59 みんなでダンジョン訓練
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私はクラリス・ドーラ・ローラントよ。
いつもはアリゼと二人っきりで行っているダンジョンでの実戦訓練だけど、今日から参加者が増えたわ。
レイチェルとメイドのケシィー、それから更に学院の生徒のカーシャ、コロロ、キャスカも参加することになった。
カーシャ達は私の親衛隊の候補だから、ここで鍛えられて強くなってほしいわね。
ただ、魔物との戦闘については初心者だから、現時点ではなんだか危なっかしいのよねぇ……。
ふっ……私もあんな頃があったのかしら……。
私もすっかりダンジョンには、慣れてしまったわね。
戦い方は勿論、魔物の解体作業だって、カーシャ達に指導することもできるようになったわ。
一方で──、
「波──っ!!」
レイチェルの異常な強さを、思い知らされたわ。
今も目の前で「熱線」に貫かれた魔物が、跡形も無く吹き飛んでいる。
それを見て私は硬直したけれど、逆にケシィーは尻尾をブンブンと振っていたわ。
「素晴らしいです、お嬢様」
ケシィーとはまだ短い付き合いだけど、よく分かったことがある。
アリゼやレイチェルと一緒にいる時は、高確率で尻尾を振っているのよね。
私も2人のことは大好きだけど、ケシィーからはそれ以上のものを感じるわ。
これは私も、負けてはいられないわね……。
「というか、私との試合の時は、かなり手加減していたのね……」
あんな攻撃を試合で使われていたら、私は死んでいたわ……。
「ええ……その所為で、ちょっとストレスが溜まっていたのかもしれませんね。
私のように能力の制限がありませんから、遠慮なく力を使えるのは気持ちよさそうで羨ましいです」
そんなアリゼの言葉通り、レイチェルはちょっと楽しそうだった。
でも、あんな幼女が魔物を虐殺しているのだから、世も末ね!
とはいえ、私も負けていられないわ。
あのレイチェルの「熱線」を真似できないか、試してみましょうか。
そしてカーシャ達も、頑張っているわよ。
「なあ……あのレイチェルの「魔法剣」、私1人じゃ無理だけど、2人でならできないかな?」
「武器に魔法の効果を、付与するぽんね。
魔力による身体強化の延長だと思えば、できるかもしれないぽん」
コロロと協力して、「魔法剣」を再現しようとしているわ。
でも魔法なら私も使えるから、私を頼ってくれてもいいのよ?
私が王女だからって、遠慮しているのだとしたら、ちょっと寂しいわね……。
遠慮といえば、1番その傾向が強いのはキャスカだ。
あのリチアって人に憧れて強くなりたいらしいのだけど、どうにも気が弱いところが弱点ね。
私に対してもおどおどしているし、このダンジョンや魔物も怖いみたい。
「キャスカ、大丈夫?」
「は、はいっ!
大丈夫……だと思います」
一応強がったりはするのだけど、やっぱり怯えているのは隠し切れていない。
それに新しく試している徒手空拳の戦闘スタイルは、対人戦闘には有効なんだけど、魔物に対しては少し厳しいところもあるのよね。
スライムのようにドロドロしたものなんて、素手で殴る訳にもいかないし、結局は武器に頼らなければどうしようもなくなる。
ケシィーは身体強化の応用で、爪を伸ばして対応しているみたいだけど、人間にはちょっと難しいわね……。
いえ、アリゼが爪を伸ばして戦っているところを見たことがあるから、不可能ではないのかもしれないけれど、あの子は特別だし……。
「そうだわ!
アリゼ、アリゼ、拳にも『魔法剣』みたいなことが、できないのかしら?」
それならば、キャスカの戦闘力は、大幅に上昇するはずだわ。
「できるかもしれませんが、手が燃えたりしたら逆にダメージを受けそうですね……。
まずは手を魔力でコーティングして守り、その上から属性を付与する……という、面倒臭い技術が必要になるかと。
そうなるとキャスカ1人で使うことは、不可能だと思います」
「ああ……そうね……」
それでは戦うどころの話では、なくなりそうだわ……。
「でも『気』を極めれば、似たようなことはできると思います」
うわ、アリゼの拳が唸りをあげて、光っているんですけど!?
「気を……簡単に言えば生命エネルギーですが、それを拳に集中させて増幅し、放出させている状態がこれです。
これならば直接拳で殴らなくても、気で敵にダメージを与えることも可能になります。
こんな風に──波●拳っ!!」
はどう……なに?
アリゼがよく分からない掛け声を上げながら拳を突き出すと、そこから光の塊が撃ち出されて、10数メートルほど離れた壁に当たったわ。
すると大きな爆発音が上がり、そのの壁が崩れ落ちる。
「こういうことも、できるようになります」
「凄……。
ねえキャスカ、参考になったかしら?」
「ボクには、無理です!」
あまりハッキリ物を言わないキャスカが、きっぱりと言い切った。
うん、そうよね……。
これは先が長そうだわ……。