43 城を封鎖せよ
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ギリギリ更新には間に合ったけれど、ちょっと短めです。
「アリゼ様、何か様子が……。
魔物がいます」
困惑気味にグラスが報告してきた。
「ああ……はい。
帝国はもう、手段を選んでいられるような余裕すらもないようですねぇ……」
城内に突入した私達の周囲に、突然無数の気配が出現した。
しかもその正体は魔物だ。
これは……召喚魔法か?
確かに帝国には、魔物を使役していると思われる事案が、これまでに何度かあった。
それが勇者の仕業なのかどうかは分からないけれど、少なくとも帝国に召喚魔法を使える者がいるということだけは確かだろう。
そしてこれだけ大量の魔物──おそらく数百匹からの大群を召喚できるのならば、その能力は低くはない。
だがそれでも、魔物の群れを完全に制御できるとは思えないし、それにも関わらず皇帝をはじめとする皇族や貴族がいるはずの城に魔物を放つとか、無茶をなさる……。
いかんな……。
現状でも大惨事になりかねないけど、このまま魔物達が城の外に出たら、一般市民にも被害がでる。
こんなことなら、城壁を破壊しなければ良かった。
「グラス、あなたは先に進んでください。
私は魔物が外に出ないように、対処します」
「はっ、かしこまりました。
……もしも皇帝と遭遇した場合は、私の手で処理しても?」
元国王のグラスとしては、色々と因縁がある帝国に対して、自分の手でけりを付けたいという想いもあるのだろうな。
「できれば皇帝からも情報は欲しいので、半殺しまでなら認めます。
それと非戦闘員の扱いは慎重に……。
メイド隊も、そのつもりで行動してください」
「「「「「ハッ!」」」」」
私の命を受けて、グラスと吸血鬼メイド隊が先行する。
しかし魔物の群から比べると、圧倒的に少数。
メイド隊の実力はSランク冒険者に匹敵するから、その辺の騎士程度ならば敵ではないのだが、基本的に魔物は人間よりも能力が高い者が多いし……。
こうなると多勢に無勢。
今の手勢では、少々心許ないかもしれない。
じゃあ、私も召喚魔法で対抗するとしますか。
「ベントラー、ベントラー……」
別に呪文は必要無いのだが、ノリと気分でUFOを呼ぶ呪文を唱える。
いくら異世界だからって、本当にこないよな?
「おいでませ!」
「ん~……」
で、実際に現れたのはUFOのようなオカルト的なものではなく、床に投げ出されてもなお、下着姿で眠っている女の子だった。
「フレア……まだ夕方だというのに、また寝ていたのですか……!」
「ん……?
あ、あれっ、ご、ご主人!?
ここ何処!?」
「帝国の帝都ですよ。
これから仕事を与えますから、サボらずに頑張るのですよ。
フレア、ここにいる魔物を倒しなさい。
ただし無抵抗の人間には、攻撃をしてはいけません。
建物もなるべく壊さないでください」
「は、はいっ!」
フレアは慌てて周囲の魔物に襲いかかった。
実は先程から、魔物が我々に対してひっきりなしに攻撃をしていたのだが、私の「結界」に阻まれて何もできない状態になっていたのだ。
その魔物達に、パンツ丸出しの女の子が素手で飛びかかっていく。
……なかなかシュールな光景だ。
まあ、すぐに魔物を引き千切り、返り血で全身を赤く染めたフレアの姿は、この戦場とも言える場所にとても馴染んだが……。
うん、赤竜の名は体を表しているな。
さて、私の方も、仕事を始めるか。
まず城の外に出て……よし、まだ町の方まで行っている魔物はいない。
それじゃあ土魔法で、城の周囲の地面を──、
「立ち上がれっ!!」
数十mまで盛り上げて壁を作る。
超大型巨人が中に入っているような壁だ。
この壁で完全に城の周囲を封鎖したので、飛行能力や転移魔法を持つ者──あとは物理的にこの壁を破壊できる者でもなければ、もう何者も脱出することはできない。
……今のところ、飛行能力を持つ魔物は出現していないみたいだけど、念の為に上空を「結界」で覆っておこうかな。
ただ、「結界」を空中に固定する為には、少し時間がかかる。
ま、主人公は遅れてくるものだって言うし、城の攻略は皆に任せておこうか。
土日はお休みです。




