75 婚約指輪を作ろう
ブックマーク、ありがたいです!
私はアリゼ! 穴掘りアリゼだー!
そんな訳で、鉱山に来ています。
クラリスが弟のエリと親交を深める切っ掛けが欲しいということで、この鉱山で一緒に冒険をしよう……ということになった。
参加メンバーは、私・クラリス・エリ、そして女王の親衛隊から護衛役としてカーシャだ。
カーシャは親衛隊の隊長というポジションだが、有事の際は軍隊を指揮する将軍でもある。
ただの孤児からここまで出世した者は、歴史的に見ても殆ど存在しないだろう。
それがつい最近まで差別の対象だった獣人となれば、前代未聞かもしれない。
まあ……カーシャは、厳密に言うと獣人とはちょっと違う存在だったんだけどね。
だからこそ超人的な実力を発揮し、その地位を手に入れることができたとも言える。
その詳細についてはまたの機会にするとして、今は目の前の鉱山の攻略が優先すべきことだ。
「魔物が住み着いたということで、放棄された鉱山です。
今日はここを攻略しつつ、ミスリル鉱石を手に入れたいと思います」
「あら、ここミスリル鉱山なの?
ミスリルって、結構貴重な金属なんでしょ?
なんで放棄されているのよ?」
そんなクラリスの疑問ももっともだが、それには理由がある。
「産出量が減っていたそうですよ。
そこに魔物が入り込んで、駆除するのも大変そうだということで、放棄という流れになったようです。
ただ、全くミスリルが無いという訳ではないと思うので、それを手に入れてエリの婚約指輪に加工しようと思いまして」
「え、私のですか?
というか、指輪?」
「私の故郷では、婚約や結婚の際に、相手へペアの指輪を贈るという風習がありましてね。
鉱山からただ魔物を駆除するだけでは味気ないので、この指輪を作ることを目的にしたいと思います」
実際には婚約指輪だと男性から女性に、結婚指輪だとお互いに贈り合うということなるらしいのだが、今回は1回で済むように結婚指輪としても使えるペアの物を用意しようと思う。
特にエリの場合、レイチェルとアイシス、更に場合によってはリーザの分まで用意しなければならないし、十分な量のミスリルが手に入るのかも分からないからなぁ……。
「いいわね!
私とアリゼの分も指輪を作りましょう!」
と、クラリスは、指輪と聞いて張り切りだした。
一応断っておくけど、私もクラリスには指輪などを何回も贈っているからね?
だからクラリスも、指輪欲しさに張り切っている訳ではないと思う。
……うん、まあ……結婚指輪として、クラリスに贈ったことは無かったが……。
たぶんそういう儀式めいた物がお望みなんだろうな……。
でも仕方が無いじゃん!
前世では婚約も結婚もしたことが無いんだもの!
うっかり失念していたわ……。
これはクラリスに悪いことをしたなぁ……。
お詫びとして彼女には、私の技術の粋を集めて、滅びの山の火口に放り込まない限り、壊れないような立派な指輪を作ってあげよう。
勿論、指輪の能力を解放したら姿も消せるぞ。
それはともかく、張り切るクラリスは、いきなり坑道へ突入しようとした。
そんな彼女を、
「やめろ、クラリス!
女王が先陣を切るな!」
カーシャが止める。
ナイス判断!
「クラリス、このような鉱山には、有毒なガスが充満していることもあります。
一呼吸で死ぬ場合もありますので、私が感知スキルで安全を確認しながら進みますからね。
慌てないでください」
「そ、そう……分かったわ」
さすがにクラリスも、即死の危険性があることにはビビったようで、『えっ……いきなりそういう感じ? ちょっと甘く考えてたことを反省し、気持ちを引き締めました』というような顔をしている。
「あと、役割も決めておきましょう。
私は基本的に安全確認と索敵、そして照明係ですね」
攻撃はしない。
そこまでしちゃうと、他の人には何もすることが無くなってしまうので。
実際その気になれば、まだ坑道に一歩も入っていないこの状態から、中の生物を全滅させることも不可能ではないし。
毒霧や大量の水を流し込むなり、中の空気を完全に抜くなり、熱線を撃ち込むなりね……。
でもそれをやってしまうと、私達も中に入ることが難しくなるので、それはやらないし、やる必要も無い。
で、役割分担だが……。
クラリスは魔法攻撃担当。
カーシャは物理攻撃担当。
エリ……は、各種の補助かな。
エリはクラリスの魔力が切れたら、「吸精」のスキルで私の魔力をクラリスに補充するのが1番の役割だ。
これでクラリスは、ほぼ無限に魔法攻撃ができるようになる。
「それと狭い坑道で火を使うと、有毒な気体が発生したり、何かに引火したりする危険性もあるので、魔法攻撃での火や雷の使用は禁止とします。
また、強い衝撃がある攻撃も、落盤が発生する可能性があるので禁止ですね。
あとは……大量の水も、坑道が水没するので使わない方がいいでしょう」
「難しいことを言うわねぇ……。
ということは使えるのが、風と土……あと何があるのかしら……?」
クラリスは難しい顔をして、悩んでいる。
でも今の彼女の実力ならば、ただ魔物を倒すだけだと余裕すぎるだろうし、縛りプレイの要素があるくらいで丁度いいと思う。
なお、SMプレイの話はしていないので、念の為。
「さて、それでは坑道に突入しましょうか」
私は魔法で光の球体を生み出してこれを松明の代わりにし、坑道の中へと踏み込んだ。
今季アニメは、TS要素のある作品が多くて嬉しいですね。




