5 引き抜き
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久々に家に帰ってきたら、キエルとマルガがそういう関係になっていたのは、正直予想外だった……。
できれば最初から、その百合を間近で堪能したかったわ……。
おねロリでケモナーとか、マイナージャンルだけど、だからこそ貴重で尊い。
こんなことなら、何が何でも二人の側にいれば良かった。
そうすればもしかしたら、私も百合の間に挟まることができたかもしれない。
──いや、それだとクラリスや娘達に出会えなかったな……。
うぬぅ……どちらか一方しか選べないとは、人生はままならぬ……。
でもまあ、これから好きなだけ楽しめばいい。
「とりあえず、私のことは気になさらず、好きなだけイチャイチャしてくださっても構いませんよ?」
「レイちゃん……」
キエルにジト目を向けられたが、顔に期待感が露骨に出ていたかな……?
その日の晩は、孤児院に泊まることとなった。
久しぶりに三人で川の字になって眠ったが、大人の色気を身につけたキエルの艶めかしい寝息に惑わされて、なかなか寝付けなかった。
しかも朝に目覚めたら、キエルとマルガが抱き合って眠っているし……。
思わず「いいものを見た……」と、晴れ晴れとした気持ちで新しい1日を迎えることができたよ……。
で、起床したら、これからのノルン学院とレイチェル孤児院の活動に関わる話である。
ここに才能がある孤児の子がいれば、引き抜いて王都の学院でもっと高度な教育を受けてもらいたいと思っている。
結果的に有能な人材が増えれば、国の発展にも繋がっていくはずだ。
勿論才能の有無にかかわらず、希望者ならば学院に受け入れてもいいとは思っているが、定員にも限界があるので、まずは才能のある者を優先したい。
既に候補者は見つけている。
子供達の中に、桁違いのオーラ量を持つ子が混じっていたのだ。
キエルにそのことを話すと、
「そうなの?
私にはそういうことは、ちょっと分からないけど……」
「何かの能力が、飛び抜けている子はいないのですか?」
「う~ん、みんな普通の子だと思うけどなぁ」
「マルガも剣術とかを教えているけど、気付かなかったにゃ」
「となると、魔法の才能が高いのかもしれませんね」
キエルとマルガでは、魔法の専門的なことは教えられないだろうから、その子の魔法の才能にも気付くことはできなかったはずだ。
「ああ……そうか。
それだと私達では、その才能を伸ばしてあげることができないんだね……。
うん、その子が望むのなら、王都で教育を受けさせるという話に、協力してもいいと思うよ」
そんな訳で、子供達が朝食を摂っている食堂へと向かう。
そこでは全員が集まっているので、目的の子はすぐに見つかった。
「ああ、あの子ですね」
それは10才くらいだとは思うが、同年代の子から比べても華奢な体付きをした子だった。
髪は金髪で、顔立ちも整っており、文句なく美少女だと言える。
それに何処となく、クラリスやレイチェルに近い雰囲気を感じた。
なんというか、気品がある……というか。
もしかしたら元々は、貴族の血筋だったのかもしれない。
ただ、その細い体格と同じように、少々内向的な性格であるようにも見える。
ずっとうつむいていて、周囲の子供達からも孤立しているようだ。
もしかしたら、精神的な傷を抱えているのかもしれない。
それでもこの子が放っているオーラの量は、他の子供達から比べると桁違いだし、将来が期待できる。
だが改めて見ると、魔力の量は極端に多いというほどではないな。
少なくともクラリスほど、魔法の才能があるようには見えない。
となると、学術とかそういう方面で高い才能を持っているのか、それとも特殊なスキルを有しているのか……。
その辺は鑑定士に視てもらわないと、なんとも言えないなぁ……。
いずれにしても、是非とも我が学院に欲しい人材であるということは確かだ。
「え……あの子?
あの子、凄く内気なんだけど、大丈夫なのかな……?」
キエルはそう言った。
なるほど……ただでさえ孤児で、精神的に傷を抱えているかもしれない子が、王都に移り住むという、環境の激変に耐えられるのか──それを心配しているのだな。
「でも、環境の変化が良い方向に働くかもしれませんし、駄目ならいつでもここに帰ってこられるので、試してみるだけでも試してみたらどうでしょう?」
「うん……そうだね。
それじゃあ、エリリーク君のことを頼むよ、レイちゃん」
……うん?
「……エリリーク……君?」
「え、うん。
あっ、レイちゃんは男の人が苦手だったよね?
大丈夫かな?」
え……あれ、男の子──いや、男の娘なの!?
あんなに美少女な外見なのに!?
こんなに可愛い子が、女の子のはずがない!?(錯乱)
「キエルさん、身体を見たいです!
あの子の裸を見せてください!!」
「ちょっ、レイちゃん、何を言ってるの!?」
「レイ姉!?」
「あ……済みません。
性別を確認したくて、つい……。
でも、本当に男の子なんですか……?」
「うん、私達も最初は間違えたけどね……。
お風呂に入れた時に、初めて気がついたよ」
え、そんなおねショタみたいなイベントが、あったのか!?
まさかこの子、ラブコメの主人公みたいな体質じゃないよね……?
あるいはその外見に、ステータス全振りだったりして……。
う~ん、男の娘は私の趣味ではないけど、この可愛さだけでも武器になるので、何かの役に立つかもしれないし、スカウト自体は進めよう。
ほら、「可愛いは正義」だっていうし?
次回は明後日の予定です。