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80 竜戦の報酬

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 私は(ドラゴン)の前に出る。

 竜は私に対して唸り声を上げているが、これは(おび)えて威嚇しているだけだな。

 さすがにここまで高位の魔物となると、格の違いは分かるらしい。

 とはいえ、私が前衛に出るまで気付かなかったようなので、そんなに感知能力は高くはないのかもしれない。


「怖くない……怖くない」


 私は竜に向けて右手を差し出す。

 まあ、私から見れば竜なんて、小さなキツ●リスみたいなものだ。

 可愛がって上げるから、おいでー。


 だが──、


 バクンと、竜が私の腕に食いついた。

 私ほど防御力があると痛みはないんだけど、物分かりの悪い子は嫌いだなぁ……。


 なので、殴る。

 竜はその一撃で昏倒した。


「怖くないって、言っているでしょ!」


「いや、怖いわよ……」

 

「です……」


 なにやら姉弟からツッコミが入るが、無視することにする。


 ともかくこれで、上下関係はハッキリしただろう。

 ここで以前から所持していた「生物使役」のスキルを使い、この竜を私の眷属(けんぞく)化する。


「はい、起き上がってください。

 お手ですよ」


「グ……グア」


 竜は私が差し出した(てのひら)に、ちょこんと前足の爪先(つまさき)を載せた。


「次はお座り!」


「グア!」


「伏せ!」


「グッ!」


 うむ、ちゃんと意思疎通はできているな。

 私の命令通り──というか、イメージ通りに動いてくれるようだ。


「それではあなたには、フレアと名付けましょう」


 竜に関連する名前で何かいい物はないかと考えたところ、有名どころではバハムートを思い浮かべる。

 だが、バハムートは厳密には竜ではないし、さすがにそれをそのまま使うのも安直なので、バハムート→メ●フレア→フレア……という連想ゲームで決めた。

 それに(うろこ)の色が炎のように真っ赤なので、そのイメージにも合う。

  

「今後は私の命令には絶対服従ですよ。

 とりあえず命令が無い限りは、人間を襲っては駄目です。

 それから……そこのカーシャの騎竜(きりゅう)として、働いてください」


「えっ、あたし!?」


 いきなり名前を出されて、カーシャが驚愕する。

 でもこれは、竜を倒すことで得られるはずだった名声が無くなったので、次善策という訳だ。


「おそらく世界でも唯一と言える、竜騎士(ドラゴンライダー)ですよ。

 クラリスの親衛隊長としては、相応(ふさわ)しい肩書きでしょう?

 まあ、この子を完全に制御するのは苦労するかもしれませんが、頑張ってください」


「お……おう、分かった……」


 カーシャは自信なさげに答えた。

 竜騎士は歴史的に見れば過去にも存在したとは聞いているけど、騎竜として使っていたのは飛竜(ワイバーン)という下位の竜で、本物の竜に騎乗していたという例は、それこそ伝説の中にしか無いらしい。


 つまりこれからカーシャは、伝説の存在になるのだ。

 気後れするのは当然だろう。

 だが彼女には、クラリスの為にも頑張ってもらおうと思う。


「さて、フレア。

 巣に案内してください。

 色々と貯め込んでいるのでしょう?」


「グ……グア……」


 竜はカラスのように、光り物を好むという習性があるらしい。

 つまり黄金などの財宝が期待できるという訳だ。

 

 で、フレアの案内で空洞の(すみ)の方にある横穴に入ると、そこには期待通りの財宝があった。

 何処かから奪ってきたのか、黄金で作られた美術品や、金貨や銀貨、剣や鎧など、莫大な財宝が床に敷き詰められていたのだ。


「おお~、これは凄いわね!

 売れば国の年間予算くらいにはなるかしら。

 アリゼ、これを換金して予算に足していいの?」


「ええ、いいですよ。

 それでは、私の空間収納に入れておきましょう」


「グ……グアァ……」


 私が財宝を収納し始めると、フレアが恨めしそうに呻く。

 コレクションを奪われるのは(つら)いか。

 気持ちは分からないでもない。

 でもこれらは、元々人から奪ってきた物だろうし、その所業は本来なら許されないことだ。


 ただ、その凶行を私が直接見た訳でもないので、私にどうこう言う資格があるのかというと微妙なところである。

 もしかしたらどこかの遺跡で拾った──とか、合法的に集めたという可能性も、物凄く低い確率であるし……。

 だから多少手心は加えてあげよう。


「……フレアがちゃんと働いてくれれば、一部はご褒美に返してあげてもいいですよ?」


「グア!」


 フレアは尻尾を振って喜ぶ。

 ふふ……()い奴。


 そして収納の作業を続けていると、


「おや?」


 財宝の中に、人が作り上げた物ではなさそうな物体があることに気がついた。


「これは鉱石……もしかしてミスリルですか?」


「え、これが目的の?」


 それは両手で抱えきれないほどの大きさの、殆ど巨石と言ってもいいほどの物だった。

 それが(かす)かに銀色の光を発している。

 

 こんなところで今回の目的の物が手に入るとは、都合が良すぎるなぁ……。

 と、思ったが、そういえば私の「運」の数値はカンストしていたわ……。


「これなら指輪だけではなく、剣や鎧でも作れそうですねぇ。

 目的も達成したので、帰りましょうか。

 それでは、フレア!」


「グア!」


 私達はフレアの背中に乗って、この空洞から脱出した。

 さて……、このまま王都に帰ったら騒ぎになりそうだから、フレアはダンションの古竜ガイガがいた場所で飼うことにしようか。


 それからカーシャには竜騎士としての訓練をつけて、指輪も作って……と、暫く忙しくなりそうだなぁ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 運のステータス数値は上げられるモノですか?それなら超優先じゃん。 フレアさん、可哀想と言うべきか、可愛いと言うべきかw
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