表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

234/392

41 常時賢者モード状態

 ブックマーク・☆での評価をありがとうございました!

 キャスカさんとリチアさんは、折角偶然会ったのだから──と、私と同じテーブルに座った。

 

「え~と、デートの邪魔にならないんですかね、私?」


「いいんですよ、いつも2人でいるのですから。

 たまには……ね?」


 と、キャスカさんは、横にいるリチアさんの方を上目遣いで見た。

 この2人は学院の近くに家を購入し、そこで一緒に暮らしていると聞く。

 いつも一緒だからこそ、たまには変化が欲しいということなのだろうか。


「うん、気にしなくてもいいんだよ。

 君もあの(・・)レイチェルのお世話は大変だろう?

 その仕事の話を聞かせてくれよ。

 ここの支払いは私達がするからさ」


「え……悪いですよ。

 私だって充分なお給金をいただいているので、自分で払いますから」


「はは……これは失礼した。

 さすがに王女様の付き人となると、収入も私とは違うか。

 でもキャスカだって、女王様から安くはない給金をいただいているのだから、本当に気にしなくてもいいんだよ?」


「いえ、大丈夫ですよ。

 むしろ使い道が無くて、困っているくらいなので」


「ああ……陛下から、サンバートルで殿下を守る為に活躍したと聞いています。

 確かに不要な申し出でしたね」


 キャスカさんは、私が褒賞金のおかげでお金に困っていないことを見抜いたようだ。


「いやぁ……あれは力及ばずに、お恥ずかしい限りです」 

 

 ともかくこれで2人の食事が終わるまでは、少なくとも帰れそうにない。

 それじゃあ私も手持ち無沙汰なので、何か注文しておこうか。


「すみませーん、紅茶とケーキのセットをお願いします」


 周囲からは「まだ食べるのか!?」というような目で見られたけど、気にしないことにする。

 なお、二人はステーキセットを注文していた。

 リチアさんはともかく、見た目が小さなキャスカさんも結構食べるらしい。

 

 キャスカさんは学院の卒業生で、現在は女王様の親衛隊をしていて、格闘術の達人であるという。

 彼女とは姫様と一緒に城へ行くと、たまに顔を合わせる機会があるけれど、外見は私よりちょっと年上くらいの女の子だ。

 

 しかしそんなキャスカさんの実際の年齢は、成人扱いされる15才をとっくに過ぎているらしい。

 ……ちょっと意味が分からないんだけど、成長してもメイド長(アリゼ様)のスキルで元の幼い姿に戻してもらっているそうだ。


 確かメイド長は、私のことを完全に女の子にすることもできると言っていたから、まあそういうこともできるのだろう……とは思うのだが、頭が理解を拒むなぁ……。


「うん、なかなか美味しい肉だったね」

 

 そう満足そうに食事を終えたのは、リチアさんだ。

 キャスカさんが幼い姿を維持している原因は、恋人である彼女の趣味なんだとか。

 彼女は学院で教職をしていて、メイド長とは古い付き合いらしいけれど、メイド長(いわ)く、昔は子供にとって危険人物であったらしい。


 だけど今は凄く落ち着いていて、(さわ)やかな雰囲気を(かも)し出しており、そんな風には見えない。

 むしろ人生に少し疲れた老人のように、枯れたものすら感じさせた。

 年齢的にはキャスカさんの母親でもおかしくないけれど、さすがにその年齢でそんなに老け込むはずもない。


 それどころか逆に、肌を見れば瑞々(みずみず)しくてハリがあり、年齢以上に若く──あっ!


「リチアさんのお肌は、綺麗ですね。

 まるで私達と同じくらいの年齢に見えます」


「あ~……うん。

 キャスカがいつも手入れをしてくれるからね……」


 リチアさんは、少し気まずそうに言った。

 ああ……やっぱりメイド長秘伝の、マッサージ術を受けているんだな……。

 確か女王様もマッサージ術の使い手であるらしいので、その親衛隊のキャスカさんならば習う機会はいくらでもあるだろう。


 で、そのマッサージ技術でキャスカさんは、リチアさんを完全に籠絡した……!?

 あれは本当に美容に良いらしいけれど、その一方では魔王軍四天王のグリーグスから精神支配を受けて凶暴な吸血鬼と化していたはずのコンスタンスをも手懐けるくらい強烈な効果があるようだ。

 人間であるリチアさんが、抵抗できるとはとても思えない。


 つまりこの母娘(おやこ)のような年の差カップルは、一見立場が弱い小さなキャスカさんの方が主導権を握っているのかもしれないのだ。

 たぶん今のリチアさんは、キャスカさんの相手をするだけで精一杯で、他に意識を向ける余裕が無いのだろうな……。

 だから何処となく覇気も無いし、少し疲れているようにも見えるのだろう。


 結果的に危険人物を抑え込んでいるのならば、それは良いことのようにも思えるけれど……。


「あ、リチアさん。

 口元にソースがついてますよ」


「あ、ああ……。

 ありがとう……」


 キャスカさんは、ハンカチでリチアさんの口元を拭った。

 こうして見ると、貞淑な妻のように見えなくもない。

 しかし実際の力関係は、間違い無くキャスカさんがリチアさんの手綱を握っているのだと思う。

   

 なんだか私は、キャスカさんが急に怖い人であるかのように思えてきたよ……。

 そもそもリチアさんの好みに合わせて、自分の成長を止めている時点で愛が重い……。


 こういうのを客観的に見ると、私が姫様の為に完全に女の子になるという選択肢は、やっぱりどうかと思うなぁ……。

 いや……女装している時点で、どうにかしているのは確かなんだけど……。


 そんな訳で、なんだか色々と考えさせられた休日だった。

 本当は怖い合法ロリ。


 なお、明日はお休みの予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] リチアさんを抑え込めるとは怖い!?キャスカさんはヤンデレ程に足を踏み入れた気がしますw あの麻薬より凄まじいマッサージが、威力を維持するままに広めるモノですか?これも別の意味で怖いです!?…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ