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12 実技の授業

 ブックマーク・☆での評価をありがとうございました!

 一悶着あったけど、実技の授業が無事に始まった。

 まずは接近戦だ。

 武器を使っての、戦闘訓練をする訳だけど──、


「普通だな」


「普通なのです」


 私の実力は、カナウ先輩と姫様にそう評された。


「うぅ……」


 強くもなければ弱くもない──そんな感じだ。

 一般人相手だと余程油断をしていなければまず負けないけど、冒険者や騎士などを相手にすると、負けることも十分にある──という、微妙な実力だと思う。

 

 ダンジョンで魔物相手に鍛えたけれど、今の私にはこれが限界だった。

 いや、私の年齢としては、十二分に強いはずなんだけどね……。

 しかし周りが凄すぎるので、埋没してしまう。


「その程度の実力では、私の従者は務まりませんよ。

 マ……母が決めたことですから、すぐには解任できませんが、このまま成長が見られないようなら、いずれは待遇を考えなければならないのです」


「は……精進いたします!」


 でも、正直言って、身体を使う戦い方はそんなに得意ではなく、これ以上強くなれる気がしない。

 そもそも姫様とカナウ先輩の試合を見たら、このレベルに並ぶのは不可能だと確信できる。


「嘘……動きが全く見えない……」


 ダンジョンの魔物達を、軽々と倒せるカナウ先輩が凄いのはまだ分かる。

 だけどそのカナウ先輩すらも、子供扱いの姫様ってなんなの!?

 私が唖然としていると、


「相変わらず凄まじいですわね、レイチェル様は……」


 そんな風に、話しかけてくる人がいた。

 あ、朝に挨拶してきた人だ。

 綺麗な金髪が縦にロールしているという、特徴的な髪型をしているけど、それがいかにもお嬢様らしくも見える。

 

「確かアイリス様……」


「ごきげんよう、エリ様」


「いえっ、私如きに、様付けはいらないですっ!」


「でも王女殿下の従者は、殿下の所有物……。

 つまりある意味では、私よりも(くらい)が高いと言えなくもないのですわ」


「そんな……」


 そんなことを言われても──と、気後(きおく)れしてしまうけど、それは私の意識が足りないだけなのだと言えなくもないな……。

 これから立場に恥じない態度と、そして実力を身につけないと……!


「そういえばあなたに対しては、自己紹介していませんでしたわね。

 財務大臣を務めておりますオーランド公爵の孫娘、アイリス・クラウ・オーラントですわ」


「はっ、エリ・キルペスタです。

 改めよろしくお願いします」


 ひぃ、公爵家のご令嬢か。

 姫様と比べたら地位は低いとは言え、おそらくは低いながらも王位継承権を持っていてもおかしくない立場の人のはずだ。

 そんな人を前にすると、やっぱり緊張してしまう。


 というか何処となく女王陛下と似ているような気がするけど、王家とは親戚筋なのかな?


(わたくし)もレイチェル様とは親しくしたいと思っておりますので、よろしくお願いしますわ。

 あなたも王族の従者なのですから、これからのご活躍に期待していますわよ?」


「は、はい!」


 こう言われると、次の魔法の実技は頑張らないといけないなぁ……。

 しかし──、


「さっきよりもマシだけど普通だな」


「確かに魔法は剣術よりも良いですが、普通なのです」


 またもやそんな評価だった。

 うう……メイド長(アリゼさん)の依頼で、私を()てくれた鑑定士に教えてもらった私だけのスキルを使ったけど、駄目だった。

 どうやらあのスキルは、私自身には(・・・・)あまり効果が無いみたいだ……。


 一方、姫様達はというと──。


 魔法の実技訓練は、遠く離れた(まと)に攻撃魔法を当てるというものだ。

 内容としては弓矢の訓練と、そう大きく変わらないと思う。

 攻撃が的に当たれば、それで一応合格だ。

 私は全弾を的に当てたのだが、それでも「普通」と評される。


 ……でも、それは姫様達と比べるからそうなるだけで、一般的には優秀な部類だと思うんだ……。


 まずカナウ先輩だけど、(こぶし)大の火の玉を撃ち出すところまでは普通だった。

 けれど、それが的に当たった瞬間、10mほどの高さがある炎の塔になって的を焼き尽くした。


 これだけでも他の生徒達の度肝を抜くほどの大魔法に見えるけど、姫様のはもっと凄い。


 姫様は人差し指から、真っ直ぐに伸びる光線を打ち出した。

 目にも留まらぬ速度で伸びるそれは、最初の的に当たると軌道を変えて、横に数m間隔で並んでいた他の的──5つ全てを撃ち抜いたのだ。

 これは素人目に見ても、かなり精密に術を操る技量があることが分かるけど、驚くべきはその威力だ。


 撃ち抜かれた金属製の的が、全て溶け落ちたのだ。

 カナウ先輩の炎の塔のような派手さは無いものの、光線に秘められた熱量の凄まじさが嫌でも実感できる。

 当然、周囲はどよめいた。


「あれ?

 私、何かやっちゃいましたか?」


 姫様はわざとらしくそう言った。

 絶対に何をやったのか分かっていて、言っていますよね!?


 私がそう言いたげな顔をしていたからなのか、姫様は私に囁く。


「このように、たまに実力の一端を見せておかないと、(あなど)られるのですよ」


 姫様は女王の養女ということで、血筋の面で彼女の事を軽く見る者もいると聞く。

 そういう声を抑える為にも、実力を示していく必要があるのだろう。


 しかしそんな姫様の従者として恥じない実力を求められている私としては、気が遠くなるような想いだった……。




 ちなみに先程お話ししたアイリス様は、私よりも成績が下で、しょんぼりしていた。

 あ……なんだか親近感を覚えるな、この人……。

 次回はなるべく明後日に……。


 なおアイリスの名前がクラリスと2文字被っているのは、親戚だから名付けに法則がある……というのは後付けで、実は偶然。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まぁ、お姫様主従二人もアリゼさんのチートを受け継いたから、一般的は無いでしょう。 そうかぁ、わざとやっちゃいましたかぁ。典型的なネタを意図的に再現しましたねw
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