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83 決戦! 謁見の間

 ブックマーク・☆での評価・感想をありがとうございました!

 私達は謁見の間に突入した。

 ただしリチアと子供達は、入り口の前で待機してもらっている。

 これから先は、父と娘だけの戦いだ。

 なるべく私も介入するつもりはない。


 勿論、クラリスが危なくなったら、問答無用で手を出すけどね。

 今の私には、クラリスとレイチェル以上に大切なものは無いのんだから。


 で、倒すべき国王ダグラスだが……。 

 彼は王座に座している。

 追い詰められた状態なのに、焦りのようなものは感じられなかった。


「来たか……我がローラント王国に(あだ)なす、反逆者よ……!」


おまいう(お前が言うな)……」


 思わずツッコミの言葉が出てしまう。

 国の害になっているのは、国王自身だよね?

 まあ、彼の認識では、国(イコール)自分なのだろうけれど。


「お父様……!

 改めてお(うかが)いしますが、自ら国王の座から降りるつもりはないのですか?

 そうしていただけるのならば、無駄な戦いをする必要も無いのですがね……。

 もうお父様の味方をする者は、残っていませんわよ?」


「そうよ、ダグラスちゃん。

 今すぐクラリスちゃんとアリゼ様に王座を明け渡すのならば、妻として(わたくし)が最低限の生活の面倒くらいは見てあげるわよぉ~?」


「黙れ、売女(ばいた)が」


「なっ!?」


 クリスの煽りを受けたダグラスは、冷淡に言葉を返した。

 あ~、彼女はそう言われても仕方が無い。

 ダグラスも妻の浮気については、一応把握していたんだな……。


「いっ、今は違うもーん!

 クラリスちゃん、もう遠慮無くあの人をやっちゃってもいいわよ!?」


「お母様……。

 下がっていてください」


 呆れ顔のクラリス。

 クリスの所為で、なんとも緊張感が無いな……。

 だがそのおかげでクラリスは、必要以上に気負っている様子もない。

 これならば実力を問題無く出し切れるだろう。


「では……お父様。

 自ら身を引かないと言うのならば、強引にその王座から引きずり落として見せますわ!」


 クラリスはダグラス目掛けて炎の魔法を放った。

 まずは小手調べのつもりなのか、それほど威力は無いようだが、それでも直撃すれば常人ならば全身に大火傷(やけど)を負って命を落とすことになるだろう。

 ただし即死するほどではないので、回復魔法や魔法薬(ポーション)などの手段を持つ者ならば、それによる治療は容易(たやす)いだろうけども。


 いずれにしてもクラリスの魔法は、ダグラスが形成した「結界」の壁によって(さまた)げられた。

 この見えない防御障壁を破壊しなければ、いかなる攻撃手段もダグラスには通用しなくなる。

 そしてその破壊手段だが、単純に強い力をぶつけて、それが結界の耐久力を上回ればそれでいい。


 だが、「結界」は魔法に対して特に強い耐性を有している為、魔法のみで破壊しようとすると、結構な魔力の消費が想定される。

 それでもクラリスには剣術などの他の攻撃手段が無いので、魔法に頼るしかない。

 そして「結界」に対して、比較的有効な手段を私は既に教えている。


「ぬ……!」


 激しい衝突音が謁見の間に響き渡り、ダグラスが顔をしかめた。

 当然、クラリスの攻撃がダグラスの「結界」に、炸裂した結果である。


 クラリスはダグラスの「結界」に対して、自身が形成した「結界」を叩きつけたのだ。

 つまり「結界」同士ならば相性とか関係なく、そこに込められた魔力が強い方が勝つという、至極単純な話である。


 ただ、クラリスの攻撃は、ダグラスの「結界」を激しく揺さぶりはしたものの、破壊するまでには至っていない。


「この……っ!」


 その後もクラリスは、何度も「結界」を叩きつけるが、効果はあまり出ていないようだ。

 意外にも魔力の強さならば、ダグラスはクラリスと同等らしい。

 とはいえ、ダグラスも防御に徹している状態なので、クラリスの攻撃が全く効いていないということでもないのだろう。

 余裕があるのならば、とっくに反撃をしてきても良いはずだ。


 あるいはこのままクラリスに攻撃を続けさせて、魔力切れを狙っている可能性もあるが、仮にそれでクラリスを倒すことができたとしても、私が介入すればその時点でダグラスは負けるだろう。

 それではあまり意味がない。


 ……それともダグラスには、私に対抗できる奥の手があるのだろうか? 


(らち)があかないわね……」


 しびれを切らしたクラリスは、魔力の激しい消費を覚悟で大技を使うつもりのようだ。

 それはこの私にとっても、最強の攻撃力を誇る術──。


「この程度で死なないでくださいよ、お父様──っ!!」


 クラリスが正面に突き出した(てのひら)から、熱線が撃ち出された。

 それは私が使う物から比べれば、蝋燭(ろうそく)の炎のように弱々しいものだろう。

 それでもその熱線は、ダグラスの「結界」をあっさりと貫通した。


「ぐうぅぅっ!?」


 熱線はダグラスの数m横で爆発する。

 さすがにクラリスも、父親を直接狙うほど非情にはなれなかったようだ。

 だが、それで十分だった。


 爆発はダグラスを飲み込む。

 これで彼は戦闘不能か、それに近い状態に(おちい)っていてもおかしくないはずだ。

 だが──。


「──無傷!?」


 クラリスの驚愕の声が上がる。

 ダグラスは健在だった。

 いや、多少はダメージを受けているようだが、あの爆発の規模から考えれば、かすり傷のようなものだろう。


 これは「結界」を破壊された直後に、新たに「結界」を作り直して防御したのか?

 ……違うな。

 ダグラスの気配が、先程までとは完全に別物になっている。


 そして先程までのダグラスと、明確に違うものがあるとすれば──、


「あれは……!!」


 なんとなく見覚えのある、禍々(まがまが)しいオーラを放つ剣──それがダグラスの右手に握られている。


 ……あれって、クラサンドで戦った女魔族が持っていた魔剣じゃね!?

 折れたはずでは!?

 それではまた明後日(の予定)。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さん、更新はお疲れ様です! 国王こそ国の害、あとお母様の浮気もどちらと言うと原因が国王にあるだと思います。 クラリスさんは思った程に強くないですね。確かにステータスを見ても単純に普通ち…
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