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38 大量の経験値

 ブックマーク・☆での評価・感想をありがとうございました!

 アイリス様と別れた後、姫様に対して何人も挨拶してきたが、その中には思わぬ人物の姿もあった。


「おはようございます、レイチェル殿下。

 本日もご壮健そうで何よりです」


 姫様は相手の姿を見て、顔から表情が無くなった。

 どう見てもご機嫌斜めだ。

 だけどそれも仕方が無い。

 語りかけてきたのは、以前私が放り投げてしまった男だったのだから。


 確か名前は、ロナイ男爵家の長男・リュミエルだったっけ……?

 学園内で女生徒に性的行為をしている疑いで姫様に睨まれていたはずだけど、それでも話しかけてきたその顔面の皮の厚さはいかほどなのだろうか?


「ああ……あなたですか。

 あれ以来、貴族の模範となる品行方正な態度を心がけています……ね?」


「勿論でございます。

 (わたくし)は忠実なる王家の(しもべ)──。

 決して殿下の期待は裏切りません」


 リュミエルはそう言うが、その言葉は非常に嘘くさかった。

 なんというか、言葉に心がこもっていない感じがする。

 それは姫様にも分かるのか、表情が消えているはずの顔に、何故か凄みが増してきた。

 これは……殺気とでも言うのだろうか。


「……そうですか。

 その言葉、しかと忘れぬように」


 そして姫様は、リュミエルに背を向けて歩き出す。

 私とカナウ先輩もその後に続いた。

 途中で振り向くと、リュミエルがこちらを睨んでいる姿が目に入り、慌てて前を向く。


 あれは……やっぱり私のことを逆恨みしている!?

 そんな私の認識は、どうやら当たっていたらしい。

 事実姫様は、リュミエルに声が届かぬほど距離が離れた頃に、今まで我慢していた不満を吐き出すかのように言った。


「まったく……嘘ばかりなのです!

 私がオーラ感知で嘘を見破ることができるとは、思ってもいないのでしょうね」


「えっ!?」


 姫様って、そんなこともできるの!?

 これは姫様に対して、今後は絶対に嘘をつくことができないな……。


「しかし、よくも姫様の前に顔を出せましたね、あの男……。

 普通はほとぼりが冷めるまで、姿を見せないものだと思うのですが……」


「むしろ失態を犯したからこそ、積極的に私に関わって取り入ろうと考えているのです。

 だけどあの男は、内心では納得していません。

 おそらく親などの上位の者から、無理矢理そのように振る舞えと、指示をされているのでしょう。

 

 男爵家には、次に問題を起こしたら廃嫡(はいちゃく)も考慮しろ──と、脅しをかけているので、彼の立場もかなり悪くなっているはずです。

 しかしあの様子では、心を入れ替えることなど期待できそうにないので、エリとカナウもあの男の言葉を信用してはなりませんよ?」


「は、はい」


「おう」

 

 まあ、姫様に言われなくても、女癖の悪そうな人に関わろうとは思わないけどね……。




 その後、私はいつも通り授業を受けていたのだけど、何か違和感があると気付いたのは、実技訓練の時だった。

 相変わらず武器による格闘戦はまったく駄目だったけど、それでも心なしか試合中に息切れする度合いが以前よりも減ったような気がする。

 しかも病み上がりなのに、全然疲れないな……と、不思議に感じていた。


 そして本格的におかしいと感じたのは、魔法の訓練に入ってからだ。


「……!?」


「おう、やるじゃねーか、エリ!

 前よりも大分マシになったぞ」


 珍しくカナウ先輩が褒めてくれたけど、私は(みずか)らが撃ち放った魔法の威力に驚愕するばかりだ。

 今までの3倍……いや、5倍以上は出ている……っ!?

 しかもそんな大きな魔法を使った後でも、魔力にはまだまだ余裕がある。


 あれっ、私の魔力、凄く増えてる!?


「すっ、凄いですわ、エリ様……!

 魔法の腕は仲間だと思っていましたのに、こんなに差を付けられてしまうなんて……!!

 夏休みの間に、魔法の特訓をしていたのですわね!?」


「え……ええ、まあ……」


 アイリス様の(なげ)き混じりの言葉に対して、私は曖昧に(うなづ)いておいた。

 しかし実際には特訓などをした事実はまったく無く、この急激な魔力の増加を説明することができないので、話を合わせただけだ。

 とにかく自分でも困惑しかない。

 

 私が内心で混乱していると、姫様は──、


「ふむ……四天王という強敵との戦いの経験値が、エリの成長を(うなが)したというところですかね」


と、私の変化をそのように考察した。

 う~ん、確かに死ぬような目に遭っているから、私の中で何らかの変革が起きた可能性もあるけれど、それだけでこんなに変化する?


「それと、エリの中に流れ込んだ私の膨大な魔力が、魔力の通り道を強引に拡張して、結果的に魔力容量と出力が大幅に増えたのかもしれません」


 あ、そっちなら納得感がある。

 確かに身体が破裂しそうになったからなぁ……。

 そういえば姫様の魔力を使って発動した浄化魔法も、結構な威力になっていたから、そういう大きな力を使った時の感覚を、身体が憶えているというのもあるのかもしれないな……。


 いずれにしても、この急激な成長によって何ができるようになったのか、これから検証していかないと。

 転移魔法とかが使えるようになれば、いいんだけどなぁ……。

 この世界にレベルの概念はたぶん無いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] エリーさん、順調にこの前の経験を糧にして強く成りましたぽいですね。 嘘と悪意を認識出来たなら、お姫様パワーで男爵息子を簡単に消せる筈だと思います。物理的はやり過ぎかもしれんが社会的なら適切…
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