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62 変容の理由

 ブックマーク・☆での評価・感想を、いつもありがとうございます!

「お、お父様、どうかお考え直しください。

 どうか、どうか民の為の政治を行ってください……!」


 クラリスは頭を下げて、父であり国王であるダグラスに頼み込むが──、


「言いたいことはそれだけか?

 ならばもう下がっても良いぞ」


 やはりダグラスは話を聞く気が無いようだ。


「そんな……!」


 クラリスはまだ食い下がろうとしたが、私は彼女の肩を掴む。


「……!」


 そしてこちらの方を見たクラリスに、私は首を左右に振った。

 これ以上は、何を言っても無駄だ──と。

 クラリスはそれを見て、悔しそうに(うなづ)く。


「……それでは、改めて出直すことにします」


 私達が礼をして退室しようとしても、ダグラスは興味を示さず、返事もなかった。

 これが父と娘の対面とは、なんともやりきれないな話だ。




「も~、なんなのよ、アレっ!!

 アレでも国王!?

 アレでも父親なのっ!?」


 居室に戻ると、クラリスはお(かんむり)だった。

 まあ、あんな会話もロクに成立しないような態度を父親に取られれば、それも当然だろうな。


 ただ、直接間近で国王を見て、納得できたこともある。


「国王はいつの頃からか、国政を臣下に丸投げして、居室に引きこもるようになったそうです。

 少し前の姫様と似ていますね。

 やはり親子です」


「いや……あんなに酷くはなかったでしょ、さすがに?」


「侍女を何人も辞めさせておいて……?」


「ぐぬっ……!?」


 以前のクラリスは、本当に酷かった。

 だけど今は、立派な理想を持った次期女王だ。


「まあ、姫様は心を入れ替えたからいいのです。

 だけど国王は、ちょっと難しいですね」


「難しい……?

 説得はできないってことなの?」


「ええ、おそらく国王は、洗脳を受けています」


「洗脳!?

 一体誰が!?

 まさか……アリゼじゃないわよね?」


 私がクラリスにしたことも、広義で言えば洗脳みたいなものだ。

 洗脳と教育は紙一重だと言える。


「やれないとは言いませんが、違いますよ。

 私の調べたところによると、引きこもりがちになっていた国王ですが、彼にはよく面会しにくる者達がいたそうです」


「じゃあ、そいつらが……!?」


「そうですね、とある宗教団体の者達だと聞きます。

 たぶん彼らが国王にあること無いこと吹き込んで、自分達の都合のいいように動かそうとしているのでしょうね。

 つまり私の他に、この国を乗っ取ろうとしている勢力がいるということなんですよ!」


「なっ、なんですってーっ!?

 じゃ、じゃあ……その宗教団体を潰せば……?」


「それで国王への影響力が減れば、国王もいずれは目が覚めるのかもしれませんが、それは年単位で先のことになるでしょう。

 国王が立ち直る前に、国が倒れるかもしれません。

 どのみちこれだけ国を荒廃させた王は、すぐに退位させた方がいいですが……。


 それに宗教は面倒臭いのですよ……。

 下手に攻撃すると、信徒が全員テロリストになって反撃してくるということも有り得ますので……」


 宗教関連は前世の世界でも全く解決できない、難しい問題だったからな……。

 本当に面倒臭い。


「そう……なの……」


 クラリスは床に視線を落とす。

 私の言葉は、国王を一刻も早く追い落として、クラリスが女王になれ──そういう意味に等しい。

 

 そしてこれだけ民を苦しめた王なのだから、本来ならば退位後は処刑するのが妥当なのだが、実の娘にそれを求めるのは酷な話だ。

 

「……まあ、国王には力尽くで王座から退(しりぞ)いてもらうのは確定ですが、公式には『病気を理由に自ら退位をし、王女へ王位を譲った』と、穏便な形で発表して、その後は辺境で一生軟禁生活を送ってもらうというのがよろしいかと。

 それでも民に不満があるようなら、死刑囚を私の幻術で国王に見せかけて、公開処刑することにしましょう」


 これが妥協できるラインだろうな。

 これならばクラリスに、父親殺しをさせないで済む。


「そうね、そうするわ……」


 クラリスは顔を上げて私の方を見る。

 その顔には、決意の色が見えた。

 彼女は父が犯してしまった罪を、(つぐな)っていく覚悟を決めているのだろう。


「取りあえず宗教団体の方は、私に任せてください。

 根本的な解決は、姫様が女王になってから法整備をしなければどうにもなりませんが、私が介入することで、これ以上の活動を止めることはできるかもしれません」


「ええ、頼むわ」

 

「そして姫様は王座にスムーズに()くことができるよう、貴族達に働きかけて多数派工作に力を入れましょう」


 力で王座を奪っても、臣下がそれを認めなければ、国が割れかねない。

 そうならない為にも、有力な貴族達には事前に根回しをして、クラリスが女王になることを納得させておいた方がいい。


「でも、どうすればいいのかしら……?」


 そう、それが問題だ。

 クラリスにはまだ、権力闘争の経験が無いからなぁ。


「懇意にしておられるオーラント公爵に、協力を求めるのがよろしいかと。

 彼ならば人脈も広いでしょうし、敵対する勢力への対策も心得ているはずです。

 それと……お母様の人脈も利用しましょう」


「……え?」


 クラリスは私の言葉を聞いて、頬をひくつかせた。


「あのお父様の直後で気が進まないかもしれませんが、次はお母様との面会ですよ。

 ……たぶん、お父様よりはマシ(・・)です」


「マシって言われている時点で、いい予感がしないんだけど……」


 うん、マシではあるが、良いとは言えないな。

 母親は母親で、問題が多いんだよ……。

 明日は用事があって時間が無いので、更新は休む予定です。

 そして明後日もいつも通りの定休日です。ストックが少なくなっている為、2連休で済みません。

 次回は日曜の24時(月曜の0時)頃ということになります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 洗脳か。しかし、国王を操る集団なら宗教団体てもそうじゃなくても同じ面倒の気がします。 お父様もお母様も駄目人間か、クラリスさんもそれなり可哀想でしたね。。。 昔に多数の侍女を辞めさせたけど…
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