62 地の奥底で目覚める
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私ことエリが目を覚ますと、そこはまだダンジョンの中であるようだった。
最下層の仮眠室っぽいけど……。
あれ……? なんで私は眠っていたのだろう?
私はアイリス様達と一緒に、ダンジョンへ入って──、
「やあ、目が覚めたかい?」
突然呼びかけられて、私の思考は中断させられた。
え……? 近くに人なんていたっけ?
私が声がした方を見ると、そこにはあのニナとかいう女冒険者がいた。
「あなたは……!
あっ、あなたが私達に薬を!?」
眠る寸前のことを思い出す。
ぼんやりとしていてハッキリとはしないが、確かリーザ様がいきなり倒れたはずだ。
「ふっふっふ、その通り。
君が眠っている間に、公爵令嬢の身柄は預からせてもらった……!」
「そ……そんなっ、アイリス様をどうするつもりなのですかっ!?」
「それは勿論、人質として女王陛下との交渉材料に使わせてもらうよ」
くっ……しまった。
私がしっかりと、アイリス様を守らなければいけなかったのに……!
「そして君も、人質として役に立ってもらおう。
それとも奴隷として、他国に売り飛ばしてやろうか?
あははははははは───ガフッ!?」
「!?」
突然、ニナの笑い声が止まった。
何者かの手刀が、ニナの脳天から眉間の辺りまで食い込んでいる。
こ……これは死……!?
しかしそれでも、ニナは平然としていた。
「酷いなぁ、いきなり岩山両●波は無いんじゃないの?」
「あなたこそ、なにを馬鹿なことをしているのです……?」
そう答えたのは姫様だった。
いつの間にこの部屋へと、入ってきたのだろう……!?
「いや、この子が巻き込まれていた状況を、説明してやろうと思ってね」
と、ニナのへこんでいた頭が元に戻っていく。
それどころか、髪がピンク色に変わり、顔や背丈もまったく別の少女へと変わっていった。
え……どうなってるの、これ!?
「初めまして……じゃないけど、こっちの顔では初めましてかな。
アイだよ」
「え……誰ですか?」
その名前を聞いても分からない。
「不肖の姉なのです……」
「姫様の!?」
え……姫様にお姉さんなんていたんだ……?
ということは、メイド長の娘さん……?
だとすると、この娘も只者ではないのだろうな……。
「あの……私は一体……」
私の問いに、姫様が答える。
「……今姉が演じたことが、まさに起ころうとしていたのです。
あのリュミエルとかいう、男爵家の息子があなたを狙っていました。
姉はその現場を押さえる為に、ニナに擬態して潜入していたのです。
まあ、リュミエルの関係者は一網打尽にしたので、もう安全ですよ。
あなたが眠っていた3日間で、尋問などの処置も済んでいます」
そ……そんなことが。
「って、また数日も眠っていたのですか、私!?」
「まあ、私が作った毒は強力だからねぇ。
解毒して無理矢理起こしても良かったんだけど、捕縛やら尋問やらとバタバタしていたから、君達のことは後回しにされちゃった」
「そ……そうですか……」
それって、私は戦力外だって言われているようなものだよね……。
確かに私では、人の捕縛や尋問は難しかったかもしれないけれど、雑用くらいならできたのに……。
私は少し情けなくなった。
「それでは、アイリス様とリーザ様は……!?」
「リーザなら、そこで眠っているのです」
「え……?」
姫様が指さした隣のベッドにリーザ様の姿は無かった……と思ったら、床に落ちてもなお眠っていた。
寝相……凄いな……。
というか、床が冷たくないの?
「それでは……アイリス様は?」
「アイリス様は、ある意味大丈夫ではないのです……」
「えっ!? 怪我でもしたのですか!?」
私は慌てたが、実際にはそんなことはないらしい。
「大丈夫だよ、私が守っていたんだし、怪我は無いよ」
と、アイさんは言うが、姫様は難しい顔をしていた。
「しかし、ややこしいことになったのです……。
まあ、後で会わせるので、覚悟をしておきなさい」
「は……はい」
えっ、覚悟って何の!?
アイリス様は、どうなってしまったんだ!?
私は困惑したが、それに拍車をかけるようなことが続く。
「それとエリに、後輩が増えましたよ。
入ってくるのです」
という姫様の呼びかけを受けて部屋に入ってきたのは、6人のメイド達だった。
コンスタンスが、他の5人のメイドを引き連れきたのだ。
5人の中には、知っている顔があった。
これはニナさん……?
ああ、こっちが本物で、私が知っているのはアイさんの擬態だったってことなのか。
そして他の3人は、まったく同じ顔だった。
年齢も身長も同じくらいで美人ではあるのだが、なんだか特徴があまり無いような気がする。
三つ子……というよりは、量産された人形のような印象だ。
でも最も問題なのは、最後の1人だ。
可愛らしい女の子だけど、何処となく顔に見覚えがあるような……。
えっ……もしかして……!?
「ひっ……姫様……。
この人達はもしかして……!?」
「ええ、あなた達を襲った者達ですよ」
やっぱり!
つまりこのメイドは、変わり果てたリュミエル達だったのだ。
アリゼさん、おっさんを女体化させることには気が乗らず、テンプレを作って簡単に量産するというスキルの使い方を生み出した模様。
明日は定休日です。




