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15 フラグは立っていた

 ガクガクブルブル、私悪いスライムじゃないよ?

 まあ、他のスライム達にとっては、悪魔の化身かもしれないが。

 なにせ私は、スライムを見つけては全身で包み込んで体内に吸収し、包み込んでは体内に吸収し……を繰り返したのだから。


 なんだかこの行為って捕食しているというよりは、融合している感じなので、乗っ取りが発動しているのかどうかよく分からない。

 まるで他のスライムの身体と混ざり合ってしまうような感覚で、自分と他者の境界線が曖昧だ。


 どちらにしても、乗っ取りの時に残った前の身体を、食べたりして処分するという工程がスキップできるので、効率的ではある。

 これが他の動物が相手でもできるのなら便利なのだろうけど、さすがに不定型な存在同士限定だろうな……。


 で、私は洞窟の終点まで辿り着いたのだが、そこには勇者に封印されたドラゴンがいたり、ダンジョンマスターがいたりするということもなく、普通に行き止まりだった。

 何の成果も、得られませんでした!!

……ちょっと残念。

 

 そしてスライムもあらかた狩り尽くしてしまったようなので、地上に戻ることにした。

 さて、次はどんな生き物の身体を乗っ取ろうかな?


 大量のスライムの力を吸収したから、もう毒とか抜きでも、大型の肉食獣にも勝てると思うんだけど……。

 もしかすると、私がこの森の食物連鎖の頂点に立つ日も近いかもしれない。

 ……となると、あいつ(・・・)との戦いも避けられないか……?

 

 そう、あのヘビやオオカミを、この土地に追い立てたあいつだ。

 あっちの土地でかなりの数の獲物を食い荒らしたようだから、餌を求めてこっちの方に来ている可能性もある。

 私がヘビに襲われた時点で、あいつが因縁の敵として戦うフラグは立っていたのだ。

 

 となると、妹ちゃんは大丈夫かな……?

 よく考えれば、ママン達と一緒にいなかったのも気になるし、そもそもお兄ちゃんが攫われた時のあの羽音は……。

 もしかして私の家族は、既にあいつの標的になっていたんじゃ……。


 ちょっとオオカミの臭覚を再現して、妹ちゃんを捜してみよう。

 しかし、見つけるまでに1週間くらいかかって焦った。

 無事だったからよかったけど、妹ちゃんも何かを警戒しているのか、巧妙に自身の痕跡を消していたらしい。


 なお、ママンや他の兄妹は結局見つからなかった。

 これはもう駄目かも分からんね……。

 もしかしなくても、何者かの襲撃を受けたのだろう。


 つまり妹ちゃんは、追っ手に脅えている?

 やっぱりあいつに、狙われているのかなぁ……?

 それなら私がガードしてやんよ!


 まあ、今のスライムの身体が、飲まず食わずで耐えられる期間だけだけどねぇ……。

 さすがに餓死する前に獲物を狩って、身体を乗り換える必要があるし、スライムの身体でなくなってしまえば、さすがにあいつと戦うのは厳しいだろう。

 都合良くクマみたいな大型肉食獣を狩れれば話は別だけど、オオカミ程度じゃたぶん無理。


 あ、でも、その辺の草を食べても、ある程度は空腹を満たせるのかしら?

 これは実際に試してみないと、分からない。

 ムシャムシャムシャ…………う~ん、腹が膨れたのかよく分からん。


 とにかく、私も妹ちゃんの近くに潜伏して、陰から見守るよ!

 私も元キツネなので、妹ちゃんにできることは可能なのだ。

 妹ちゃんが極限まで気配を絶って隠れるのなら、私だって隠れて見せるさ。


 ぐへへへ……。

 妹ちゃんもまさか実の姉から、ストーキングという名のライフワークをされているとは、夢にも思うまい。

 まあ、ただ見守るだけでは暇なので、身体の一部を触手のように伸ばし、その辺ににいた虫を捕まえて妹ちゃんに差し入れしてやろう。

 ケガとかで弱ったように偽装して妹ちゃんの近くで解放してやれば、勝手に捕まえて食べてくれるはずだ。


 本当はお肉を差し入れしてあげたいけれど、血の臭いはさすがに他の動物を呼び寄せてしまってマズイしね……。

 ただ、いくら虫を差し入れたとしても、それだけでは限界がある。


 やはり妹ちゃんの身体を維持するには、それなりの肉や水が必要なのだろう。

 だから妹ちゃんは潜伏を続けることを断念し、餌を狩る為に出掛けることにしたようだ。

 勿論、周囲を警戒して、慎重に……ではあるが。


 だけど、私が背後から追跡していることに気付かないようでは、その警戒も完璧ではない。

 それにあいつが来るとしたら、おそらく空からだろう。

 私は空を重点的に警戒しておく。


 やがて妹ちゃんが野ウサギを見つけて、そいつに狙いを定めた時、そこに大きな隙が生じていると私は感じた。

 獲物に集中するあまり、身を隠すことが(おろそ)かになったのだ。

 そしてそれを待っていたかのように、あいつが上空から接近してくる。


 やっぱり来たか、グリフォン!

 私はグリフォンと妹ちゃんの間へ、割り込むように躍り出た。

 お兄ちゃんが攫われた時点では、グリフォンの事をまだ考えていませんでした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 乗っ取り能力はあまりにも小さい生物は乗っ取れないみたいだね。
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