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32 強さを求める者

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 私と対峙(たいじ)している武闘家のような男は、おそらく勇者だろう。

 髭面(ひげづら)の所為で日本人なのかまでは分からないけれど、少なくともその戦闘能力は、この世界の一般的な人間のものではない。

 この前戦った勇者と、同類だと思った方がいいと思う。

 

 あ、そうか……!

 南方でリゼが倒した海竜(シードラゴン)が隠そうとしていたのは、こいつのような他の勇者の存在か。


「あなたが、あのワームを操っているのかなぁ?」


「さあ……?」


 男はぶっきらぼうに、そう答えた。

 しらばっくれているのか、本当に知らないのかはよく分からない。

 まいったな……後者だとしたら、他にも竜達を操っている者が──別の勇者がいるかもしれないってことになる。


「勇者は、何人召喚されたのかな……?」


「それも、さあ?……だ。

 少なくとも俺は、1人で呼ばれた」


 うわ~……最悪だ。

 つまり帝国は、何度も勇者を召喚する儀式を行い、そして成功しているってことだ。

 さすがに無条件で無制限に召喚できるとは思えないけど、勇者は何人もいると思っておいた方がいいな……。

 少なくとも2人は確実にいる。


「じゃあ──」


「いつまで、おしゃべりをしているつもりだ!」


「っ!!」


 男が(てのひら)から、気の塊──気弾を撃ちだした。

 波●拳!? 波●拳を撃ったよ、この人っ!?


 危なっ!?

 ちょっと驚いた所為で、気弾を(かわ)しそこねた!

 「結界」でガードしなきゃ、危なかったよ。


 それからも、男は連続的に技を繰り出してくる。

 一気に間合いを詰めてからの、上段回し蹴り──それが躱されると更に回転して中段、下段と独楽(こま)のように回転蹴りが続く。

 私の「結界」がガリガリと削られるけど、まあ耐えられる。


 逆に言えば、「結界」に頼らなければ、完全にその技を防ぐことができないということだ。

 物理法則を無視しているかのようなその動きは、まさに格闘ゲーム(格ゲー)のキャラのようだった。


 だけど付け入る隙はある。

 男の攻撃が途切れた一瞬を狙って──、


「ふんっ!」


「グッ!?」


 私は男の鳩尾(みぞおち)へ、右の(こぶし)を入れる。

 そして男の動きが止まったところに、左の拳を更にもう一撃。


「グ……このっ!」

  

 男は慌てて私から距離を取った。

 ただダメージは、それほどではなさそうだね。

 たぶん防御力を上げる系のスキルを、持っているのだろう。


 まあ、その身体(からだ)1つで、格闘ゲームのような動きを再現し、桁はずれた攻撃力を発揮しているのは凄いけれど、アイ姉やリゼから比べたら余裕を持って対処することができる程度だ。

 

 よかった、私ちゃんと成長している……!


「あなた、地球の人でしょ?

 それがなんで、異世界の戦争になんて関わっているのさ?」


「ぬっ……地球を知っているだと?

 貴様も召喚者か?」


「……どちらかというと転生者ね。

 だから原住民としては迷惑なんだよね、あなた達勇者の存在は」


「はっ! こちらとて勝手に呼び出されて、迷惑を(こうむ)ったのは同じだがな。 

 ならばこそ、多少は好き勝手にやらせてもらおう。

 雑魚同士の戦争になど興味は無いが、貴様のような強者に出会えるのならば、わざわざ出向いた甲斐もあるというものだ!!」


 ……こいつは、何かしら帝国からの支配を受けている?

 でも、この戦い自体は、あいつの望みか……。

 戦闘狂とか面倒くさ……。


「ふざけるんじゃない……!

 こっちじゃ生活が壊されて、死んでいる人もいるんだよ……!!」

 

「……っ!!」


 男は私の怒気を受けつつも、唇の端を吊り上げた。

 なんで嬉しそうなんだよ……。


「どうやら本気を出しても良さそうだな」


 その瞬間、男が(まと)っていたオーラが大きく膨れ上がる。

 戦闘力が上昇した!?

 界●拳かいなっ!?


 そして男が動き出すと、先程と比べものにならないほど、動きが速くなっていた。

 いかん、これは身体能力のみで回避するのは、もう無理だ。

 勿論、「結界」でガードはするけど──、


「破ぁっ!!」


「くうっ!」


 男が殴りつけた「結界」が、大きく歪む。

 攻撃力も、先程とは桁違いだ。

 しかもそれを連続で打ち込んでくる。


 こりゃ、いつかは「結界」も、破壊されるかもしれないなぁ。

 ならば守勢から攻勢に出た方がいい。


 まずは、転移で男から距離を取る。


「!?」


 私が消えたことで男の攻撃が空振りし、体勢がわずかに崩れた。

 この人、動きは凄いけど、動き回っている所為で、逆に隙ができやすくなっているような気がする。


「目覚めろ、大地よ!」


 私は男の周囲の地面を土魔法で操り、針山のごとく無数の石の槍を生み出した。


「ぐがぁっ!!」


 石の槍は、男を串刺しにしたように見えたけど、しかし殆ど刺さってはいない。

 多少のダメージは与えたみたいだけど、むしろ石の槍の方が砕けた。

 凄いな、その防御力!?


 でも、ダメージが通っているのなら、何百回でも攻撃を続けていけば、いつかは倒せる。

 しかし──、


「うざってぇなぁっ!!」


 男が強く地面を踏むと、周囲数メートルが大きく(くぼ)み、石の槍が全て粉々に砕けちった。

 震脚っ!?


 おおっ!?

 しかも男の腕に、物凄い量のオーラが集中していく!?

 使うのか、超必殺技!?


 だけど飛び道具ならば、()けてしまえば、どうということもない。

 しかし男の視線は私ではなく、別の方へと向けられていた。

 そっちは、まだ沢山の人達がいる戦場だ。

 

 まさか──、


「待──」


「他人の命が惜しければ、受けてみよ、我が奥義をっ!!

 真轟(しんごう)ぉぉぉぉ──っ!!」


 男が突き出した両腕から、巨大なエネルギー波が撃ち出された。

 いけない、死人が出る!


 私はその技と戦場の間に、迷わず飛び込んだ。

 明日は用事があるので、更新はお休みします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 格闘ゲームのキャラかよ、その勇者は!? 戦闘狂いは他人への苦しみに興味無いという節が有るけど、他の人に向ける事で相手に必殺技を受けさせるというのは強い戦士と戦いたい感じじゃなく、単純に他人を…
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