79 王位争奪戦開始
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クラリスの居室──。
「クラリスちゃーん、お部屋に招いてくれて、ありがとぉー」
「お母様、抱きつかないで……」
今日は王妃クリスも、ここに来ている。
完全に敵対した国王ダグラスが何をするのか分からないので、ここで保護することにしたのだ。
そして更に──、
「ここがクラリスの部屋か……」
「王女様の部屋とか、恐れ多いぽん……」
「…………」
「………………」
護衛としてカーシャとコロロとキャスカ、そしてリチアも連れてきている。
……キャスカはともかく、リチアはなんでそんなに大人しいの?
「いや、だって王女様と王妃様だよ!?
普通は一生縁が無い人だよ!?」
君……意外とそういうところを気にするよね……。
ああ、犯罪者に片足を突っ込んでいるから、国家権力が必要以上に怖いのか。
「言っておくけど、この国で1番偉いのはアリゼよ?」
「そうよー、アリゼ様なのー」
「「「「え……?」」」」
母娘の発言に、一同は固まった。
「あなた達、私よりもアリゼと付き合いが長かったのに、知らなかったの?
何十人もの悪徳貴族や犯罪組織を潰しているのにも関わらず、国が討伐を諦めたほど手が付けられないのよ?
本気のアリゼに逆らえる者なんて、この国には……もしかしたら世界の何処にもいないんだから」
「ねー」
なんでクラリスとクリスがドヤ顔なんですかねぇ。
「え……院長って、ヤバイヤバイとは思っていたけど、そんなヤバイ奴だったの……!?」
リチア、ヤバイを連呼するな。
「私は敵対しない相手には優しいですよ?
なお、今のあなたの発言は、敵対行為と受け取りましたので、お給料を減らしますね?」
「ええ……やっぱりヤバイ鬼畜じゃん……」
「リチアさん、大丈夫だよ。
ボクがなんとかするから……!」
キャスカに慰められるリチア。
傍目には情けない姿であるはずなのに、なんだかんだでロリに構われて嬉しそうだ。
なんというか、転んでもただでは起きないよね、君は……。
ともかくクラリスの言葉通り、既に私の──そして私が後ろ盾になっているクラリスの地盤は、既に強固で揺るぎないものになっているといえる。
国王ダグラスは明らかに狂人ではあるが、比較的大人しい狂い方をしてくれていたので、じっくりと準備に時間をかけることができた。
あれで積極的に庶民を虐殺するような狂い方だったら、さっさと暗殺する必要もあったのだろうが、それだとクラリスが次期女王になる為の根回しができず、他に王座を狙う者が現れて国が割れる可能性もあったのだ。
しかし今ならば、そんな混乱が生じることはほぼ無いだろう。
殆どの貴族に対しては根回し済みなので、王座を奪う為に多少暴れても黙認してもらえるし、クラリスの即位に関しても、スムーズに進む手はずになっている。
故に国の乗っ取りは、もう最終段階に入っても何の問題もないだろう。
まあ、万が一我々が国王に負けるようなことがあれば、貴族達は掌を返すだろうけれどね。
「だからこれから私がアリゼの表の顔として、この国の頂点に──つまり女王になるわ。
あなた達には、それに協力をして欲しいと思っている。
協力してくれるのならば、私が女王になた暁には側近としての地位を約束するわ!」
「そんな……私達が……?」
困惑するリチア達。
本来はただの平民だしね。
王位争奪の争いに巻き込まれるなんて、これまでに想像もしていなかったことだろう。
「あ、リチアさんは、子供達の監督役ってだけですからね。
あなたは権力を持たせると、絶対にいけないタイプの人間ですので……」
「え……」
お前が権力を持ったら、子供に何をするか分からんからな……。
「あなた達はダンジョンで鍛えたので、その辺の騎士よりも実力があると思います。
なので、実力的には問題は無いはずです。
勿論、自分には荷が重いというのなら、これから学院に帰しますが……女王の側近という地位に興味はありませんか?」
私の言葉を受けて、子供達は真剣な顔になった。
自分がどうすべきか、必死に考えているようだ。
そして──、
「あたしはやる」
元々騎士を目指していたカーシャの決断は早かった。
「私も……姫様の為なら」
コロロも決断した。
彼女はクラリスに洗われて以来、懐いているからなぁ。
そして問題は気の弱いキャスカだが……、
「ボクも……やります」
意外にも、彼女もやる気のようだ。
憧れのリチアの前だから、いい所を見せたいのだろう。
やはりリチアを連れてきて正解だったな。
「偉くなって……リチアさんを養う……!」
「え、私……?」
あれっ、キャスカはリチアを飼う気なのか!?
意外と大胆なことを考えているな……。
でもこういう子に手綱を握らせておいた方、リチアにとってもいいのかもしれない。
他の子供達に目移りしないように、キャスカに調教されてくれ。
「じゃあ決まりね!」
こうして後のクラリス親衛隊が、正式に発足することになった。
それから半日が経過した頃──。
「クラリス殿下、ここを開けてください。
あなたには国家反逆罪の疑いで、国王陛下から捕縛命令が出ています」
そんな呼びかけと共に、扉を強めにノックする音が聞こえる。
「来たわね……!」
クラリスの居室の外に、無数の騎士が集まっているようだ。
まあ現在の国王が動かせる騎士は、もう直属の近衛騎士団くらいだろうから、最大で200人程度だろう。
それならばクラリスと子供達だけでも、そこそこ戦えるはずだ。
そして私が加勢すれば、負けるはずなどない。
さあ、派手に王位を簒奪するとしましょうか。
明日の更新は休みます。ストックが完全に尽きたので、明後日以降もちょっと分かりません……。