閑話 その頃の……
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今回は語尾の所為で少し読みにくいかも……。
マルガにゃ。
クラサンドの町で、冒険者をしているにゃ。
ランクは最高位のSランクで、史上最年少なんだって。
でもパーティーを組んでいたレイ姉がいなくなっちゃったし、キエ姉も孤児院の運営で忙しいから、ダンジョンにはマルガ1人で行かなくちゃいけなくなってしまったにゃ。
マルガ1人だと、あまり深くまでは潜れない……。
精々50階層くらいだにゃ。
でもそこまで行っても帰りが大変な割に、マルガの空間収納ではレイ姉みたく大量の素材は持ち帰ることができないので、効率が悪いにゃ。
そもそも本当なら成人していないマルガは、まだダンジョンには入れないにゃ。
Sランクだから特別に許してもらっているけど、極一部にはそれが「狡い」という人もいる。
そうまで言われてダンジョンへ行きたいかというと、そうでもにゃい……。
だから最近は、要人の護衛依頼の方が多いにゃ。
最近はガーランド領の新しい領主・テュロサム・キンガリー伯爵がお得意様で、伯爵がクラサンドの近くに来た時には、よく呼ばれるにゃ。
前の領主はレイ姉を連れて行った憎い奴だけど、その息子の新しい領主はそのことについて謝ってくれたし、キエ姉の孤児院の援助もしてくれるいい人にゃよ。
まあ……父親がやったことは今でも許せないけど、もう死んじゃったし、レイ姉も姿を変えて何処かで生きているらしいから、いつまでも怒っている訳にはいかないにゃよ。
今日もキンガリー伯爵の護衛をして帰ってきたにゃ。
伯爵には敵が多いようで、毎回何かしらの襲撃を受ける。
だけど索敵が得意なマルガに不意打ちは通用しないし、雑魚なら何十人出てきても敵じゃにゃい。
報酬は金貨10枚だから、ダンジョンの外での仕事で得られる金額としては、まあ悪くない方だと思うにゃ。
で、今日は2日ぶりに家に帰ってきたにゃ。
家の玄関に近づくと、ドアが勝手に開く。
いつも妖精のブラウちゃんが、出迎えてくれるにゃ。
「~~~」
ブラウちゃんが何かを言っているけど、マルガではレイ姉みたいに何を言っているのかを理解することはできない。
でもたぶん、「おかえりなさい」と言っているんだと思うにゃ。
「ただいまにゃ!」
「あっ、マルガ姉、おかえりなさーい!」
マルガの声を聞きつけて、子供達も出迎えてくれた。
みんなはこの家で預かっている、孤児達だ。
親のいない子がこの家だけでも100人くらいいるのだから、世の中荒んでいるにゃあ……。
「あ、マルガ、おかえりなさい」
「キエ姉、ただいまにゃ」
キエ姉も出迎えてくれたにゃ。
昔は戦いやすいように男っぽい服装をしていることが多かったキエ姉だけど、最近は孤児院の院長に相応しい格好ということで、修道士っぽい服装をしていることが多いにゃ。
正直、綺麗になったな……と思う。
昔は目立っていたそばかすも、もう殆ど見えなくなったにゃ。
「マルガ、お風呂に入ってきなさい。
汚れているよ」
「濡れるのは嫌にゃ!」
「我が儘、言わないの!
他のみんなが真似するでしょ。
お姉さんなんだから、手本にならなくちゃ」
「うにゅ……」
そう言われると、マルガも辛いにゃ……。
マルガはみんなから、格好いい冒険者だと思われているからにゃあ……。
仕方が無いから、我慢してお風呂に入る……。
レイ姉がいた頃は良かったにゃ……。
レイ姉の浄化の魔法なら、全身がすぐ綺麗になるから、お風呂に入る必要なんて無かった……。
今はあれだけの浄化の魔法を使える人は、この家にはいないから不便にゃ……。
それにしても、最近のキエ姉は口うるさい。
孤児院の院長としてしっかりしようという気持ちが強いのだろうけれど、少し気合いが入りすぎていると思うにゃ……。
あと、マルガのこと、子供扱いしすぎにゃ……。
マルガはもう13才。
一人でも生きていける大人なのに……。
「一人で……」
想像して、ちょっと悲しくなった……。
もう一人でも生きていけるけど、やっぱり一人は寂しいにゃ。
お父さんとお母さんがいなくなって、レイ姉がいなくなって……。
その時のことを思い出すと、胸が凄く苦しくなる。
だからキエ姉だけは、ずっと、ずーっと、マルガの側にいて欲しいにゃ……。
だからお風呂上がりに──、
「……キエ姉、一緒に寝るにゃ」
キエ姉の部屋に行く。
「いいよ、マルガおいで」
レイ姉がいなくなって以来、マルガとキエ姉は、よく一緒に寝ているにゃ。
大事な人ががいなくなった寂しさを、お互いの存在で埋めようとしたんだと思う……。
だからいつも抱き合って、離れないように眠っていたにゃ……。
最初はそれだけだったはずだったんだけど、最近はキエ姉の胸に顔を埋めていると、変な気分になってくることがあるにゃよ。
なんだかこれをもっと自由にしたいというか、キエ姉の全部を好き放題にしたいというか……。
ある時、知り合いの獣人の冒険者に聞いたら、「発情期じゃないか」って言われたにゃ。
うにゃ……マルガ、キエ姉に発情している……?
それが本当かどうか分からないけど、取りあえずマルガはキエ姉の胸を揉むにゃよ。
これを気が済むまでやると、何故かスッキリできることに気がついたから……。
「ちょっ、マルガ、揉みすぎっ!
オッパイで遊ばないでよ!」
別に遊んでいる訳じゃ、ないんだけどにゃぁ……。
やっぱりキエ姉は、まだマルガのことを子供として見ている。
それが悔しくて、カッとなったマルガは更に激しく揉んだにゃ。
「もう、いい加減にしなさいっ!」
キエ姉は、レイ姉の毛繕いスキルを真似て反撃してくるけれど、まだまだマルガは負けにゃい!
……結局、今日は引き分けみたいになって、いつの間にか二人ともぐったりとしていたにゃ。
う~ん、「ハアハア」と喘いでいるキエ姉の口が色っぽい。
マルガはそれを見ている内に、つい我慢できなくなって──、
「なっ!?
マルガ、なんでうちの唇を舐めたの!?」
ついやってしまったにゃ。
「なんとなくやりたくなってしまったからにゃ。
嫌だった……?」
「い、嫌という訳じゃないけど……」
キエ姉が赤くなっているにゃ。
恥ずかしがってはいるけど、怒ったり嫌がったりしている訳ではないみたい……。
今はそれだけで充分にゃ。
これでマルガのことを、少しでも一人前の大人の女として見てくれるようになればいいけど……。
「……疲れたからもう寝るにゃ」
「えっ、ちょっと、マルガ!?」
なんだかマルガも恥ずかしくなってきて、キエ姉の顔を見ていられなくなったにゃ。
今日はキエ姉に背を向けて寝ることにする……。
翌朝、目が覚めるとキエ姉はまだ眠っていたにゃ。
マルガは先に起き出して、冒険に出掛ける準備をする。
そうしている内に、キエ姉が目を覚ましたにゃ。
「あ、キエ姉おはよう」
「おはよう、マルガ」
「これからドラグナさんからの依頼で、ダンジョンに潜るお手伝いをしてくるから、3日くらい帰らないに……よ。
留守はお願いね」
「ええ、気をつけてね。
…………って、あれ!?
マルガ、語尾は!?」
「いつまでも子供じゃないんだから、そろそろやめるよ」
「え……えぇ~?
違和感が凄い……」
「キエ姉こそ、いつまでも『うち』って言ってるのは、どうかと思うよ?」
「ええっ!?」
キエ姉は思わぬ指摘を受けて驚いていた。
でも孤児院の院長という立場もあるんだし、公式な場に出た時に、思わず「うち」とか言っちゃったら恥ずかしと思うにゃ。
ともかくこれからも、マルガ達は変わっていくと思うにゃ。
だけどそれがいい方向であることを、マルガは信じている……。
そして立派になったマルガ達の姿を、いつかレイ姉に見せたいにゃあ。
キエルとマルガの関係は、3章のエピローグでもちょっと触れていますが、まあそういうことです。