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28 囚われたメイド

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「う……」


 気がつくと、私は床の上に転がっていた。

 あれ……私、何をしていたんだっけ。

 なんか町が襲われている夢を、見ていたような気がするけど……。


 いや、夢じゃないな!?

 私は気絶していたんだ。

 そうじゃなければ、床に寝ている理由なんてない。

 

 私は周囲を見渡しつつ、気絶する前のことを思い出そうとした。

 確か屍食鬼(グール)が町を襲っていたから、屋敷に避難しようとした時に衝撃を受けて、身体が痺れて……。

 そここまで思い出して、自身が何者かに(さら)われたのだということを理解する。


 そして──、


「……ここ、どこ?」


 身体(からだ)はもう動くようなので、起き上がって周囲を見渡してみる。


 そこはやはり見覚えが無い場所だった。

 ここは何処なのだろう?

 見覚えは無いけど、建物の中であることは間違いない。


 周囲の壁を見ると、決して一般人向けの物とは思えない高級感のある(つく)りをしている。

 ただ貴族の家の部屋にしても、少し狭いような気もする。

 ここはどことなく、独房のような印象もあった。

 それと造りは豪華な部屋なのに、調度品の(たぐ)いは一切無く、床には(ほこり)が積もっていることから、長い間使われていなかったことが分かる。


「おや、お目覚めですかな、美しいお嬢さん」


「っ!?」


 突然声をかけられて、私の心臓が跳ね上がった。

 さっきまで室内には、誰もいなかったよね!?


 声のした方を見ると、そこには身長が2mはあろうかという身体を黒いマントで覆っている男の姿があった。

 髪は白くて口ひげも蓄えている、初老の人だった。

 ただ、その口には牙が覗いていて、明らかに人間ではないようだ。


吸血鬼(ヴァンパイア)……!!」


 この人が町の人達をグールにし、そして私を攫った犯人だろう。

 ぐぅ……これは最悪の状況だ。

 確か吸血鬼は死に損ない(アンデッド)系の魔物の中でも、最上位クラスの怪物だったはずだ。

 私の実力では抵抗どころか、逃げることすら難しいと思う。


「あ……あなたが、私をここに……?」


「おお、その通りだ。

 昼間に我が使い魔がそなたを見かけ、実に血が美味そうだと思ってな」


 え……私の血を吸うつもりなの?

 さっきから「お嬢さん」って言っているけど、私の性別を完全に勘違いしているよね?

男だってバレたら、怒るかな……? 怒るよね?

 これは黙っていよう……。

 

 あと使い魔って、確か動物とか魔物を操って、意識とかも共有できるんだっけ?

 吸血鬼って日光に弱いから、昼間は使い魔を使って活動していたということなんだろうけれど、そんな動物とかっていたかな……?

 いや──、


「ああっ、使い魔ってあのネコ!?」


然様(さよう)……。

 この地の野良猫に我が血を与えて、眷属(けんぞく)にしたのだよ」


 うわぁ……だったら、リゼが力加減を間違えて、噛み殺してくれた方が良かったのでは……。

 そういえば夕方のリゼ、捕まえていたネコに対しては明らかに攻撃している感じだったけど、思わず止めちゃったんだよなぁ……。

 止めなきゃ良かった……というか、リゼはあのネコが怪しいって気付いていたのかな……?


「それでそなたを迎えに行ってみれば、他にも恐ろしいお嬢さんがおるではないか。

 あちらの血も美味しそうではあるが、屍食鬼共をあっさりと消し去る力は油断できぬ。

 そなたにはいざという時の、人質になってもらおうか……。

 それが終わるまで、血をいただくのがお預けになるのは残念だがね……」


 私が姫様を倒す為の人質!?

 そんな足手まといになるようなこと、絶対に駄目だ!

 なんとか私だけで、この場を切り抜けなくちゃ!

 

 ……でも、どうすればいいの?

 とりあえず私の能力(・・)を、吸血鬼に悟られないように使っておくけど、たぶんそれでどうにかなるものじゃないし……。


 とにかくできるだけ、情報を引き出してみようかな……。


「あなたは……屍食鬼に町を襲わせて、一体どうしようというのですか……?」


「ふむ……別にこの町については、特に何も……。

 領主の娘達を攫い、結果として領軍を動かすことができた時点で、用はもう無いな。

 領軍とあの邪魔なスライム共が、潰し合ってくれればそれで良かったのだ」


 スライム……それはちょっとよく分からないけど、メイド長(アリゼ様)が出掛けていることと何か関係があるのかな……?


「それじゃあ……さっき聞こえてきた爆発音は……」


 この男の計略によって、領軍は戦わなくてもいい戦いをしているってこと!?


「おお……そう怖い顔で睨んでくれるなよ、お嬢さん。

 このくらいのことは、まだまだ序の口なのだよ?」


「じょ……序の口?」


「奴らが都合良く潰し会ってくれるのならそれで良し、たとえそうならなかったとしても、我が配下の召喚術士が、万単位の魔物を召喚して襲わせることになっている。

 そしてその魔物の群れは、最終的にはこの町になだれ込んで、我々が動いた痕跡も全て消してくれるだろうよ……。

 我が輩はそうなる前に、この町で食事(・・)(たの)しんでいるに過ぎない」


「そんな……!」


 この人、町に屍食鬼を放っただけではなく、町そのものを滅ぼすつもりだなんて……!

 

「一体なんなんですか、あなたは……!?」


 私の問いに、その男は──、


「む? 我が輩かい?

 我が輩は魔王軍四天王が1人、闇のグリーグスだよ、美しいお嬢さん」


 衝撃的な名乗りを上げたのだった。

 次回の更新は、明後日だと用事があるのでちょっと分かりません。

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