4 北方での再会
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私は旅の準備を整えて、シルビナの最期の地であるヘイローへと向かうことにした。
「ケシィー、お留守番お願いねー」
「はい、いってらっしゃいませ、お嬢様」
最近は母さんや姉さん達が帰宅しない日が増えているので、ケシィー1人だけを家に残すのは、なんだか申し訳ない気持ちになる。
できれば留守番で寂しい想いをさせたくはないのだけど、彼女を連れて行く訳にもいかないし……。
だから、学院からシシルナなどの友人を招いて食事会を開いてもいいって言っているんだけど、ケシィーはあくまで使用人という立場を守り、この家を私物化することを良しとはしない。
本当に忠義に厚い人だねぇ……。
「まあ、なるべくすぐに帰ってくるよ」
私には転移魔法があるから、帰る時は一瞬だ。
ただ、その転移魔法も、初めて行く場所には使えない。
私はヘイローには行ったことがないので、まずは転移魔法で行けるところまで行って、そこから飛行魔法でヘイローへと向かう。
ただし一直線にヘイローへ向かおうとしても、ちょっと方角がずれると辿り着けない可能性もあるので、わざわざヘイローへ続く道に沿って飛ぶことになる。
結果的に遠回りすることもあるので、飛んでいっても結構時間はかかりそうだ。
まあ、空から見る風景は綺麗だったので、その旅路に飽きることはなかったけどさ。
できれば絵に描き残したかったけど、さすがに飛びながらでは無理だし、そんな暇も無い。
ともかく3時間ほどかけて、私はヘイローに辿り付く。
そこには人影は無く、誰もいなくなった村は、ただひたすらに不気味だった。
そんな村の中を私は歩き回る。
破壊された家はほとんど見られない。
この時点で、魔物の襲撃ではないことが分かった。
魔物の仕業ならば、もっとあらゆる物が滅茶苦茶にされていただろうしね……。
ただ、戦闘自体はあったらしく、所々に血痕が見て取れた。
しかし遺体は既に埋葬されたというから、何処でシルビナが命を落としたのかは分からない。
でも何処かには、シルビナ達の遺骨が納められた墓があるはずだ。
私はそれを探して、村はずれの方へと向かった。
するとそこには、剣が立てかけられただけの簡素な墓のようなものがあった。
まだ新しいし、これかな……?
そしてその周囲には、浮かばれない人の魂が漂っている。
私には「霊視」のスキルがあるから、ハッキリと見えた。
ただ、かなり強い思念を感じるので、もしかしたら普通の人でも視えることがあるのかもしれないな……。
一般的に幽霊と呼ばれるものだ。
これが強い恨みの念を持って悪霊化すると、怨霊となる。
また、魔法使いが自らの意思で、死に損ない系の魔物と化した霊体が魔霊だ。
幸いこの魂は、怨霊にはまだなっていない。
良かった……!
「シルビナ……!」
私はその魂に呼びかける。
形はハッキリしていないし、意識もあるのかどうかよく分からないけれど、たぶんシルビナの魂だ。
ただ、その魂は私の呼びかけには反応しなかった。
自我が曖昧な状態になっているのだろう。
いかに強い想いを残した魂でも、時間の経過とともに霧散していく場合が殆どだ。
本来は肉体を失った時点で、魂は消滅するか輪廻転生の流れに乗る。
例外は死に損ない系の魔物化した場合など、そんなに多くはないと思う。
私だって1度死んだ経験はあるけど、母さんに吸収されていなければ、とっくに前世の記憶とかは消えていただろう。
「ふむ……」
ここは我が「死霊魔術」のスキルで、シルビナの魂を本来の形へと修復しよう……!
魂に魔力と生命力を注ぎ込み、失いかけていた力を取り戻すのだ。
すると靄のような形だった魂は、徐々に人の姿を取り戻していく。
やっぱりシルビナ……!
シルビナだ……っ!
「シルビナっ!」
先程まで無反応だったシルビナは、こちらの方を見た。
しかしその視線はまだぼんやりとしている。
所謂ハイライトオフ状態だ。
だけど徐々にその目は、明確な意思の光を宿し始める。
それに全体的に淡く身体が輝いていて、凄く綺麗だ。
あ、これはオーラの光か。
感情も取り戻しているってことだな。
私は目から溢れた涙を拭う。
こんな形でも、やっぱり親友との再会は嬉しかった。
「シルビナ!」
『あ……アリタ?』
「うん、私だよー!
何が起こったのか、理解している?」
私がそう訪ねると、シルビナは軽く小首を傾げる。
ただ、最初は何も思い出せないようだったけど、その表情は徐々に苦虫を噛み潰したかのように歪んでいった。
『私……もしかして死んでいるのかな?』
それをようやく理解したようだ。
でもさっきからその身体は空中に浮いているんだけど、それはまだ自覚していないらしい。
「ごめんね……。
本当ならこのまま魂を浄化しちゃった方が、シルビナにとって楽だったのかもしれないけど……。
私はどうしても何があったのか、知りたかったんだよ……。
なんであなたがそんな風になってしまったのか、話を聞かせてくれないかな……?」
『いや……いいんだ。
私も……何も成し遂げることができないまま、終わりたくはなかった……』
シルビナの瞳には、強い意志の光が燃えていた。
『話すよ、すべて。
私を……私を殺したのは、勇者だ』
「うんっ!?」
シルビナの言葉は、私が想定していた全てから外れていた。
なお、ゴースト・スペクター・レイスの設定はこの作品独自の物です。




