表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

297/392

19 再戦に向けて

 ブックマーク・いいね・感想をありがとうございました!

「…………知らない天井だ」


 私が目覚めると、知らない部屋だった。

 泊まっていたカタガヌ村の宿屋でも、自宅でもない。


『アリタっ!!

 目が覚めたのか!!

 丸1日眠っていたんだぞ!!』


 シルビナが私に抱きつこうとしたがすり抜けて、ベッドにめり込んだ。

 おいおい、はしゃぎすぎだよ……。


 いや……このシルビナの反応も当然か。


「私……勇者に負けたよね?

 なんで生きているの?」


『アリタの母君──アリゼ様が間に合って、事なきを得た。

 村から離れた場所で戦っていた所為で、連絡員も気付くのが遅れたから、アリゼ様の到着もギリギリだったそうだ。

 村で勇者を待っていれば、こんなことにはならなかった……と、私まで怒られたぞ』


「それは済まなかったねぇ……。

 これは私も、後でお説教かな……?」


『アリタに余計なことを喋った王女殿下には、説教をするとアリゼ様は言っていたがな。

 アリタには……もう痛い目に()っているし、言わなくても何が悪かったのかは分かっているだろう……と』


 あらら……。

 姉さん……スマヌ……スマヌ。


 でも、私としては怒られた方が、気持ちは楽だったかな……。

 今回のことは、明らかに私の失態だし。


「はは……自分の能力(ちから)を過信して、勇者を舐め過ぎていたね……」


 正直言って、うちの家族と魔族の四天王以外で、あそこまで強い奴がいるとは思っていなかったからなぁ……。


『そうだな……。

 アリタの能力は凄いけど、無敵というほどではなかった。

 過信するのなら、アリゼ様くらいの強さじゃないと駄目だ』


「あ……シルビナは、母さんが戦っているところを見たんだ。

 じゃあ、勇者は問題無く倒せたよね?」


『いや……勇者は帝国に逃げ帰った……』


「は?」


 え? 母さんが勇者を仕留め損なったの?

 あの母さんがそんなドジをする?

 それとも、勇者の能力が想定以上に高かったとか、まだ奥の手があっとか、そういうこと?


『アリゼ様は物凄く手加減した上で、それでも勇者の片腕を吹き飛ばすほどの強さを見せつけてくれたが、トドメは刺さなかった。

 何故だか分かるか、アリタ?』


「え、なんで?」


 私は困惑する。

 あんな勇者を、生かしておく理由なんて無いじゃん。


『勇者を倒すのは、アリタの役目だから──と、アリゼ様は言っていた。

 勿論無理()いするものではないし、私もアリタがまた危ない目に遭うのならば、やらなくてもいいと思っている』


 シルビナ……。

 確かに私は戦うことも痛いことも、あまり好きじゃないけど……。


「でも……自分からやり始めたことを途中で投げ出したら、それこそ母さんは怒るかな……」

 

『そうか……アリタがそう言うのならば、私も協力を惜しまない。

 今度はしっかりと準備を整えよう!』


「そうだね……」


 となると、修行パートの始まりか。

 だけど何から始めればいいのだろうか?


 私が勇者に劣っていると言えば、近接戦闘だけど……今から鍛えても、すぐにどうにかなるものなのかな……?

 そんなことを考えていると、部屋の隅にインゴットのような物がいくつか積んであることに気がついた。


「シルビナ、あれ何?」


『あれはアリゼ様が、好きに使って役立てろ……と。

 ミスリルだってさ』


 ああ、前に姉さん達の婚約指輪を作る為に、手に入れた物の余りかな?

 吸血鬼メイド隊が採掘している物は、直接国に納品されているはずだし……。

 でもミスリルで何を……武器でも作れってこと?


 う~ん、武器かぁ。

 勇者に通用するような武器……。


 ……ん? なんか近づいて──、


「お姉ちゃん!

 目が覚めた!?」


 バンっ!と、乱暴に部屋の扉が開かれる。

 そして部屋に飛び込んできた者は大きく跳び上がり、ベッドで横になっている私の上に落ちてきた。


「ぐふっ!?」


「大丈夫!?

 死にかけたって聞いたよ!?」


 フライングボディプレスを仕掛け、そして更に私の身体(からだ)を激しく揺さぶるのは、妹のリゼだった。

 おおぃ、私の脳を攪拌(かくはん)する気か!?


「やややや、やめぃ!」


「ふぎっ!」


 私が頭に手刀を落とすと、リゼはようやく止まる。


「……私は無事だから、落ち着きなよ」


「は~、良かった~!!」


 安心したリゼは、私の腰にしがみつき、グリグリと頭をお腹に押しつけてくる。

 まるで自分の匂いをこすりつけて、所有権を主張するマーキングのようだ。

 いや、実際にそのつもりなのだろう。

 そうすることで、私が遠くへ行かないように……と願っているのかもしれない。


 はぁ……今回のことでは、色んな人に心配をかけちゃったなぁ……。

 

『あ、アリタ……。

 その子は?

 何回か様子を見に来ていたが……。』


 あ、シルビナはリゼのことを知らないのか。

 リゼはそんな彼女の方を向いて、


「あたしはリゼだよー!」


『私が見えてる!?』


「……私の妹だよ。

 双子の」


『は、双子?』


 シルビナの顔が、困惑の色に染まる。

 私とリゼとでは、顔立ちや髪の色が全く違うし、そもそもリゼにはケモ耳や尻尾もあるからなぁ……。

 でも説明は難しいので、今は無視しておこう。


 ……って、リゼがいるってことは、ここはノーザンリリィ辺境伯領ってこと?

 土日は定休日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 一番可哀想なのは妹の要望を叶えたのせいで説教されるレイさんですねw いやまぁ、性格がクズても一応魔王と相対するという勇者職業ですから、寧ろ魔族幹部クラスの実力を備えるべきでしょう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ