけど、ダメージがあるようなら言ってよ?」
『ああ』
シルビナも霊体だから、掃除に使う程度の弱い浄化魔法でも、鎧の内部にかけたら影響を受けかねないからなぁ……。
耐性があるのはあくまで外側だけだし、それで消えるようなことになったら困る。
「……シルビナは、まだ成仏しないよね?」
『ん、なんだいきなり?』
「いや……仇は取っちゃったから、もう思い残すことは無いんじゃないかと思って……」
シルビナは既に死者で、本当なら成仏した方が自然なんだろうけれど……。
でもやっぱりまだ、シルビナと別れるのは嫌だ。
だけどシルビナは──、
『なんだ、そんなことか』
少し呆れたように答える。
「え、そんなことなの?」
なんか軽くない?
『お前のような危なっかしい子を、置いて逝けるものか。
それにアリタが描くビーエルとやらを、まだまだ読みたいしな。
最後までお前に付き合うぞ』
「そっか……」
なんだかホッとした。
安心したら、一気に疲れが出てきたよ……。
私は思わず座り混む。
『少し休んでいくか?』
「う~ん……そうしたいけど」
あの怪獣を放置する訳にもいかないし……。
「ん?」
あれ~……?
座っている床が、微妙に脈動しているような気がするんだけど……。
「いやいや、まさかまさかー」
『おい、どうした、アリタ!?』
私は慌てて立ち上がり、あの怪獣が見える場所まで走って行った。
「……め●ょっく!」
明らかに怪獣の鼓動音が、先程よりも大きくなっている。
それに纏っているオーラの量も、確実に増えていた。
これは目覚めるのも、時間の問題なのでは?
『む……これは……!!
尻尾が動いているようだが……?』
「ああ……ピクピク動いているねぇ……」
これは拙いな……。
すぐに母さんに報せないと。
しかし念話は、ここでは使えない。
転移魔法も……やっぱり駄目っぽいな。
あの長い階段を駆け上がって、一旦地上に出ないと……。
「シルビナ、走るよ!」
『おう!』
あ、でも土魔法で怪獣の上に蓋をして、この空間にも壁を作って閉じ込めておこう。
それが終わったらすぐに、私達は階段を駆け上がり始めた。
その途中、大きな振動が伝わってくる。
そして──、
『ゴアアァァ──っ!!』
巨大な生物の吠え声が聞こえてきた。
やば、動き出した!?
それからも、何かを破壊する音が、立て続けに響き渡る。
そもそもここって、あんな大きな生き物が通れるような出入り口は無いから、地面を掘り進まないと外に出られない。
あるいは息攻撃で、天井をぶち抜こうとするかもしれない。
でもそんなことをされたら、たぶんこの階段も崩れる。
「ヤバイ、ヤバイ、シルビナ、全速力ーっ!!」
『お、おおぅ!』
私達は必死で階段を駆け上がった。
下の方から危機感を煽る物凄い音と、いよいよ激しくなる大きな振動が伝わってくる。
ひいぃぃぃ、崩れるぅぅぅ~っ!!
おっ、ようやく地上への出口が見えてきた!
そろそろ念話も通じるかな?
『あー、あー……よし、ようやく念話が通じた。
みんな──っ!!
今すぐ脱出して──っ!!
ラスボスが出たあああぁぁぁぁ──っ!!!!』
これでなんとか、メイド隊には避難勧告は出せた。
そして次は──、
「母さん、ヘルプ────っっっっ!!」
親に丸投げだ。
土日はお休みです。




