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66 もう一つの告白

 ブックマーク・☆での評価・感想をありがとうございました!

 (わたくし)が驚いた顔をしていると、殿下は失言を誤魔化すかのように咳払いをして、落ち着いた態度を取り(つくろ)いましたわ。

 そして彼女が口にしたのは、


「アイリス様……それはいけません。

 エリは私のことを好いていて、男嫌いの私に近づく為だけに女装までしているのです。

 あなたの想いが報われるとは思えないのです」


 確かな否定でした。

 しかしだからと言って、簡単に(あきら)めることができるかというと、人の心はそんな簡単にはできていません……。


「それでも……私は、何もしないまま諦めたくはないのですわ……!

 せめてエリ様へ告白することだけは、許してはいただけないでしょうか?」


「…………」


 そんな私の言葉を受けて、殿下は固く口を結んで、下を向きました。

 なにかを葛藤をしているかのように、見受けられますわね……。

 だけど……やがて彼女は、意を決したような表情で顔を上げました。


「そうですね……。

 仮に実を結ばなくても、挑戦することには意味があるのです。

 ……だから私も告白しますが、私はアイリス様のことが好きです。

 エリよりも私を選んでくれるという可能性は……ありませんか?」


「え……」


 一瞬、殿下の言葉を冗談か何かなのではないかと思いました。

 しかし殿下は頬を真っ赤に染めて、恥ずかしそうに上目遣いで私を見ていましたわ。

 その姿から、これが悪ふざけでもなんでもない、本気の言葉だということが分かります。

 あのいつも超然としている殿下が、こんなに可愛らしい乙女な表情を見せるとは想定していなかったので、完全に不意打ちでした。

 

 実際、そのあまりの可愛さに、思わず抱きしめてしまいたいという衝動が湧いてきましたが、さすがにそれは踏みとどまりましたの。

 私が好きなのはエリ様なので、迂闊なことはできません。


 いずれにしても、殿下に対してなんと答えたらいいのか分からずにいたら、殿下は──、


「答えは今すぐではなくてもいいのです。

 どうか考えておいてください」


 と、言い残して、部屋から出て行きました。

 暫くして、「逃げた」──と、殿下の行動の意味を察しましたが、仕方がありませんわね……。

 私が同じ立場でも、同じ行動をとったのかもしれませんもの……。




 その後、(わたくし)はエリ様に告白しましたが、その想いは届かず、かといってエリ様や殿下の想いが実ることもなく、誰もが得をしない結果に終わりました。

 ところが突然現れたアリゼ様には折衷案があるというので、その詳しいお話を聞く為に、我々は食堂へと向かいましたの。


 するとそこには既に5人の先客がおり、食事を摂っているようでした。

 まずは若い女性と、彼女より年上に見える女性が、向かい合って座っています。

 そして年上の御方のその隣には、確か殿下からグラスと呼ばれていたメイドが座っておりましたわ。

 あら……全員が似たような顔つきをしていますわね……。


 ──って!?


 え、まさかクラリス女王陛下と、クリス王太后陛下!?

 なんでこんなところにぃ!?


「あら、ようやく来たわね、アリゼ。

 面白い話があるって、なんなのよ?」


「アリゼ様~、本日はお招きいただき、ありがとうございますぅ」


「はい、今から始めますので、少し待っていてくださいね」


 女王陛下と恋人同士だというアリゼ様が気安く会話しているのはまだいいとして、王太后陛下がアリゼ様にへりくだっているって、凄い光景ですわ!?

 嫌でもこの国の支配者がアリゼ様であることを、思い知らされますわね……。


「あの……陛下には、今ご挨拶をした方がよろしいのでしょうか?」


 私は殿下に尋ねました。

 今陛下はアリゼ様と歓談中なので、割って入る訳にはいきません。

 しかし陛下の存在を無視するのも問題なので、何にも優先して挨拶した方がいいような気もしますわ。


「ああ、後でもいいですよ?

 クラリスお姉ちゃんもお忍びで来ているので、堅苦しいことは好まないのです」


「あら……お母様なのに、そんな呼び方を?」


 殿下は一応陛下の養子なので、そのような呼び方をしているとは意外でした。


「あ……公式の場で別ですが、プライベートではすぐ近くに実の母がいるのでややこしいのです」


 と、照れたように顔を赤らめる殿下は、本当に可愛らしいですわね。

 これでエリ様の存在がなければ、殿下からの愛の告白に、私は揺らいでいたのかもしれませんわ……。

 ……別に女の人が好きだった訳では、なかったはずなのですがね……。


 それと女王陛下達から少し離れた席に、エリ様がいたという孤児院の経営者もおります。

 たしかキエル様とマルガ様でしたか……。

 2人はSランクの冒険者らしいのですが、マルガ様を膝に載せてのんびりとお茶を飲んでいるキエル様の姿を見ると、とてもそんなに凄い人には見えません……。


 でも、とても(なご)む光景ですわね。

 というかマルガ様の後頭部が、キエル様の胸に半分埋まっていて、物凄く心地よさそうです……。


 ただ、彼女達は、何の為にここにいるのでしょうか?

 それが分かりません。

 エリ様の関係者だからですかね……?


「さあ、全員席についてください。

 これから今後のことについて、話をしましょう」


 あ……いよいよアリゼ様のお話が始まるようです。

 一体彼女は、私達の恋にどのように決着を付けるつもりなのでしょうか?

 ……普通の結末にはならなさそうで、なんだか怖いですわね……。

 今年の更新は、明日で最後かなぁ。

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― 新着の感想 ―
[一言] あれ?アリゼさんが無理矢理エリーさんを女装してレイさんの側に置いたじゃなかったけ? ちょっと忘れたかも。 うわぁ、関係者全員を揃っている!?これだけの大人数なら、確かに恥ずかしくて怖いかも。…
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