表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

307/392

29 戦場に現れし者

 ブックマーク・☆での評価・誤字報告・いいね・感想をありがとうございましたっ!

 え~と、アリタだよー。


 そしてここは戦場で、周囲では殺し合いが行われている。

 え、えらいことだ……戦争だぁ……。


 まあ、私の役割は、負傷者や投降した帝国兵の救護であって、戦うことが主目的じゃないんだけどね。

 母さんからも、そういう方向で手伝うようにと言われている。

 いくら戦争でも、積極的に殺人はしたくないし、人命救助ならば少しは気が楽だ。

 

 とはいえ戦場の光景は、グロ描写が満載なんだよね……。

 薄い本では邪魔にしか感じなかったモザイクが、こんなに欲しいと思ったのは初めてだよ……。

 

 あと、兵隊を転移魔法で運ぶことも手伝わされた。

 そして今は、怪我人を転移で運んでいる。

 まあ、投降した帝国兵を送る場所は、収容所だけどね。


 ちなみにアイ姉は、どさくさに紛れて魔族が攻めて来る可能性も考えて、ノーザンリリィに居残って北方の守りを固めている。

 また、念の為にシス姉とリゼも、南方に行って帝国の動きを警戒してもらっているそうだ。


 そしてシルビナは私の護衛役として、私の方に向かってくる帝国兵を、ばったばったと斬り倒していた。

 さすがに元々騎士志望だということもあって、斬殺にも躊躇(ためら)いが無いなぁ……。

 でもそれが今は頼もしい。

 

 なお、今の彼女は、フルアーマー・シルビナだ。

 ミスリルを「変形」のスキルで鎧に加工し、その鎧の中にシルビナの魂を定着させている。

 つまり「死霊魔術」のスキルも併用して、「生きた鎧(リビングアーマー)」という死に損ない(アンデッド)系の魔物へと進化させたのだ。


 私の「変形」のレベルがもっと高ければ、より人間っぽく作ってやることもできたのだろうけれど、今はこれが精一杯。

 現在は全身が鎧に覆われていて素顔も見えないし、どちらかというとロボっぽい印象かも……。

 いずれはK●S-MOSのような、人間に近いロボ()にしてあげるからね。


 それでもただの幽霊(ゴースト)だった頃よりは、シルビナの戦闘力は格段にあがっているはずだ。

 まあ、他人からは見えないという、隠密性能が犠牲になってはいるけど、それはデメリットでもあったから、シルビナ本人としてはこちらの方が良いらしい。

 

 それにこの鎧には「錬金術」や「魔道具作成」のスキルも駆使して、浄化魔法などへの耐性も付与させておいたので、弱点を突かれて一瞬で消滅するような危険性もなくなった。

 今の彼女ならば、勇者ともそこそこ戦えるようになっているんじゃないかなぁ?

 それくらい強化したつもりだ。


 ただ、そんなシルビナの能力をフルで発揮する必要は、この戦場では無さそうだが……。


『アリタ、どうやら帝国軍の制圧も、時間の問題だな』


「だね……。

 私らの勝利は、もう確定でしょ」


 ただ、人的被害は皆無ではないし、純粋に喜べることでもないけれどね……。

 しかもまさかこの段階から、被害が拡大するとは思ってもいなかった。


 ゴアアァァァァァァ──っ!!


「!?」


 何か(けもの)の咆哮のようなものが、聞こえてくる。

 そしてその方向を見ると、戦場に巨大な怪物が出現していた。


 え~と、ヘビ……ではないね。

 巨大なミミズというか、ヒルというか……。

 とにかくそんな感じの怪物が、地面を突き破って突然現れたらしい。


「あれは……ワームとかいう奴?」


『だな……。

 下等な竜種だと聞く』


 (ドラゴン)……竜か。

 南方でも、帝国の船を運んでいたらしいね……。

 つまりあれも、帝国の支配下にあるのかな?

 

 しかしいくら下等とはいえ、一般兵には厳しい相手だと思う。

 実際、数十mはあるあの巨体で暴れ回ったら、押し潰されてしまう者が続出するだろう。

 しかも敵味方が入り乱れているこの戦場では、帝国兵も巻き込まれるはずだ。

 帝国は追い詰められて、なりふり構わなくなったってことかな?

 

 とにかくこれ以上被害が拡大する前に、止めなきゃ!


「いくよ、シルビナ!」


(おう)!』


 私達は、ワームに向かって走り出した。

 しかし変だね……。

 ワームと同じかそれ以上の強さの気配が、もう1つあるんだけど……。


「もう1匹潜んでいるかも……。

 気をつけて!」


『分かった!』

 

 その時、ワームが(まばゆ)い電流に包まれた。

 あれは……クラリス母さんの雷撃魔法だね。

 いや、帝国が許せない気持ちは分かるけど、女王(みずか)らが、敵軍の中につっこんでどうするのさ!?


 確かにクラリス母さんは、一騎当千の実力があるけどさぁ……。

 身内では母さんと私達4姉妹、それにシス姉とグラスとフレアとカーシャ……このメンバー以外でクラリス母さんに確実に勝てる者って、王国には存在しないと思う。

 他は精々キエルとマルガとハゴータなら、互角に戦えるかもしれない……って程度だ。


 そして帝国にだって、そんなに強い奴はいないだろう。

 人間ならば勇者くらいかな。

 

 それでもあのワームは、クラリス母さんにはちょっと厳しい相手だと思うよ。

 まあ、近くでカーシャが護衛していると思うので、万が一のことは滅多に起こらないと思うけど、それでも油断はできない。


「私、先に行く」


 と、転移魔法でワームの頭上に転移し、魔法攻撃を撃ち込もうとしたその時──、


「──っ!?」


 真横から、何者かが突っ込んできた。

 ここ、空中なんですけどぉ!?

 

 私はすぐさま「結界」で防御──したけど、その者が撃ち込んできた(こぶし)の威力は、予想外に凄まじかった。

 私は「結界」ごと、戦場の外まで押し出される。


『ちっ!!

 シルビナ、ワームの方はお願いっ!!』


『ああ!』

 

 念話で指示を送りつつ、私は地面に降り立つ。

 そして私を追って、地面に降り立ったのは──、


「なんだ、あんたは……?」


「なんだと思う……?」


 ボロボロの空手着のようなものを着込み、顔中が髭に覆われた男──。

 それはまるで、山に篭もっていた格闘家のような容貌だ。

 その明らかにこの世界に似つかわしくない異質な姿は、ある可能性を私に気付かせてくれた。


「まさか……勇者なのかな?」


 そう、召喚された勇者が、1人だけだとは限らないということに──。

 土日はお休みです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! ロボ娘は最高です〜 アリタさんスキルレベルを一刻も早く上げるべきですwww 勇者はクラス単位か、これは当たり前の常識だが私も予想しなかったですね。謎の一部が…
[一言] >召喚された勇者が、1人だけだとは限らない ですよね~。 まあ、強力な敵がいてこそ、物語は面白いのです。
[一言] >他は精々キエルとマルガとハゴータなら、互角に戦えるかもしれないーー ーーハゴータって、そんなに強くなってるの(笑。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ