47 眠っていた力
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「お……おお──っ!!
おおぉぉ──っ!!」
私、リーザ・アトロポスは、喜びのあまり声を上げた。
まさに雄叫びのごとし。
だがそれも当然なのじゃ。
なにせほぼ初めて、魔法の発動に成功したのじゃから。
私の指先には、蝋燭のように炎がともっておった。
「凄いのぉー、凄いのぉぉーっ!!
エリ殿、おぬしのスキルは、素晴らしいのじゃ!!」
エリのスキルは、他者から吸収した力を、別の他者へ与えることができるという。
このスキルを使えば、常時魔力切れのような状態の私でも、魔法を発動させることができるのじゃよ。
今まで何をやっても駄目だった私としては、喉から手が出るほど欲しいスキルじゃのぉ……。
いや、私自身がそのスキルを持つ必要はない。
要はエリが、私の傍にいればいいのじゃ。
「のぉ、エリ殿!!
我が教団に来ぬか!?
ナンバー2の座を約束するぞ?」
「いえ……私は姫様のメイドですので」
「そうですわ、リーザ様。
独り占めをしようとしても駄目ですのよ?」
ぬぅ……聖女様2号とは争いたくないのぉ……。
しかしエリが断ってくるのはともかく、なんでアイリスが口を出してくるのじゃ?
もしやこやつも、エリを狙っておるのか?
今後アイリスの動きは、注意しておかねばならんのぉ……。
「そもそも教団のナンバー2って、リーザ様のことなのでは……?」
「うむ、聖女様が実質的なトップじゃから、そうなるのぉ……」
「教祖の座なんて、私いらないですよ!?」
エリはそう言うが、案外カリスマはありそうなんじゃがな……。
その後私は、実戦でも魔法を使ってみることにしたのじゃ。
今、目の前に5匹のオークがおる。
狙いはこやつらじゃ。
先程魔法を発動した時の感覚じゃと、少量の魔力でもそこそこの炎になった。
しかも無詠唱でも発動はできたのじゃ。
私、魔力さえ足りていれば、魔法の才能があったのじゃのぉ……!!
今度は自分が何処までできるのか確かめる為に、思いっきりやってみるぞよ!
「いくのじゃ!!」
魔法を発動したその直後、視界が赤く染まり、我々に迫っていたオーク達を炎が飲み込んだ。
「……!?」
「ほ……わ?」
我々は暫し呆然としておった。
なにせ、目の前にいたはずのオークが、全て黒焦げになっておったのじゃからな……。
……え?
これ、私がやったの?
私……こんなに力があったのか。
魔力さえあれば、これだけのことができたのか……!
「う……うあああぁぁぁ……」
いつの間にか、涙が溢れ出して止まらなかった。
「あああぁぁぁぁ……!」
もう嬉しいのか悔しいのか、よく分からないのじゃ……!
こんなに力があると分かっていたら、どうにかして魔力を増やす努力をしていたと思う。
それをせずに、時間を無駄に使っていたことが、物凄く勿体なく感じたのじゃ……。
だからもっと早くエリと出会っておったら……とも思う。
うぬぅ……やはりどうにかして、エリを手に入れることができぬかのぉ……。
なんにしてもエリがおれば、ダンジョンの攻略も余裕じゃのぉ。
ふっふっふ……もうアイリスには、なにもやることがないのではないか?
「よし、次の戦闘も私に任せるのじゃ!
今度も一撃で敵を葬ってやるぞよ!」
「いや……リーザ様は、もうちょっと遠慮してください」
しかし何故かエリに窘められた。
「なんでじゃ?」
「あんなに黒焦げにされたら、素材として使い物になりません……」
「あ……」
まだ暫くの間は、魔法の威力調整に苦労しそうなのじゃ……。
その後、ダンジョンでの攻略は順調に進んでいったが、慣れない戦闘の繰り返しで、そろそろアイリスは限界のようじゃの。
エリの能力で体力の供給も受けておるのじゃが、精神的な疲労はどうしようもないようじゃ。
お嬢様は軟弱じゃのぉ。
まあ、私も疲れてきたし、どこか良い場所を見つけて、キャンプをしようということになったのじゃ。
だがその前に、我々は奇妙な物を発見し、キャンプは後回しすることになった。
「宝箱……?」
袋小路になっていた通路の奥に、それがあったのじゃ。
それは幅が1mほどある長方形の箱で、貴重品などを入れる為に使う鍵付きの箱じゃった。
「え……遺跡ならともかく、ダンジョンに宝箱があるなんて話は聞いたことがない……」
エリはそう言ったが、ダンジョンが拠点のメイド隊が言うのならばそうなのじゃろうな。
確かダンジョンの床に置かれた物体は、ある程度の時間経過でダンジョンに吸収されるという話じゃったか。
となると、この箱が置かれてからまだそんなに時間は経過していないはず……。
「これは聖女様が設置したものではないのかのぉ?」
「……!
つまりこの実習の、隠された試練の1つということでしょうか?」
「そうかもしれないですね。
しかしだとすると……どうすればいいのか……。
無視すべきなのか……。
ただ中には、何か良いものが入っている可能性もあります。
それこそ地上に持っていけば、それだけで好成績を貰える素材とか……。
だけど……」
「そんなものが、簡単に手に入るとは思えませんわね……」
つまりこの宝箱を開けると、想定外の危険が生じるかもしれないということじゃな。
でもあの聖女様なら、人が死ぬような罠は仕掛けぬじゃろう?
予想外のことが起こることかもしれないが、命に関しては大丈夫じゃないかのぉ?
そんな訳で、我々は宝箱を開けることにした。
……ん?
女神様から「神竜」という謎のお告げがきておるが、まあ問題は無いじゃろ。
「神竜」が分からない人は『FF5』をプレイしてください。
明日は定休日です。




