76 増える聖女様
ブックマーク・感想をありがとうございました!
今回は夕方に話を思いついて、1時間くらいで書いたものです。もしも推敲不足だったら済みません。本来は次回のエピソードが今回に入るはずでした。
私はリーザ・アトロポス。
ナウーリャ教団の教祖をしておるが、その実態は幹部連中の傀儡じゃった。
その幹部連中が排除された現在も、実質的なトップが聖女アリセーヌ・ルパンに代わっただけなので、私の立場は変わっておらぬ。
私が住んでいた教団本部の神殿は、聖女様の裁きの雷によって、破壊されてしまった……。
だから本部をクラサンドへ移転させるという案が聖女様から提案されたが、それはまだ先の話じゃ。
とりあえず現在のところは、まだ使える部屋で寝泊まりしておる。
「ひっ……!?」
何か今、爆発音がしたのぉ……?
大丈夫なのじゃろうか?
聖女様は、朝まで外に出るな……と、言っておったが……。
その後も私は、不安で眠れない夜を過ごしておったのじゃが、すると今度は何か地響きのようなものを感じた。
これも……爆発音なのかの?
だとすればかなり遠くで起こった爆発──しかしここまで届くということは、尋常ならざる規模の大爆発なのでは……?
さすがに私は、外に出て爆発音の正体を確かめようと思ったのじゃが、何か見えない壁があって、外に出られなかったのじゃ……。
閉じ込められておる……。
これも聖女様のお力なのかの?
私は仕方が無く、寝床に戻った……。
翌朝、信者達の話によると、帝国の方角の空が赤く見えたとのことなのじゃ。
私は聖女様が、天罰を下したということを悟った。
恐ろしい御方じゃ……。
それから聖女様が帰ってきたのは、昼頃になってからじゃ。
「色々と片付けてきましたよ。
これで帝国からの干渉は暫く無いと思いますが、いつ再び動き出すか分からないので、信者は……いえ、できればサンタナの住人も、なるべく帝国領から離れた土地に移った方がいいでしょうね」
「それは私もなのかの?」
「そうですね、昨晩は暗殺者が入り込んでいましたが、教祖さんもターゲットだったと思いますよ?
ですからあなたには、この国で1番安全な我が家で、当面は生活してもらいましょうか」
「え……暗殺者……?」
昨晩はそんな恐ろしいことに、なっておったのかの!?
それに聖女様のお家で暮らす……?
これから私は、どうなってしまうのじゃろうか……。
その後私達は、信者に今後の方針を伝えたあと、聖女様の家に行くことになったのじゃが……気がついたら知らない場所に私は立っておったのじゃ……。
「はっ!? えっ!?
どこなのじゃ!?」
「王都の私の家ですよ。
転移魔法で一気に跳んできました」
はえ~、聖女様はそんなこともできるのかえ……。
それに目の前の邸宅が聖女様の自宅ということのようじゃが、あまり見たことがない形をしておるのぉ……。
そんな風に呆然としていると、玄関の扉が開く。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
「ただいま、ケシィー。
これからこの子を、暫く泊めますから」
「かしこまりました。
寝室などの準備をしておきましょう」
「はい、お願いします」
ほう……獣人のメイドさんがおるのか……。
いかにも忠誠心が高そうじゃのぉ……。
これは奴隷ではなく、本人の意思で仕えておるのじゃろうな。
さすが聖女様の人望じゃ。
それから家に入ると、今度は小さな女の子が出てきた。
しかしなんじゃ、この聖なる気配は……!?
アリセーヌ様ほどではないが、聖女に相応しい巨大な気配なのじゃ……。
こんな存在が、この世に2人もおるとは……っ!!
「お帰りなさい、ママ~。
この人は誰なのです?」
「ママっ!?」
「ええ、私の娘のレイチェルですよ。
レイチェル、暫くこのリーザさんを家で預かるので、よろしくしてあげてくださいね」
「はい、よろしくなのです、リーザお姉ちゃん!」
「よ、よろしくなのじゃ……」
おぅ……幼女なのに、放出している聖なる気配が凄すぎて、ひれ伏してしまいそうになる……。
ようやく聖女様の気配に慣れてきたのに、それが倍になるとか、腰を抜かしそうなのじゃが……。
「それにしても、聖女様は子供がいるような年齢には見えないのじゃが……。
これが経産婦じゃと……?」
しかしこの2人の聖なる気配の一致を考えると、義理の親子ということも考えられん。
確かに2人には血のつながりがあるのじゃろう……。
だが、子供がいる聖女とか、聞いたことがないのじゃが……?
これは教団の信者達には、秘密にしないといかんのぉ……。
「ああ、そういえば、幻術で姿を変えたままでしたね。
本当の姿はこうです」
「なん!?」
次の瞬間、聖女様の姿は少し年上のものに変わった。
前髪の色など、細部も微妙に変化しておるのぉ……。
まだ若い姿じゃが、先程よりは子供がいることには納得感がある。
特に胸部のサイズが、凄まじいほどの母性を主張しておるのじゃあ……。
うらやま……。
「ついでに言えば、いつもはアリゼ・キンガリーを名乗って、王女殿下の侍女をしております。
アリセーヌは偽名ですね。
教団が国王夫妻に対して不穏な動きをしていたので、潜入して対処しました」
「そ……そうじゃったのか」
聖女様は、国の人間じゃったのか……。
あれ……?
今の私って、国に身柄を拘束されているような状態なのじゃろうか……?
聖女様が教団の内情を国へと報告したら、教祖である私も処罰されるのかもしれんが……。
しかし彼女は、今後も教団を存続させるつもりのようじゃし、大丈夫じゃよな?
私は大丈夫なんじゃよな!?
なんだか、全身から嫌な汗が噴き出てくるのぉ……。
「後で王女殿下にも会ってもらいますからね、教祖様?」
「は!?
マジかの……?」
「はい、マジなのですよ」
王族と謁見とか、なんだか生きた心地がしないのじゃが……。
どうなるのじゃ、私……。
なお、今回は思いついたネタの半分くらいしか書いていないので、残りは後日に閑話で書こうかと思います。