82 最終防衛ライン、突破されます!
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なんか知らないけど、近衛騎士団の最終防衛ラインが混乱しているな。
一般人らしき青年が真っ先に逃げ出そうとして捕まったようだが、何事なのだろうか?
「鑑定結果は!?」
「さ、逆らってはなりません。
あの御方は、女神の化身ですっ!!
ぼ……僕はもうなにも見たくない。
こんな恐れ多いこと……っ!!」
「いいから、少しでも情報をっ!!」
そんな会話が聞こえてきた。
もしかして鑑定士がいるのか!?
詳しく……説明してください。
今、私は冷静さを欠こうとしています!
いや、マジで詳しく話を聞きたいのだが。
私にはたぶん自分自身で把握できていない能力があるから、ことが済んだら彼に接触して鑑定結果を聞き出したい。
それにしても女神の化身って、なんか不本意なんですけど……。
一体何が見えていたんだ、あの青年には……。
ともかく、そろそろ最終防衛ラインを突破しようか。
ふははは、私を止めたいのなら、ガ●ラでも連れてくるが良い!
と、私が一歩踏み出すと──、
「は? 生命力120万!?
魔力が50万以上!?
そんな馬鹿なっ!?」
そんな悲鳴のような声が、近衛騎士達の間から聞こえてきた。
それ、私のパラメータ?
それは多いのか、少ないのか……。
いや、あの動揺ぶりを見るに、たぶん多いのだろうな……。
「確か……普通の騎士は数百程度と聞いたことがあるけど……?」
クラリスがそんなことを言った。
つまり雑に計算しても私の数値は、一般的な騎士の1000倍以上もあるってことかな?
……うん、我ながら化け物だな。
だけどまあ、そういうことなら……。
「「「「ひぃっ!?」」」」
私はちょっと強めに殺気を込めた気配を放ち、近衛騎士達を威嚇した。
これで鑑定結果も事実だと、受け入れやすくなるのではなかろうか。
そして戦意を失ってくれれば楽なんだが……。
あれ……?
結構な人数が気絶しちゃった。
私ってそんなに怖いんですかねぇ……?
まだ意識を保っている者も、武器を手放して両手を挙げたり、床にひれ伏していたりと、最早抵抗する意思も無いようだ。
ただ、心変わりされて後で子供達に攻撃されても困るので、蜘蛛糸で拘束はしておくけど。
それと鑑定士だと思われる青年については、私の影の分身を彼の影の中に潜ませて、いつでも接触できるようにしておこう。
できれば鑑定能力は欲しいけれど、さすがにその為だけに無実の人間を「乗っ取る」訳にもいかないしなぁ。
まあそれ以前にアリゼの身体を捨てるつもりは今のところ無いけど、もしかしたらまだ把握していない能力の中に、このアリゼの身体のままで他者から能力を奪う手段があるのかもしれないし、その辺は今後じっくりと検証したい。
「それでは、いよいよ謁見の間に突入するとしますか、姫様。
……姫様?」
私がクラリスの方を向くと、彼女は顔を真っ赤にして、スカートを軽くたくし上げていた。
クリスも似たような挙動をしているな……。
そしてよく見ると、彼女らの足下には少量の液体が……。
じょじょじょ!?
「あ、まさか姫様達、漏らし──」
「あなたねぇっ!!
ああいう恐ろしい気配を出すのなら、前もって言いなさいよね!?」
「そうですわよ~。
それともアリゼ様は、我ら母娘を人前で辱めるプレイがお望みなのかしら~?」
「どうしてそうなるのですか……」
つまり彼女達は、間近で私の殺気を浴びて、失禁してしまったという訳か。
でも気絶しなかっただけ、意外と耐性はあるんじゃなかろうか?
あとそういうプレイには、興味なんて無いからっ!!
私は好きなものについては、他人に見せびらかせるとかしないで、自分だけで楽しみたい派だから。
勿論、尿属性とかも無い……はずだけど、ソウナンですかな状況で水分が無い時とか、そういういざという時なら、愛しのクラリスのは飲めるような気がする……。
でも、あくまでいざという時だけだから!
……たぶん。
「……まあ取りあえず、綺麗にしましょうか」
私は母娘に浄化の魔法をかけてやる。
これで衛生的には何の問題も無くなったはずだが、まだ下着などは湿っているはずだ。
しかしそれについては、一瞬で乾燥させる手段もある。
「今乾かしますね」
空間収納に、水分だけ収納するのだ。
この収納の能力を極めると、こういう細かい設定もできる。
その気になれば、敵から武器や服だけ奪い取ることもできるけど、そんな身も蓋もない手段で勝っても嬉しくないので、滅多に使わない。
洗濯後の乾燥に超便利──それだけで十分に重宝している。
なお収納中は、時間の経過を止めることもできるようになった。
「ほんと、便利よね……あなたの能力……」
「姫様もいずれはできるようになりますよ。
それよりも、もういつでも謁見の間に突入できるので、準備をしてください」
「……っ!
そうね!」
クラリスが表情を引き締めた。
いよいよ国王との直接対決であり、その結果によってこの国の命運は決まる。
私達はついに、決戦の地へと踏み込んだ。
次回は明後日の予定です。