84 復活の魔剣
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あの魔剣って、確か魔法攻撃に対して耐性を持っていたような気がする。
それをダグラスは空間収納から呼び出して、あの爆発に耐えたってことかな?
でも何故ダグラスが、あの魔剣を持っている?
クラサンドの戦いの後、誰かが回収して国に献上した?
さすがにあのレベルの魔剣が、何本も量産されているとは思えないから、同じ剣だと思うけど……。
というかあの魔剣って、私が折ったはずだけど、自動修復機能があったのか……。
いや……それだけではないな。
魔剣を持つダグラスの気配が、明らかに先程とは違う。
これは……魔剣が放つ闇のオーラに侵食されているのか……!?
精神汚染の能力もあるのかもしれない。
もしかしたらダグラスがおかしくなったのって、ナウーリャ教団による洗脳が主原因じゃなくて、こっちが本命なの!?
う~ん、ダグラスの手に魔剣が渡ったのは偶然なのか、それとも帝国や魔族の計略なのか分からないけれど、面倒なことになったぞ……。
少なくともあの魔剣を持ったダグラスは、クラリスの手に負える相手だとは思えない。
そう思っている間に、ダグラスは魔剣を振るった
そこから生じた衝撃波がクラリスを襲う。
「きゃあっ!?」
「クラリスちゃんっ!?」
ダグラスの攻撃は、あっさりとクラリスの「結界」を破壊した。
クラリス自身には大きなダメージは無かったが、追撃があれば無事では済まないだろう。
それは彼女も分かっているらしく、すぐさま電撃魔法で反撃する。
だが──、
「そんな……!!」
クラリスとしてはかなり本気で撃った電撃魔法だったようだが、それは魔剣によって弾かれ、霧散してしまう。
そして今度はダグラスが魔剣を振りかぶり、クラリスに迫ってきた。
あの魔剣によって連続で攻撃をされれば、クラリスはひとたまりもない。
おそらく「結界」での防御は、簡単に破られる。
しかもクラリスの身体能力では、斬撃を躱すことは難しいはずだ。
いや──、
「!?」
ダグラスの斬撃がクラリスを捉えたかに見えた瞬間、彼女の姿はかき消える。
レイチェルとの試合でも見せた転移魔法だ。
そしてダグラスの数m背後に現れたクラリスは、土魔法で無数の石礫を生み出し、それをダグラス目掛けて撃ち放った。
ただでさえ制御が難しい転移魔法の後に、連続で攻撃魔法を使用するだけでも高度な技術のはずだが、クラリスはそれを苦も無くこなしている。
そしてその攻撃のタイミングも申し分なく、素晴らしい戦闘センスだと言える。
凄ぇよ、私のクラリスは!
事実、背後から銃弾のような速度で襲い来る石礫に対して、ダグラスは反応することすらできず、その全てが命中した。
「ぐはっ!!」
拳大の石が直撃すれば、肉が弾け飛び、骨が砕ける。
本来ならば、これで勝負はついたはずだ。
だが──、
「これは……いけませんね」
ダグラスは倒れない。
本来ならば倒れているはずの重傷を負っているにも関わらず、まるで痛みを感じていないかのように、悠然と立って魔剣を構えている。
それどころか、見る見る内にその傷が回復していく。
それと同時に、魔剣から放たれている邪悪なオーラが、更に大きくなった。
これは……魔剣の力が暴走している?
やはり人間には制御できないのか?
でも、これじゃあ……。
「がっ、がぁっ、ガアァァァっ!!」
傷が回復したはずのダグラスが、何故か苦しみだした。
そして心なしか、その身体が膨張しているような──いや、しているなこれ。
「お……お父様……!?」
クラリスの目の前で、ダグラスの皮膚は不自然に波打ち、そしてその身体は肥大化していく。
どちらかというと貧相だったその身体は、まるで食人鬼のように筋肉質の巨体へと変わる。
これは魔剣に浸食されて、半ば魔族化しているのでは──!?
実際あの魔剣は、巨大化したダグラスの身体に吸い込まれてしまった。
このまま完全に魔剣と一体化してしまったら、ダグラスはもう人間には戻れなくなってしまう。
こりゃあかん。
これはもう、クラリスには任せておけないな。
「私、総勢一名参陣!!」
「アリゼ!?」
「姫様、ここは私に任せてください」
私はクラリスに襲いかかろうとしていたダグラスの前に、立ちはだかった。
するとダグラスは警戒したのか、動きを止める。
魔剣も以前私に折られているいるから、本能的にそれを感じ取ったのかな?
ふむ……こうなると、魔剣はある種の魔物だと考えた方がいいのかもしれないな。
まあ、折った時に「乗っ取り」は発動しなかったから、魂は無いのだろうけれど……。
ダグラスもこんなものを身近に置いていて、よく今まで精神を完全に浸食されなかったものだ。
実は結構精神力が強かったのか。
だとするともしも魔剣がダグラス以外の者に渡っていたら、もっと早い段階で暴走を誘発し、多大な犠牲者を出していたかもしれない。
そういう意味では、ダグラスはちゃんと国王として国を守っていたのかもしれないなぁ……。
ともかく、さっさと片付けてしまおう。
「ハッ!」
「ガアアアアッーっ!?」
まずは殴る蹴るの暴行によって、ダグラスの手足をへし折る。
これで彼は動けなくなった。
いずれは傷を再生させるだろうけれど、あと数分はかかるだろう。
「ほんと……身も蓋もないわね、あなた……」
自分ではおそらく勝てないであろう相手を、あっさりと叩き伏せている私の姿を見て、クラリスが呻いている。
まあ、私は存在自体が反則みたいなものだから、私が本格参戦した時点である意味負けだよね……。
逆に言えば、今は最悪の事態だと言える。
万が一私がいない時に今と同じ状況になった場合、クラリスは勿論、他の人間達も全員命を落とすことになっていただろう。
最悪、数千人規模の死者が出ていてもおかしくない。
それだけ今のダグラスは強い。
強い……のだが、私にとっては雑魚だな……。
そんな訳で動けなくなったダグラスに対して、オーラ鑑定。
よし、体内に取り込まれた魔剣はまだ右手にあり、ダグラスと完全に一体化していないようだ。
これをえぐり出せば、まだ彼を救える可能性があるぞ。
魔剣は人間が所持しているだけならば、じわじわ精神侵食。使用すると急激に心身共に侵食って感じ。
明後日は定休日だったけど、どうしようかな……。更新できたらします。