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57 暗 躍

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「えっ、リーザ様!?

 何者かから攻撃を!?」


 (わたくし)はリーザ様に駆け寄りつつ、エリ様の方を見ました。

 しかしエリ様は、


「い、いえ、索敵には何も反応が無いので、攻撃ではないと思います!」


 と、攻撃を否定しました。

 それでは一体、何がリーザ様を……!?


 私はリーザ様の状態を確認してみましたが、怪我をしている様子はなく、どうやら眠っているだけのようですわ。

 何故(なぜ)いきなり眠って……?


 まさか薬……!?

 だとしたら心当たりは、今朝ニナ様にいただいたパフェの中に仕込まれていたとしか……。

 でも、念の為にエリ様が、解毒や浄化の術をかけていたはずですが……!

 それでもやはり、薬しか考えられませんわ。


「エ、エリ様!

 これは薬かもしれません!

 リーザ様に解毒の術を……っ!!」


 と、私がエリ様に呼びかけると、


「エ……エリ様……!?」


「うっ……うう……」


 エリ様がふらふらと身体を揺らしていました。

 こちらにも薬の効果が──!?


 私が慌ててエリ様の身体(からだ)を支えようとすると、エリ様は脱力して私に寄りかかってきました。

 あっ……いい匂い……とか思っている場合ではなくっ!!

 私の腕力では、エリ様の身体を支えきれないので、ゆっくりと床にを寝かせます。


 ……ど、どうしましょう……。

 このままでは私もどうなるのか分かりませんし、救難信号を出した方が良さそうですわね……。

 しかしその魔道具は、エリ様の空間収納の中です。

 他人の空間収納から物を取り出す技術って、確か発見されていないはず……。

 

 これでは助けは呼べません。

 しかし私だけでは2人を運ぶことも、戦うこともできませんし、一体どうすれば……。

 このまま魔物が現れないことを祈りつつ、2人が目覚めるか、誰かが通りかかるのを待つしかないのでしょうか……?


 まあ、エリ様の同僚が巡回しているらしいので、それを待つのが良さそうですわね……。

 しかしそれよりも先に、遭いたくない人が私の前に現れました。

 

「あれぇ~?

 なんであんたは平気なんだい?」


「ニ……ニナ様……!」


 私達に薬物を盛ったと疑わしき人物です。


「おかしいなぁ……?

 ちょっとやそっとの解毒魔法では無効化できないような、強力な薬を使っているはずなんだけど……。

 あのパフェを食べているところは確認しているし、薬を口にしていない訳ではないんだよね……?

 まあ、ダンジョンに入ってから効き始めるよう、遅効性に調整しておいたから、効きが遅れているだけなのかな……?

 それとも、状態異常を無効化するスキルを持っている……?」


 確かに私には、昨日も幻術が効いていませんでしたし、何らかのスキルはあるのでしょう。

 まさか毒にも効果があるとは思いませんでしたが……。

 常に暗殺の危険がある王侯貴族ならば、喉から手が出るほど欲しいスキルでしょうねぇ……。


 でも、今はそんなこと、どうでもよいのです!

 問題なのは、ニナの目的です。


「あなたは、何故(なぜ)こんな……っ!?」


 そんな私の問いに、


「いやあ、依頼があってねぇ……」


 と、彼女は後ろに視線を移しました。

 そこには、4人の人影があります。

 その内の3人は、荒くれ者のような風貌で、冒険者と言うよりは盗賊か何かのように見えますわね……。


 しかし残りの1人は、そんな男達と一緒にいるのが不釣り合いに見える、貴族風の少年でした。


「これはアイリス様、ご機嫌はいかがですかな……?

 本来ならば昨日のうちに挨拶しようと思っていたのですが、何故か見失ってしまいましてね」


 そう語りかけてきた少年の顔は……何処かで見覚えがあるような気もしますが……分かりません。


「誰ですか!?」


 そんな私の問いに、少年の顔が(わず)かに引き()りました。


「……公爵令嬢様は、下級貴族になど興味がありませんか?

 あなたと同じ学園に通う、ロナイ男爵家の長男・リュミエルと申します」


 そう紹介されても、私にはピンときませんでしたわ。

 正直言って、男の方は苦手ですし、あまり近づかないようにしています。

 そして彼が、こんなことをする理由もよく分かりませんでした。


「何故、こんな……」


「そこで眠っているメイドが、平民の分際で私に無礼を働きましてね。

 だから罰してやろうと思いまして……」


「馬鹿な……っ!

 それが王女殿下に弓引く行為だと、理解できないのですか!?」


 王家に雇われたメイドを、たかが男爵家の者が明確な意図を持って害するなど、反逆罪に問われてもおかしくない所業ですわ。

 これが表沙汰になればこの男だけではなく、連帯責任としてロナイ男爵家そのものがお取り潰しになる可能性すらあるでしょう。

 しかし彼は平然としております。


「だけどダンジョンの中で、魔物に襲われてパーティーが全滅して行方不明になる……。

 そう珍しい話でもないでしょう?」


 と、彼は笑いました。

 つまり私やリーザ様も、エリ様と一緒に処分するつもりだということですわね……!?


「くっ……!!」


 勝ち目があるとは思えませんでしたが、私は攻撃魔法を発動させようとしました。

 しかし──、


「おーっと、大人しくしていてねー!」


「あっ!?」


 次の瞬間、私はニナによって、背後から羽交い締めにされていました。

 私の実力では、抵抗することすら、許してもらえないようですわ……!!

 明日は定休日です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 意外です!ポンコツのリーザさんは兎も角、搦手だとしてもエリさんは引っ掛けるスペックじゃなさそうだと思いました。 公爵や伯爵は兎も角、男爵家の長男如きで犯行するのは知力ゼロとしか思えない。そし…
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