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31 反 撃

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 私のことを雌淫魔(サキュバス)扱いというのは、物凄く不本意だ。

 確かに私の「吸精」のスキルは、淫魔のそれと似ている部分はあるのかもしれないけれど、私はその……エッチなこととかしないし……!

 大体私は男なので、せめて呼ぶのなら雄淫魔(インキュバス)に……いや、やっぱりいいです。


 それはともかく私は、「吸精」でグリーグスから可能な限り魔力や生命力などを吸収する。

 ……が、グリーグスが私の能力に気付いた以上、これ以上の「吸収」は難しいだろう。

 すぐにも「麻痺化(パラライズ)」で、また私を無力化しようとするはずだ。


 だけど私も、「吸精」だけでグリーグスをどうにかしようとは思っていない。

 この奪った力を、私自身に上乗せすることが本命だ。


「グヌッ!?」


 私が放った浄化魔法の光を浴びて、グリーグスは掴んでいた私の肩を離した。

 そんな彼の全身は、火傷したかのように変色している。

 私が自力のみで使った浄化魔法ならば、いくら死に損ない(アンデッド)系の魔物である吸血鬼(ヴァンパイア)に高い効果が期待でき浄化る魔法とは言え、グリーグスほどの強大な存在には通用しなかったと思う。


 だけど今は、グリーグスからだけではなく、先程姫様からも吸収した力がある。

 それを上乗せして強化した浄化魔法は、少なからず通用していた。


 私はグリーグスから距離を取って、更に浄化魔法を使い続ける。

 これであいつにトドメを刺せるのかは怪しいけれど、どのみち私にはこれしか手段がなかった。


「ぐうぅぅ……!

 おのれぇぇ……!」


 しかしグリーグスは、浄化魔法に抵抗していた。

 まだ反撃してくるほどてはないけれど、やはりこのままではあいつは倒せない。 


 私は未だにグリーグスと姫様に対して、「吸精」を使うことで力を補充し続けてはいるけれど、直接触れていない相手からだと効率が悪いのだ。

 このまま浄化魔法を使い続ければ、私の方が先に力を使い果たすことは間違いないだろう。

 いや、その前に──、


「なっ……!?」


 グリーグスの姿が、大きく変化していく。

 手の指がのび、その指の間に皮膜が広がっていく。

 それはまさにコウモリの翼だった。

 

 そして彼の顔もまた、コウモリのそれに似たものへと変化し、全身が黒い毛で覆われていく。

 しかし下半身の形状は大きく変化はしておらず、しっかりと太く頑強な2本の足で地面を踏みしめていた。

 それはつまり、「コウモリ人間」とでも言うべき姿だ。


「あ、あれがあいつの正体……!?」


 たぶんそんな私の推測は、間違ってはいないはずだ。

 だけどグリーグスは、弱ったから正体を(あば)かれたのではないと思う。

 むしろ私の浄化魔法に対抗する為に、全力を出す目的で正体を現したのだ。


 その証拠に今のグリーグスが浄化魔法で受けているダメージは、明らかに減っているように見える。

 事実彼は、一歩一歩と着実に私へ近づきつつあった。

 私は更に浄化魔法に力を(そそ)ぎ込むけど、あいつを押し戻すことができない。


 だから私も、一歩一歩と後退する。

 しかしそれと同じだけ、グリーグスは距離を詰めてくる。

 いや、それ以上に迫ってくる。


『グフフフフフ……もうお遊びは終わりだ、美しいお嬢さん……!』


 駄目だ……!

 このままでは、グリーグスにまた捕まるのも時間の問題だろう。

 やっぱり私だけじゃ、もうどうすることもできない……っ!!


「姫様っ!

 お願いですから、なんとか立ち直って戦ってくださいっ!!

 もう怖い男の姿はありません!

 ふわふわのもこもこですからぁっ!!」


 情けないが、ここは姫様に頼るしかない。

 幸い今のグリーグスの姿は、人間の男の要素が殆ど無いので、男嫌いの姫様のトラウマにはさほど影響が無いはずだ。


 しかし姫様はまだトラウマから抜け出せていないのか、それとも疲弊し過ぎたのか、地面に(うずく)ったままだ。


「姫様……っ!!」

 

『残念ながら、そのお嬢さんはまだ使い物にはならないようだね。

 だが我が輩にとっては好機だ』


 その時、グリーグスが大きく口を開いた。

 そして次の瞬間、物凄い轟音とともにグリーグスの口から吐き出された見えない何かが、姫様を襲う。


「きゃあっ!?」

 

 姫様の周囲の地面は爆発したかのように(はじ)け、姫様自身も空中高くへと放り出された。

 そのまま姫様は10mほど吹き飛ばされ、地面へと(したた)かに身体(からだ)を叩きつけられる。


「姫様ぁ!?」


 私は慌てて姫様の元へと走った。

 普通の人間ならば、あの超音波なのか衝撃波なのかよく分からない攻撃の直撃を受けたら、即死するだろう。

 

 だけど倒れ伏した姫様の姿を見て、私は少し安堵した。

 姫様の服の所々は破れ、全身も土で汚れてはいたが、怪我らしいものはしていない。

 全くと言っていいほど、出血が無いのだ。


 なんという頑強さ……!

 おそらく、姫様が万全な状態ならば、グリーグスなど敵ではなかったに違いない。

 ただ、今の姫様は気を失っている。


 現状は全く好転していなかった。


「くっ……!

 姫様っ、触りますよ!?

 お願いですから、私のことを吹き飛ばさないでくださいよ!?」


 暴走した姫様に攻撃される可能性はあるが、もうそれを気にしている場合ではない。

 私は覚悟を決めて、姫様から直接「吸精」を行い、それで得た力でグリーグスを倒すことにした。

 次回は明後日の予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] お姫様の思わない弱点ですね。 モノが付いているサキュバス、敵役としてはアリだと思いますw 四天王は想像を超える程にしぶといです!? まぁ、確かに冒険者時代のアリゼさん本人と戦ったシャO子も、…
[一言] 主人公....弱い?
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