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75 威嚇射撃

 ブックマーク・☆での評価・感想をありがとうございました! ストックがヤバイけど頑張ります。

 ナウーリャ教団の幹部達は、既にこの本部の神殿にも、サンタナの町にもいない。

 私が転移魔法で、王都の騎士団に送っている。

 尋問は信頼できる騎士に任せておこう。


 で、そんなことも知らずに、本部の敷地に侵入してきた者達がいる。

 その数は7人。

 おそらくクバート帝国の間者(スパイ)が、帝国と繋がりがあった幹部達の口封じをする為にやってきたのだろう。


 ふむ……昼間の騒ぎで幹部達が失脚したのは、信者達には知れ渡っていることだが、彼らが町でそのことを住人に話したのか、それとも最初から信者の中に間者がいたのか……。

 後者だとすると、何千、あるいは何万もいる信者の中から、完全に間者を排除するのは難しいなぁ……。

 とりあえずこの侵入者を捕らえて、仲間の情報を吐かせるか。


 その侵入者達は、まだ神殿の外で一塊(ひとかたまり)になっている。

 おそらくこれから分散して、それぞれがターゲットを消す為に動くのだろう。

 そうなったら面倒臭いので、一網打尽にしちゃおうか。


 まずは彼らに向けて麻痺毒を散布して、それに抵抗(レジスト)された場合に備えて蜘蛛糸も周囲に張り巡らせる。

 あとは放っておけば、勝手に絡まって無力化されるはずだ。

 ──って!?


 直後、侵入者がいた辺りから、爆発が生じた。

 は? 捕まって情報を引き出されることを恐れて、自爆した!?

 うわぁ……こういう手段を選ばない連中は怖いなぁ……。


 じゃあ、こっちも手段を選んでいられないか。

 イメージが悪いのであまり使いたくない手だったけれど、仕方がない……。

 まずは野次馬が近づけないように、周囲に「結界」を形成して……。


(よみがえ)りなさい!」


 肉片すら残っていない爆発跡に、人影が浮かび上がる。

 黒ずくめながらも、半透明の男達だ。


『な……なんだ!?

 俺達は自爆したはず……!?』


死霊魔術(ネクロマンシー)で、あなた達を幽霊(ゴースト)にしました。

 私の許可無く、あなた達は死ねませんよ?

 さあ、全てを話してください。

 そうすれば、安らかに眠らせてあげましょう」


 死霊魔術のスキルは、貴族や奴隷商を狩りまくっていた時に、乗っ取った相手から手に入れたものだ。

 その気になればゾンビとかを生み出して、不死の軍団を作ることも可能なのだが、さすがにそんな悪の魔法使いみたいなことはやらない。

 今回もできれば使いたくなかったが、情報の為だ。


「どうします?

 このまま永遠にこの世を彷徨(さまよ)いますか?」


『────っ!!』


 結局、男達は折れた。

 やはり死してなお、肉体も無いまま、精神だけ存在するのは恐ろしいのだろう。

 そりゃあ肉体があるからこそ感じられる喜びも苦しみも何もないまま、何もできない状態でただ存在し続けるのは、ある意味拷問みたいなものだろうからなぁ……。


 想像してみてほしい。

 目の前に美味しそうな食べ物があっても食べることはできないし、魅力的な裸の異性がいても何もできないし、普通の人からは認識されこともないから会話もできず、眠ることすらもできない。

 そんな状態でひたすら時間だけが過ぎていくのだ。


 私ならば、精神が耐えられなくなるね。

 そもそも死霊術のスキル持ちの私には、彼らを自由に操る能力があるのだから、最終的にはどうあっても口を割るしかなかったんだけどさ。


 ともかく男達は情報を洗いざらい吐いた。

 他の間者の情報や、誰からの命令なのか、そして──。


「ふむ……これは早急に手を打たないといけませんね。

 じゃあ、もういいですよ。

 来世では美少女に転生してくださいね」


 私は男達の霊を解放してから、帝国へ向けて飛び立った。




 私を風の魔法を操って、空を飛んでいる。

 まあ、飛行機くらいの速度は、余裕で出ているんじゃないかな?

 この術を使う上で重要なのは、顔に吹き付ける風のコントロールだ。

 

 これを上手くやらないと、風圧による刺激で涙が止まらなくなる。

 いや、ゴーグルを装着すれば、話は別だが。


 ともかく私はクバート帝国の領内に入って、あることを確認しなければならない。

 暫くすると、町が見えてきた。

 国境から20kmくらいか。


「あ~、幽霊さん達の情報は正しかったようですね」


 町の郊外に駐屯地が作られていた。

 勿論、国境に隣接した土地に軍隊を駐留させるのは当然なので、駐屯地自体はあって然るべきものだ。

 だが施設の周囲には無数のテントが設置されており、通常の数倍の人員が配備されているように見える。


 帝国が隙を見て、王国に攻め込む為の準備をしているという情報は、本当だった訳だ……。

 さ~て、どうしたものかな。

 皆殺しにするのは簡単だけど、そんな非道なことはしたくないし……。


「え~と、帝都はあっちの方でしたっけ?」


 私は帝都の方に向かって飛ぶ。

 取りあえず帝都の位置さえ把握しておけば、後日いつでも転移してこられるので、それだけでも意味はある。

 だが、今回は別に目的があった。


 やがて見えてきた帝都だが、王国の王都よりも大きいんじゃないかしら?。

 それなりに発展しているように見えるが、だからこそ他国へ侵攻する余裕があるということなんだろうな……。


 う~ん……心情的には皇帝の居城に熱線を撃ち込みたいところだが、余計な死人が出るのは私の望むところではないし……。

 それなら……近くの山でいいかな?

 帝都に直接被害は及ばないとしても、近隣で大規模な山火事でも発生すれば、戦争どころではなくなるだろう。


 それでは手頃な山目掛けて、全力の熱線を撃ち込んでみる。

 ひゃっはー! 

 汚物は消毒だーっ!


 …………って、あれ?

 ん? ん~……?

 火山の噴火の如く、山頂が吹き飛んだんですけど……。


 これ……思ったよりも規模がでかいな……。

 山の一部は山体崩壊を起こして(ふもと)の土地に土砂が流れ込んでいるし、結果として森や農地の一部が埋まってしまっている。

 これは林業や農業に影響がありそうだ……。

 

 それに爆発で舞い上がった粉塵(ふんじん)も、いずれは周辺に降り注いで農作物などに被害を与えるのではなかろうか……。


 これが今の私の全力なのか……。

 もしも帝都に撃ち込んでいたら、住人が全滅していたのでは……?

 一撃で数十万人を虐殺できるとか、シャレにならんよ……。


 うん、まあ目的は達したし、見なかったことにしよう……。


 


 その後国境付近に集結していた帝国兵は、大幅に減ることになる。

 どうやら災害対策の為に、本国へ呼び戻されたようだ。

 たぶん経済的にもダメージはあったと思うし、これであと何年かは帝国が侵攻してくることはないだろうな。

 

 その間に国境の守りを固めるよう、騎士団に働きかけておこうか。

 ちなみに、神殿に落とした雷も「そこそこ本気」のものですが、「私」の身体から直接撃ち出したものではなく、何も無い上空で発生させたものである為に、普通の雷よりもちょっと強い程度まで威力が落ちています。直接撃った場合は、神殿は跡形も無く吹き飛んでいたことでしょう。

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