6 第三形態
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え……どゆこと?
あの恐竜に追われて、ゴブリン達は北からこの土地に逃れてきたっていうの?
じゃあ、ゴブリンの南下に、私は無関係じゃん!
責任を取る必要なんてなかった……。
それにしても、恐竜って……。
さすが異世界、まだ絶滅していないのか。
しかし恐竜とは言っても、『●ュラシック・パーク』とかに出てくるような、前傾姿勢のティラノサウルスタイプではなく、古い恐竜図鑑に載っているような、直立して尻尾を地面に引きずっているようなタイプだ。
つまり●ジラみたいな怪獣タイプ。
あるいは、竜の仲間なのかもしれないが……。
ん……?
ゴ●ラ……?
…………そういえば2~3年前に、この恐竜と似た顔の、4足歩行のオオトカゲを取り逃がしたことがあるような……。
思いのほか耐久力が高くて、どうしても殺しきれなかったんだよなぁ。
強い能力を持っていそうだったから、乗っ取りたかったのに……。
結局、そいつには逃げられちゃったんだけど、そいつが成長してこの恐竜になった可能性も……?
つまりこれ、第三形態か?
シン・恐竜?
となると、この恐竜が住処から逃げ出す切っ掛けを私が作って、結果的にゴブリン達の住む土地が襲われたったことも……?
……やっぱり私の責任じゃん!?
あかん……。
私って、ほんとバカ。
今度こそ責任をもって、この恐竜を倒さなければ……。
とりあえず人間との戦闘を中断して、ゴブリン達の安全を確保しよう。
恐竜は今にもゴブリン達に追いついて、襲いかかろうとしていた。
あ、元ゴブリン王が前に出て、仲間を庇おうとしている。
一見勇ましい姿だが、恐竜から比べれば、コアリクイが威嚇のポーズをしているくらい可愛く見えてしまう。
オイオイオイ、死ぬわあいつ。
だが、その心意気は見事なり。
これはなんとしても、生き残ってもらわねばならないな。
丁度いいから、私はここでゴブリン達の後顧の憂いを断ってから、消えるとしよう。
私は全力で走って、ゴブリン達と恐竜の間に割り込む。
そして人間が相手の時とは違い、手加減無しのパンチを恐竜の顔面に叩き込んだ。
「ガァァァァッ!」
私の一撃を受けて、恐竜の身体が傾き、ゆっくりと倒れていく。
でも、乗っ取りが発動していないので、当然まだ倒せてはいない。
以前戦った時も、この程度では倒しきれなかった。
だが、今度は逃がすつもりはないぞ。
いや、その前にゴブリン達を、逃がさなければならない。
「王様っ、このままもう1度北へ向かえ!」
「王……ハ、アナタダ……」
「私は、こいつを仕留める。
勝っても負けても、この身体は死ぬから、王座は返上するよ。
だからこれは最後の命令。
もう2度と人間に関わらないで、平和に暮らしなさい!」
「シカシ……」
「いいから、行けっ!!」
「……ッ!!
ドウカ、ゴ武運ヲ……!!」
私の怒号を受けて、ゴブリン達は再び北へと向けて動き出した。
私はそれを見守っていたが、その間に倒れていた恐竜が復活した。
腕が短いので起き上がることには苦労するのかと思いきや、尻尾を器用に使って大地に立つ。
私は思わず感心してしまったが、いつまでものんびりと見ている場合ではない。
ここで恐竜は確実に倒すよ!
そうしなければ、またゴブリン達を追うかもしれないし、人間の町が近いからそちらを襲う可能性もある。
あ、そういえば人間達は……まだ麻痺や金縛りが解けていないなぁ……。
動けるはずの者達も、腰を抜かしているのもいて、こりゃ避難は無理そうだ。
彼らにも被害がでないように、気をつけて戦わなければならない。
となると、短期決戦だな!
一気に片を付けるか。
……というか、アレ?
なにやら恐竜の口の中が、光り始めているんですけど?
うおっ、まぶしっ!?
待って、まさか熱線を吐くの!?
放射線流なの!?
マジで怪獣かよ!?
ちっ、あっちも短期決戦を狙っているのか!?
いずれにしても、このまま熱線を吐かれたら、この辺一帯が火の海になるなんてことも有り得る。
そうなったら私はともかく、人間達は全滅しかねない。
「撃たせるかぁっ!!」
私は跳躍し、恐竜の腹に蹴りを入れた。
これは先程の拳の一撃よりも、はるかに威力があるはずだ。
これで熱線がキャンセルされればいいが……!
しかし──、
「!!」
恐竜の身体は多少揺らいだだけで、体勢を維持している。
私の攻撃を予想して、あらかじめ全身に力を入れることで踏みとどまった!?
意外と知恵が回るじゃないか……!
そして私が着地して、次の動作に移るまでの一瞬の隙を狙ったかのように、恐竜は口から熱線を吐き出した。
ひえっ!?
避けられないっ!?
まともに受けたら死ぬ!?
いいや、やらせはせん、やらせはせんぞぉ──っ!!
次の瞬間、眩い閃光と衝撃が私を飲み込んだ。