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40 崩壊前夜

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 今回は途中で視点が変わります。

「私が把握している範囲では、今ので奴隷契約を受けている者は最後です。

 彼は従兄(いとこ)のサンタータ。

 今後一族のことは、彼に任せましょう」


 と、セポネが安堵したように言った。

 

 「猫神の民」も何人か保護することができたし、これで当初の目的の最低ラインは達成したと言える。

 まあ、奴隷契約をした主人によって、契約を解除させるところまでするのがベストだけど、それは必須ではない。

 時間さえあれば、私達だけでどうにかできることだからだ。

 

 後は暗殺組織を潰しておいた方がいいので、これから殲滅するように動くが、構成員はもう殆ど倒していた。

 ただ、幹部達が生き残っていたとしたら、組織を復活させる可能性があるんだよね。

 だからそいつらだけは、絶対に逃がす訳にはいかない。


 しかし幹部達が潜伏しているはずの場所へ踏み込むと──、


「誰もいないね」


『逃げた後のようだな』


 そこには誰もいなかった。


「別の出口から逃げたのでしょう?

 もしも私の知らない抜け道があったとしたら、どうにもならないのですが……」


「ああ、大丈夫。

 何人かは、仕掛けておいた罠にかかっているよ」


 索敵をかけると、罠を仕掛けておいた出口付近に反応があった。

 そこには常人には見えないほどの細い蜘蛛糸を張り巡らせておいたから、通ろうとすれば勝手に絡まって身動きがとれなくなる。


 そいつらは後で処理するとして……。


「お、知らない場所に1人いるね」


『じゃあ、やはり隠し通路が?』

 

「ん? これかにゃ?」


 マルガが近くの棚を動かすと通路が現れた。

 まあ、ダンジョン探索で罠の感知と解除を担当してしていた彼女ならば、簡単に発見できるよね。


「よし、風の魔法で空気と一緒に、麻痺毒を流し込んでやろう」


 これで毒耐性持ちでもなければ、身動きが取れなくなるだろう。

 それでも逃げようとするのならば、通路の酸素を一時的に消して窒息させてやろうか。

 ……うん、そうするまでもなく動かなくなったな。


『母さん、制圧は完了したよ。

 中にいた幹部は全員無力化したと思うから、後は母さんの好きにして』


『はい、こちらも終わりましたので、すぐに行きますよ』

 

 と、私は母さんに念話を送った。

 私でも死に損ない(アンデッド)系の魔物にしてから支配して、情報を強制的に全部吐かせることはできるんだけど、やっぱり母さんの「乗っ取り」ほどの効率の良さは無理だからねぇ……。

 ここは母さんに任せよう。


 私達は、じっくりと本番(・・)の準備を整えようか。

 



 吸血鬼(ヴァンパイア)メイドの、コンスタンスですよ~。

 現在、帝都の地下に来ています。

 メイド長(アリゼ様)の話によると、ここにメイド隊の支部を作るんだって。


「アリゼ様、副メイド長グラス及び吸血鬼メイド隊40名、馳せ参じました」


「ご苦労様です。

 グラスには暫くここで、メイド隊の指揮を()ってもらいます。

 早速ですが、吸血鬼メイド隊には帝国貴族の制圧を命じます」


 メイド長はテーブルの上に帝都の地図を広げ、いくつかの目印を指さしました。


「標的はこのマルで囲んだ屋敷です。

 なるべく極秘裏に、制圧しておいてください。

 ただし使用人や護衛などに、無用な犠牲者は出さないように」


 難しいことを言う……。

 他者に気づかれないようにする為なら、皆殺しにする方が楽なんですけどねぇ。


「あの~」


 私は恐る恐る手を挙げた。

 メイド長は滅多に怒らないけれど、存在の格が違いすぎて本能的に萎縮してしまいますぅ。


「はい、コンスタンス。

 何か?」


「血は吸っても良いのでしょうかぁ?」


 それはつまり標的を吸血鬼化させてもいいのか?ということですよ。

 それくらいの役得は欲しいですし、眷属にすれば精神的な支配も楽なので。


「多少の増員(・・)は認めましょう。

 標的は王国への侵攻推進派の他に、国民からの評判が悪い者や、裏世界との繋がりも強い者達なので、新しい国には必要ありません。

 ただ、まだ使い道はあるかもしれないので、存在自体は消さないように。

 あくまでこれから行う城攻めの際に、余計な真似をさせない為の処置です」


「やったぁ!

 ……いえ、かしこまりました」


 私は勿論、配下達も喜んでいますよ。

 人員が増えれば、それだけミスリル鉱山での交代要員が増えますからねぇ。

 あそこでの作業は、本当に楽しくないらしいので……。


 それに吸血鬼メイドの多くは、かつて帝国の先兵として利用されてきた者達です。

 帝国に対しては色々と思うところはあるはずですから、その鬱憤を晴らす為にもこの作戦では張り切ると思いますよ~。


「リュミエル、ニナ、後輩が増えますよ。

 良かったですねぇ~」


「はい、コンスタンス班長!

 ここで手柄を立てて、幹部の座を狙いますよ!」


「エリリーク様とレイチェル様に無礼を働いたあんたは、一生平メイドでしょ……」


「そんなはずはない!

 ……ないですよね?」


 私の方を見られても、知らないですぅ。 


 いずれにしても我々が動けば、今夜にもこの国の貴族制度は機能停止に(おちい)るでしょうねぇ。


「明日、私は人質達が連れ込まれたと思われる城へと攻め込みます。

 それまでにあなた達は仕事を片付け、制圧した屋敷の管理体制を整えておいてください。

 管理で人員が余るようでしたら、城攻めにも参加させます」


「「「「「はっ!!」」」」」


 メイド長の言葉に、私達は一斉に頭を下げました。


 帝国も馬鹿ですねぇ……。

 メイド長に喧嘩を売るなんて、神の怒りに触れるようなものなのに……。

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