71 強まる絆
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レイチェルなのです。
エリがクラリスお姉ちゃんの弟だという事実には、さすがの私も驚愕しました。
確かに少しだけ似ているとは思っていましたが、本当に血縁だと誰が思うものですか!
漫画やアニメならば、「ご都合展開」だと突っ込まれかねませんよ!
……まったくあの母は、何故こんな大事なことを黙っていたのでしょう……!
サプライズをしかけるのも、いい加減にしてもらいたいものです。
ともかくそんな訳で、急遽エリについての家族会議が開かれることになったのです。
その話し合いの間、クリスはずーっとエリを抱きしめていました。
10年以上離ればなれになっていた親子ですから、2人の間に広がっている大きな溝を埋める為には、このような触れ合いもある程度は必要なのかもしれません。
しかしエリにとっては血の繋がりこそあれ、クリスは親子としての実体が無いほとんど他人同然の女性──しかも王太后に抱きしめられて、緊張しないはずがないのです。
その所為で最後の方は、死にそうな顔になっていました。
これはクリスの距離の詰め方が、おかしいと言わざるを得ません。
あまりにも遠慮が無さすぎます。
それに婚約者となる私を差し置いて、ベタベタするのはどうかと思うのです。
いえ、これは嫉妬とかではなく、対外的な面子の問題でしてね……!
あと、グラスは意外にもエリに対して同情的でした。
グラスにとってエリの存在は、妻の浮気相手との子なのですから、目障りだと感じてもおかしくないはずなのですが、一緒にメイドとして働くことで仲間意識でも芽生えたのでしょうかね?
それとも元々は男なのに、女性の姿をしていることへの共感でしょうか?
……父と息子でメイドをしているなんて、なんとも業が深い一族ですね。
まあ、その一族に私も籍を置いている訳ですが……。
さて、話し合いも済んだので、次はアイリス様との親交を温めましょう。
予定では彼女をエリの側室として公式に発表することになりますが、実質的には私の側室にもするのですよ。
その為にも私達は、もっと親しくならなければならないのです!
……そう思って食堂に戻ってくると、カナウが私の側室になることになっていました。
「姫さん、あたしも姫さんの側室になるからな!
いいよな!?」
……おやぁ?
私がママの方を見ると、
「非公式なので、カナウの好きなようにさせてあげなさい。
仲間はずれにしたら可哀想でしょ?」
と、言ったのです。
前世で先代を可愛がっていた所為か、2代目のカナウにもママは甘いのです。
でもだからと言って、娘の嫁にまでしますか!?
う~ん、カナウですかぁ……。
嫌いではないけれど、半分姉妹みたいに育ってきたので、恋愛対象として見たことはないのですが……。
でも……、
「……」
カナウが期待に満ちた目で、私を見ているのです。
もう無いはずの尻尾を、ブンブンと振っている幻が見えるようですね……。
某消費者金融のCMに出てきたチワワを思い出すのです……。
……ま、いいか。
カナウは今までも、そしてこれからも家族であることは変わりがありませんし。
「分かりましたから、これからもいい子にするのですよ~」
「きゅう~ん」
と、私はカナウの頭を、ワシャワシャと撫で回したのです。
嬉しそうに目を細めて、仔犬のような甘い声を出しているカナウを見ていると、癒やされますねぇ……。
ただ、今はカナウだけ構っている場合ではありません。
アイリス様を実質的な私の側室にする為にも、積極的に動かなければ……!
「カナウ、私はこれからアイリス様と大事なお話があるので、暫くの間、二人きりにしてくださいね。
言うことを聞いてくれたら、後でたっぷりと毛繕いをしてあげますから」
「お、おう……分かったぞ。
気合いが入っているな……!」
多少威圧を込めてお願いしたので、カナウも理解してくれたようです。
それではアイリス様攻略作戦の始動です!
そんな訳で私とアイリス様は、地底温泉へ行くことにしました。
お互いに一糸まとわず、何も隠さない状態での交流は、更に親密度を上げることになるはず……。
で、脱衣所です。
同性なので、好きな人の着替えを合法的に見ることができのですよ。
あ、お着替えを手伝いましょうか?
私は基本的に1人で着替えますが、王侯貴族は召し使いに手伝わせるそうですね。
ならばアイリス様も……!
「あっ、大丈夫ですわ。
学園の訓練の時、体操着に着替えるのも1人でやっておりますし……」
「そう……ですか」
それは残念です。
好きな人の服を脱がせるのって、かなりえっちなプレイだと思ったのですがね……。
おそらくアイリス様と私が、キスやその先のことをするのは、もっと先の話になるのでしょうから、着替えくらいは堪能したかった……。
結果、現在の私は、アイリス様の着替えを、見・て・る・だ・け~状態です。
はあぁ……アイリス様は私よりも2つ年上ですが、子供体型の私と比べると、既に大人の女性らしい丸みや膨らみがあって羨ましいのです。
「あの……殿下。
あまり見られると恥ずかしいのですが……」
たぶんアイリス様は、入浴も召し使いに手伝ってもらっているはずです。
だから裸を人から見られることには慣れていると思うのですが、それでも視線が気になるのは、私のことを意識してくれているからなのでしょうかね?
「済みません……。
あまりにもアイリス様が美しかったもので……」
「そんな……殿下の方こそ、お綺麗ですわ……」
はうっ、好きな人からそう言われると、凄く照れるのです。
お世辞でも嬉しい!
ただ、恥ずかしいという気持ちも湧いてきて、顔が熱く火照るのを止めることができません。
そして私の反応を見て共感してしまったのか、アイリス様も顔を赤く染めて黙ってしまいました。
あ、ああ……!
この空気はなんだか、いたたまれませんね。
「さ、こちらへどうぞ!」
私達は、そそくさと浴場へ向かいました。




