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7 人間の町へ

 ブックマーク、☆での評価ありがとうございました。

 私は恐竜の熱線を受けても、なんとか生きていた。

 乗っ取りの繰り返しで積み上げた生命力と防御力などのパラメータが、思っていたよりも高くなっていたようだ。

 ただし──


「う~ううう……あんまりだぁ……。

 あァァァァんまりだァァァァァァァァ!!」


 そう叫びたくなるのも当然で、私の両腕は吹っ飛んでいた。

 これは熱線をどうにか相殺させようとして、魔力でガードした拳を熱線に対して全力で叩き込んだ結果だ。

 だけど、それだけでは相殺しきれずに片腕が吹っ飛び、慌てて残った方の腕を使って、ようやく相殺できた。

 

 命は助かったけど、両腕を失ってしまい、めっちゃ痛い。

 お前、ふざけんなよ!

 ピッ●ロさんみたいに、簡単には生えてこないんだからな!?


 とにかく両腕を失ったのは痛手だが、これも乗っ取りを使えば解決する問題だ。

 恐竜がまた熱線を吐く前に、倒してしまおう。

 攻撃手段が無い?

 腕が無ければ、魔法があるじゃない。


 この数年間で、私の魔力はかなり増えているのだよ。

 むしろ手加減が難しいから、使いにくいほどに!


「いけっ、カマイタチっ!!」


 私は風の刃を撃ち出した。

 ただし、それは一発だけではない。

 一気に数十発だ。


 前にこの恐竜と戦った時に、10発ほど撃ち込んでも死ななかったから、これくらいやらなきゃ駄目だろう。

 ドドドドド──と、私の攻撃が炸裂する音が数十秒間続き、その音が終わる頃になってようやく、私の視界は暗転した。


 ……よし、今度こそ乗っ取り成功!

 ただ、呑気にそれを喜んでばかりはいられない。

 この恐竜の身体もさっさと捨てないと、人間達が安心しないからね。


 もしも人間達が再び戦力を集めて、恐竜の討伐に動き出したら、その過程でゴブリン達に追いついてしまうということも有り得る。

 そうならない為にも、ここはゴブリン(前の身体)と恐竜が相打ちになったように見せかけた方がいい。

 私が大ダメージを受けていると人間達に誤認させる為にも、可能な限りヨロヨロとし足取りでゆっくりと移動を始めた。


 そして同時に索敵で、周囲にいる動物の存在を探る。

 う~ん、今の戦闘に驚いて逃げちゃっているのかなぁ……。

 なかなか見つからない。


 お、逃げ遅れたのがいる!

 足が遅い、カメみたいな動物だな。

 人間達に気付かれないように、サクッと毒を散布して()ってしまおう。


 短い間だったけど、さよなら恐竜の身体。

 残った死骸は、人間達が勝手に処分してくれるんじゃないかな。




 あれから何度か身体を乗り換えて、今はネコです。

 タチではない。

 にゃ~ん。


 ふぅ……ようやく町の中にいてもおかしくない動物の身体を手に入れて、街に入ることができたよ。

 さすがに、オオカミやイノシシなどの害獣の身体で町中に乗り込んだら、ちょっとした事件になるからね。

 前世では、クマやシカなどがニュースになっているのを、よく見たなぁ。

 その点、ネコならば騒ぎにはならないだろう。


 まあ、ここの人間にネコを食べる習慣があったりしたら、追いかけられる可能性もあるけどさ……。

 あとは、保健所的な組織が無いことを祈ろう。


 ともかく、はやく人間になりたーい──ってことで、その第1段階として、まずは人間の町に潜入する。

 いや、潜入したところで、人間の身体が手に入るような状況に出くわすとは思えないけどさぁ……。

 人間の身体を手に入れる為には、殺人が必須だからなぁ……。


 現状ではそこまでして、人間の身体を手に入れようとは思わない。

 いや、助ける手段が無いほど、死にかけの人間がいたらあるいは……って感じかな。

 さすがにもう死ぬしかないような身体なら、私が貰っちゃってもいいよね……?


 まあ、そんな都合のいいシチュエーションに、早々出会えるとは思えないけれど。

 ましてや、それが美少女の身体なんて奇跡は、まずあるはずがない。

 あったとしたら、それはあの女神が運命を操作しているとか、何か裏があるんじゃなかろうか。

 それはちょっと怖いなぁ……。


 ともかく現状では、人間になれるアテなんてないけど、それでもこの世界の人間がどんな生活をしているのか、それを見るだけでも損は無いはずだ。

 そんな訳で私は、町の中をうろうろと歩き回る。

 たまに親切な人が餌をくれるので、この世界のネコの扱いは、私の前世の世界とそんなに変わらないようだ。


 残り物とはいえ、久々に人間の料理を食べることができたよ。

 はぁ~、幸せにゃあ。

 ……ふふっ、ネコの生活も気楽で悪くないな。

 そんな風にのんびりと数日を過ごした後、私は大きな屋敷の前に辿り着いた。


 ふむ……お金持ちそうだな。

 何か豪勢な餌を(ほどこ)してくれないかにゃ?

 よ~し、今晩はこの家の軒先を、寝床として貸してもらおう。


 ここをキャンプ地とする!


 ……その時はあんな悲惨なことになるとは、夢にも思わなかったのです。

 地獄は、この世にあったよ……。

 次回から2回ほど閑話となります。その後から始まる一連のエピソード(ほぼ2章完結まで)はまだ書き終わっていないので、更新ペースをどうしようか迷っています。

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