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2 水面下で動く異変

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 シルビナが命を落とした事件については、国から箝口(かんこう)令が敷かれているようだ。 

 確かに小さな村が、魔物や山賊に襲われて全滅するなんてことは(まれ)にあるらしいけれど、村人が全員が拉致されるような話は聞いたことが無い。

 

 異常な事件だし、それだけ民心への影響が大きいと判断されたのかもしれないなぁ……。

 万が一魔族でも関わっていたら、パニックも有り得るのだろうしねぇ……。

 勿論、犯人に国の動きを悟られないようにするというのも、本当なのだろう。 


 というか、これ機密なのでは?

 ナタリアさん、大丈夫なの?


「そんなことを、私に話しても良かったのですか?」


「娘の為に泣いてくれた御方に、嘘はつけませんもの……」


「……ありがとうございます」


 私は深々と頭を下げた。

 もしもの時は、ナタリアさんが罰せられないように、母さんにでも掛け合っておこう。


「それでは……娘さんのご遺体は……?」


 証拠物件として、まだ返還されていないのだろうか?

 それとも──。


「損傷が酷く、現地で荼毘(だび)に付して埋葬した……と」


「そう……ですか……」


 ナタリアさんの目に、涙が浮かぶ。

 今度は私がハンカチを差し出して、彼女を(なぐさ)めようかと思ったが、結局一緒に泣いてしまった。


 損傷が酷いって、一体どんな死に方を……。

 シルビナが受けた苦痛を思うと、冷静ではいられなかった。


 ……しかし遺骨も無いのでは、真っ当な墓参りもできないじゃないか……。

 なんでシルビナが、そんな酷い最期を迎えなければならなかったのさ……!

 せめて彼女が埋葬された場所だけでも突き止めて、お参りしないと……!


 私は落ち着いたナタリアさんへと丁寧に挨拶をして、ナタリー家を後にした。

 後日、改めて挨拶しにこようと思う。

 その時には、少しでも詳しいシルビナの情報を手に入れていることを誓いつつ──。




 それから私は、王城へと転移する。

 城の中へ直接ね。

 もう顔パスなので、私のことを気にしている衛兵とかはいない。


 そして母さん達(女王陛下)の部屋に行くと、


「陛下とメイド長は不在でございます」


 留守を守っていたらしいメイド隊の1人が、そう答えた。

 この人もたぶん元魔物だと思うけど、そういう存在が何人もいるこの城って、もう魔王城みたいなものではなかろうか……。

 実際、母さん達がいない時にこの城を管理しているのは、半魔族のグラスだし。


「え、いないのー?

 何処へ行ったか聞いている?」


「さあ……聞いてはおりませんが……。

 ただ、暫く留守にするとだけ……」


 何処に行ったのか、誰にも告げていないというのはおかしいな。

 例の事件の対応で動いている……?


 まあ母さんと一緒なら、女王に万が一のことなんか起きるはずもないから、ある意味安心ではあるけれど……。

 それに緊急の用事がある場合は、念話での連絡が取れるはずだ。


『母さんどこー?

 アリタだよー。

 送レ』


『──ただいま念話に出ることができません。

 ご用のある方は、ピーッという発信音の後に、ご用件をお話しください。

 ピーッ』


 なんで機械音声っぽいのが返ってくるんだよっ!?

 念話での留守電機能を開発したっていうの……?

 

 ……もう面倒臭いから、母さんはいいや。


「じゃあ、姉さんは?」


「今日は城外での予定は無いはずです」


「そっかぁ、ならそっちに行ってみるー」


 そんな訳で、姉さんの部屋の前に直接転移する。

 そして部屋のドアをノックすると、


「はーい」


 と、透き通った綺麗な声が返ってくる。


「あら、アリタちゃんじゃないですか。

 珍しいですね?」


 扉を開けて出迎えてくれたのは、エリお兄さんだった。

 お兄さんとは言っても、相変わらず姉さんのメイドをやっているし、髪も以前より伸びたので、いよいよ男の人には見えなくなった。


 というか、美少女ぶりに磨きがかかって、一部の男性からはちょっとしたアイドルのような扱いを受けているらしい。

 まったく……人の性癖を破壊するとか、罪作りな男だぜ……。

 私もいつかお兄さんをモデルにした薄い本を作ろうと思っていたけど、シルビナに見せる機会が永遠に失われたことが本当に悔やまれる。

 きっと「キャー、キャー」言って、喜んでくれただろうなぁ……。


 ……おっと、また泣けてきた……。


「あの……姉さんに話があるんだけど?」


「ああ、奥にいますよ。

 今、お茶を入れてきますから、どうぞ」


「おじゃましまーす。

 ケーキも付けてねー」


「はは……」


 お兄さんは私の要求を受けて、苦笑しながら去っていった。

 そして私は、部屋の奥へと進む。

 するとそこには、机に向かって書類仕事をしている姉がいた。


 いずれはこの国の女王になることが確定している、我が家の次女──レイチェル姉さんだ。

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